選ばれ死モノ
さて、泥のように濁っていた思考がクリアになったところで現状把握である
「あなたは神か」
「うむ、我は神である」
え?まじでか?適当なノリで言ったはずのセリフに対して
このどう見ても縁側で茶を啜ってそうな老人がノータイムで返答しやがったぞ
何たる不敬な、ボケてんじゃねぇのお爺ちゃん
「おぬしの方が不敬に感じるがの」
「あっはい、すいません」
いかんいかん、調子乗ってボケ老人扱いしてしまった
よくよく考えなくてもこの老人、先ほどまで人が表現する事自体がおこがましい程の存在感を発現させておられた方だ
うむ
そう考えたら、今の俺のセリフ不敬どころの話じゃないな
・・・ん?
ってあれ?
「もしかしなくても、俺の考えてること読めてたりしてます?」
「うむ、何をいまさら」
ですよねぇぇ
あっャヴぁイ俺むっちゃヤヴァイ
死亡フラグどころの話じゃねぇ
この神さまニコニコな表情をされてるけど、これってめっちゃ怒ってる証拠じゃね?
俺今めっちゃ威嚇されてるんじゃね?
あれだよね、笑顔って威嚇なんだよね
お前を殺すって言われてるのと同義なんだよね
「落ち着け人の子よ、二度もお主を殺そうとは思っておらぬよ」
殺されてたぁああああああ
既に殺されてたよ俺!まぢで?何したの俺
このお方に何してくれちゃったのよ俺
クソ、ボケ老人の癖に生意気な
「おぬし地味に口悪いの」
あっいや嘘です御免なさい
ぐっ気を抜くとすぐ罵倒してしまう、何故だ
目の前の老人からどんどん存在感というか敬う心がゴリゴリと削られていく気がする
もう少し何とかならないものだろうか
「ふむ、人間とは不便なモノよな、これぐらいかの?」
そう言った瞬間神の存在感が変わった
うお、筆舌に尽くしがたいお方から、ボケ老人という落差を経て
なんということでしょう、今は大手企業のカリスマ溢れる会長様のような風格が
「すいません、先ほどから失礼な事ばかり」
自然と頭が垂れる
なんというカリスマ
さすが神さま、略して’さすかみ’
「落ち着いてなによりじゃ人の子よ、我もこういった形での会話は初めてでな、どのように対応すればよいか手探りなのじゃ、許せ」
「ははぁー」
すんごいカリスマをビシビシ感じるよ
一生ついてきます兄貴って言いたくなるぐらいだわ
相手がものすごい存在とわかっているだけに、不敬を働いてはいけないと思えるほどのカリスマを所持して貰えるのはものすごく助かる
「話しやすい様にするために存在感を下げてみたが、下げすぎるのもいかんということか」
あっやっぱり自身の存在価値をコントロールできるのね、このお方
神さまのはずなのに途中から蛮族を見ているような気持ちになってしまったのはこの所為か
「では、えっと神さま、現状を把握したいので質問してもよろしいでしょうか?」
何はともあれ現状を把握だ
何がどうなっているのかどころか、自分の存在すらわけがわからない
ん?
「あれ?俺ってなんでしたっけ?人?天使?神の使い?」
「おぉ、なんという事じゃ少し昇天しかけただけで、自分の存在を認識出来ぬほどになってしまうとは、人とはなんとも脆いものか」
この言い様だと俺は人だったのだろう
そこらへんの記憶が地味に抜け落ちているというか虫食い状態なんだよなぁ
「曖昧であった魂の定着がしっかりし始めておるからの、会話を続けておれば、ちょっとしたことで思い出してくるじゃろう」
「あっはい、よろしくお願いします」
何をよろしくするんだろ俺、それって根本的な解決になっていませんよね?って言いたい
すっごく言いたい
けど、そんな事ばっかり言ってたら話がすすまない、とりあえず会話を続けよう
「一先ず、おぬしの現状は放っておいて、我の話をしよう」
あれ?ほっとかれちゃうの俺、なんで俺すぐにほっとかれるん?
てか見た目ニコニコ優しい相談役な老人なクセに自分本位だな
あっ神さまだからソレがデフォルトなのか
「これこれ、おぬし聞いておるか?」
「脱線してすいません、ぜひお話聞かせてください」
さて、どんな話が出てくるのやら
「おっほん、何度も言うようじゃが・・・我は神である。名前はまだ無い。」
「え?名前ないんっすか!神さまなのに?」
意外!それはナナシ!
「昔はあったんじゃがのぉ」
そう寂しそうにつぶやく神さま
ちょっとすねた顔してる、老人のすね顔とか誰得なのだろうか・・・
って違う違う
名前が無い神、いや、名前を消された神か?歴史から消された神?
「え?それって禍津・・・」
「そういった存在にもちゃんと名前はあるじゃろう、じゃからそのような存在ではないよ」
あっよかった
さっきなんか、SAN値がピンチってた気がしたから嫌な予感してたけど気のせいだったんだ
「それに名も無き神はたくさんおるわい、我もその中の一柱でしかないのじゃよ」
「え?そんなにたくさんいるんですか?」
「うむ、最近無職の神が多くてな、日本におけるアマテラス様も頭を抱えておられる」
おぉ~ここにきてビックネームがきた
その名前なら聞いたことがある
「うむ、みんな大好きアマテラス様じゃの、けど最近は情報錯綜しまくっとる世界が多くての、気がつけばロリっ娘になっとったり、BL好きな腐った女子風じゃったり、ガチムチ乙女風じゃったり、変な信仰心を浴びせられ大変な目にあっとる現状で、さらに働かない無職神が多く存在しての、天岩戸に引きこもりそうな勢いじゃ」
かく言う我もその一柱よ、ほっほっほっ
というセリフと共にめちゃくちゃいい笑顔でのたまう駄目神
うん、リアルでドヤ顔始めて見たわ
てかそれ、笑い話じゃないよね?
「うむ、故にそろそろ新たな神の名を得ようと思っての、それでお主をこの場に召還した訳じゃ」
なるほど、わからん
「そこでなぜ俺なのでしょう?」
ん?もしや俺って選ばれしなんちゃらって奴なのか?
いや、神に選ばれてる時点で既に一般人じゃないのか?
あれ?俺って凄い存在?
「うむ、ダイス神に頼んでの、そこらへん歩いてる人の子を選んでもらったんじゃ」
こうチンチロリンっとな
そうのたまうボケ老人
なんでや!!
なんでやねん
それ選別してへんやないか!なにあらぶっちゃってんのダイスの女神さま!
TRPGにお帰りください
やだもぉ~おうちかえりたい