水晶龍の洞窟 9
低い太鼓のような音でマーガレットは目を覚ましました。なぜかうつぶせになっていて、肩や腰が痛くて体中が重い感じがしました。ゆっくりと顔を起こしてみると、キラキラと輝く白い世界にいました。どこまでもミルクのように白くて目に痛いほどの輝きにあふれているのです。
どんどん、と太鼓のような音が聞こえるほうを見ると厚いガラスの向こうでカイルが何か叫んでいます。マーガレットはガラスに近寄って耳を当ててみました。けれど声はちっとも聞こえません。首を横に振って聞こえないということを示すと、カイルはガラスに指で文字を書いてみせました。
『だいじょうぶか?』
マーガレットはうなずきます。
『なんとかするからまっていて』
マーガレットは首をかしげます。マルセルがカイルの横から割り込んで鏡に文字を書きました。
『すっかりおばあさんになってしまったね』
マーガレットは自分の両手を見下ろしました。しわしわで痩せていてなんだか縮んだようにも見えます。顔を触ってみると、これもしわだらけでした。マーガレットは鏡の中に飛び込んだことをようやく思い出しました。鏡の向こうではアンとエミリとモーラがマーガレットを指さしておなかを抱えて笑っています。マーガレットはカイルたちに手を振ると、鏡の世界の奥に向かって歩き出しました。どんどんと鏡をたたく音がしだいに遠くなりました。