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雰囲気だけで生き残れ  作者: 雰囲気
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四十九話

「はぁ……はぁ……も、もう無理ですぅ……」


プランの首元から汗が一滴流れ落ちる。

二時間ほど続けて行われた魔法禁止ランニングはかなりの疲労を第七の生徒に与えていた。


「確かに、これは結構、疲れるね」


息を上げて、一言ずつ区切って話しているのはセラ・フィールだ。プランに合わせて走っていた彼は途中からペースを乱して最終的にはふらふらになっている。

ちなみにセントはそれを見てひそかに笑っていた。


「……どうでしたか?……魔法に頼ってばかりでは、強くはなれませんよ……」


つい先ほどやってきたウル、もう一人の第七の生徒は見当たらない。

随分長い時間姿を見せなかったウルに、散々走らされた少年少女達は若干の憤りを感じていた。

特に、


(オイオイこんだけ走らせてそれかぁ?カナリアとジャンヌを見ろよ倒れそうだぞ?ウル先生がさっさと戻ってきてくれりゃあ何時間も走らなくてよかったんだろ……てかもう一人はどこ行った、そいつも走らせようぜ、な)


このセント・ユーラスという少年は内心文句タラタラだ。相変わらずだが。

何時間走った後にこれだけ余裕があるのはやはりセントだけだった。他の四名は息を切らして今にも倒れそうだがーーやはりスペックだけは高い。


「……では、魔法の使用を許可します……」


そうこう考えていると魔法の許可が出された。

真っ先に魔法を使ったのはーープラン・ルル。


「はぁ……『湧き上がれ』……あれ?」


「どうした?プラン」


手を器の形にして魔法を使ったプランの手の中には少量の水が出てきていた。

しかしーー。


「い、いえ。本当はもう少し冷たい水を出すつもりだったんですけど……なんだかぬるくなっちゃって」


「あぁ、そういう事か。たまにあるね、それ」


「え?えぇ、はい」


どこかぎこちない会話に耳を傾けながら、セントは考える。


(体力が無くなったり、集中できてないと魔法は完全に成功しない……。それを教えるための魔法禁止か?でもそんなの誰だって……)


流れる風を感じながら体を冷ます。悲しいかな魔法の使用許可がでてもセントには己の体を冷やしたり喉を潤す魔法が使えない。

風に当たりながら、学園内を流れる水路に近づく。

日本に住んでいた以上、こういう水路は汚いというイメージをセントは持っていたがーー。


「へぇ、綺麗だな」


自分が思っているより全く汚れていない。魔法で管理でもされている二だろうか。

透き通る水に手を入れて暫く。手が冷えたのを確認してから、セントは倒れている女子二人ーーカナリアとジャンヌのもとへ向かう。


(……なかなかにエロティックだな)


並んでうつぶせに倒れている美少女二人、首筋には一筋の汗が流れている。

カナリアとジャンヌの髪も汗で頬に張り付いて、荒い息がより一層艶めかしい。

しかしこの二人は最早熱中症に近い状態だ。

セントは静かに二人に近づく、そしてーー。


「えい」


水で冷えた手で二人の首を掴んだ。


「きゃ!?」

「んっ」


ちなみに上がカナリア、下がジャンヌの反応である。


「大丈夫?二人とも、額にも当てようか?」


「あ、あの、セント?冷たくて気持ちいいけれど……は、恥ずかしいわ」


「そう?」


ならば、とセントはおとなしくカナリアから手を引いた。嫌がることはしたく無いという数少ない素直な気持ちなのかもしれない。


「セント様、私の首は離さないでくださいね。空いた手は、こちらに」


そう言ってジャンヌはセントの手を握り、自分の頬に持って行った。


「あぁ……冷たくて、でも温かくて……幸せです」


「ふふ、おかしな事を言うね」


(ドキドキがとまらねぇ)


セクハラまがいの行為もセーフらしい。二人に激怒されてビンタされるセントも面白いといえば面白いのだが。


「あ……わ、私ちょっとプランに水を貰ってくるわ……」


カナリアがしゅんとした様子でプランのもとへ歩いていく。以外にダメージが大きいらしい。

まだ気恥ずかしさの残るカナリアにはジャンヌのような行動は出来ないようだーーとセントは分析した。

そうこうしているとウルがセントへ近づいてきた。


「……セント君……少し、いいですか……?」





「逃した獲物は竜でしたがどう責任を取って頂けるのですか?」

宜しければ、どうぞ。

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