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転生して、前世の恋人に遭ったら絆されるとは限りません~これが、私のハッピーエンド 編~

続きはありません。


私は、もう一つの記憶があります。

いわゆる、前世とかいうものでしょうか?


私は、ラヴァリエ・タイム公爵令嬢。

社交界や夜会などには出ない、変わりものと周りから後ろ指さされています。

仲のいいご令嬢とのお茶会には出ていますが。

姉や兄や弟が有力貴族と婚約しているので、私の極度の男嫌いのことはすでに両親が諦めているというのもあります。


公爵家のものとしての義務は理解しています。

ですが、前世の記憶が私の邪魔をするのです。

前世の私は、身分の低い男爵令嬢でした。

そして、恋に落ちたのがその国の王子様。

私は隠れて王子様と逢瀬を重ねるのですが、その幸福の日々は長く続きません。

王子様の恋人と上級貴族令嬢に知れて、手ひどい仕打ちを毎日受けます。

それはもう、酷いもので。

そして、運命の日。

王子様は上級貴族令嬢の嘘を鵜呑みにし、私を人前で酷く罵り、処刑しました。

ただ、私は王子様をお慕いしていただけですのに...

私は死ぬ直前、死への恐怖ではなく王子様の裏切りに、ただただ絶望したのです。

そして、この国の王子ブレント様が前世の恋人だと絵姿を見た時に確信いたしました。

その時の私の顔色はものすごく悪かったのでしょう。

お母様とお姉さまが、私をものすごく心配していました。


そして、どこかのシンデレラのようにブレント王子の妻を探すためのパーティーが開かれるとの知らせがありました。

もちろん、我が家にも招待状が来たのですが、あの時の私の様子を知っているお母様とお姉さまは私がパーティーに参加することを反対しました。

ですが、お父様は知りません。

お父様は野心家で、王族との繋がりを欲していました。

なので、どの家とも婚約をしていない私をパーティーに参加させてあわよくば...とお考えです。

パーティーの招待状が王家から来た時点で、拒否権はないんですけどね。


パーティー会場までの馬車に乗っている私はどこかに売られる子牛の気分。

お父様は上機嫌です。

お母様はお父様に内緒で、自分たちの挨拶がすんだらすぐに家に帰りましょうといって下さいました。

これなら、壁の花になっていたらいいですねと思う私が甘かった。

ブレント王子様は獲物を狙う目をした令嬢たちをうまくかわし、私のところに来たのです。

「ああ、愛しい人ようやく会えた」

感極まったように私を抱きしめるブレント王子様。

「人違いです、やめて下さい!」

ブレント王子様の腕から抜け出そうとしているのですが、全くできません。

「ラヴィ、あの時君を失ってどれほど君を愛しているのか気付いた。許さなくてもいい、一緒にいてくれないか?」

ラヴィとは前世の私の愛称。

「やっぱり、君があのラヴィだね。ラヴィの反応そのまんまだ」

「やめて。あの時、私がどれだけ傷ついたのか分かっているのでしょう。もし、私を思うなら今すぐ離して」

「ゴメン。それはできない。やっと、俺のラヴィが手に入るのだから」

そして、ブレント王子様は私を無理やり引き摺って国王様と王妃様の前まで進んで行きました。

「父上、母上、この女性を俺の妻にします。今、決めました」

「それは、おめでとう。ブレント」

「これで、ようやく俺の方の荷が一つ減るな」

「ありがとうございます。父上、母上」

この後、どうやって帰ったのか分かりません。

青褪めた私をお母様が抱きかかえるように馬車に乗ったことは覚えています。


王家の者になるマナーを学ぶため、王城に行くことが決まりました。

王城に行くまでの数日間、毎日ブレント王子様からプレゼントが届きましたが、私は全く開けませんでした。

私はその間、魂が抜けたように空を見続けました。

そして、王家から我が家に迎えが来たのです。ブレント王子様も来ました。

「レヴィ、俺の妻になってくれるか?」

「はい、ブレント王子様」

お母様とお姉さまが心配する中、顔を引き攣らせながら返事をしました。

私の様子に気がつかないブレント王子様は、嬉しそうに顔をほころばせました。

お父様は満足そうです。

もう逃げられない。そう思ったこの時に、『ある決意』をしました。

それまではうまく演じ切りましょう。


王城に着いた翌日から、専用の家庭教師についての勉強やマナー。

ブレント王子様とのお茶の時間の休憩。まさに、この時間は拷問です。

「やっと笑顔が戻ったね、レヴィ。心配していたんだよ」

ここ数日間で、笑顔の仮面をつけるのが慣れました。

心を凍らせ殺すものもお手のものです。

「ご心配おかけしました、ブレント王子様。これからは、もっと頑張りますね。でないと、国民の皆様に申し訳ないわ」

笑顔で、心にないことを口にする私。

そのあとも会話をするのですが、適当に相槌するだけでブレント王子様の言葉は私の耳をすり抜けていきます。

早く終わって欲しい。

「行ってくるね、レヴィ。また、あとで」

「いってらっしゃいませ。ブレント王子様」


そして、結婚当日。

花嫁衣装を着る前に、ブレント王子様と見晴らしのいい城の三階のテラスにいます。

「レヴィ、やっと俺の妻になる日が来たね。待ち遠しかった」

愛おしそうに、私の頬を撫でます。

私は気持ち悪さに耐えきれず、ブレント王子様の手を振り払い突き放します。

そして、私は彼から距離を取りテラスの柵を背にした。

「ふざけないでください。誰が誰の妻になるんですか」

あぁ、もう表情を取りつくろわなくてもいいですね。

「レヴィ!?」

「あの時から、あなたが嫌いだった! あなたに失望した! あの時、どれだけ、私が裏切りにあって絶望したかあなたには分からないでしょう! 分かっていたら、私と結婚しないものね!」

「そんなことはない。君が必要だから、妻になって欲しいんだ!」

ブレント王子様が、私に近づこうとしたので

「これ以上、近づかないで!」

ブレント王子様が、絶望で驚き固まって動こうとしない。

今しかない!

私はその瞬間ためらわずに、柵を乗り越え空に身を躍らせた。

読んでくださり、ありがとうございました。

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