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雰囲気だけで生き残れ  作者: 雰囲気
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四十八話

「はぁ」



零れる溜息一つ。

タッタッと軽快なリズムを感じながら、セントは魔法学園の広場のような場所を走っていた。

 走る、という事がセントは好きではない。この体になる前は運動とは殆ど無縁だった訳で、当然体力などある筈もなく。

ただただ辛い物だと思っているからだ。


「魔法学園に来て最初の授業がランニングってどういう事よ……」


だがこの(・・)身体は慣れない動きにも驚くほど簡単に順応してくれる。

走ることは案外難しい。足を交互に踏み出し、体のバランスをとりながら、前に出来るだけ速く進む。

慣れないものがやれば、それこそ転んで怪我をしたりしてしまうのも当たり前だ。

しかしそんな事は英雄の肉体には関係なかったらしい。アスリートのようなフォームで走るセントは、やはり身体スペックはしっかり両親から受け継いでいたようだ。

哀れかな、なまじ中途半端に才能を受け継いだせいか欠点も目立つのだがーーそれもこうして真実を知っているからこそ感じる事なのだろう。



「ひ、ひーん!もう無理です……!いつまで走るんですか……!?」


「プラン、もう少しだけ頑張ろう。俺達には魔法の力だけじゃなく、ちゃんと体力も身に付けておく義務がある」


「そ、そんな……」



後方からは間の抜けた会話が聞こえて来る。プラン・ルルと、もう片方はセラ・フィールか。

セント以外の生徒も勿論同様に走っていた。

セントも初めはジャンヌとカナリアと共に走っていた。カナリアにジャンヌを紹介しながら走っていたのだがーー。


「……大丈夫かね、カナリアもジャンヌも」


ちらりと視線を後ろにやれば、ふらふらと少し危ない足取りで走るプラン・ルルとそれにペースを合わせるセラ・フィールが見える。

だが、さらにその後方ーーそこには息を荒くして、少し赤い顔色で走る少女二人の姿。

カナリア・クルトール、ジャンヌ・ホーリア二名である。

プラン・ルルと同様に足取りは危なっかしい。セントは二人が転ばないか内心ハラハラしていた。


全ては、第七教室の担任の一人。ウル先生が定めたルールが原因だった。


(この時間に限り、全ての魔法の使用を禁止する……ね)


幾ら膨大な魔力をその身に宿せど、体は未だ少年少女の物。

多少は魔力で強化されているとしてもーー長時間走れば限界が訪れる。

少女達にも限界が迫っていた、魔法が使えれば大した事では無かったがーーしかし使えないこの時間は相当に辛い。


勿論セントも若干は疲れているが、限界と言うには全く届いていない。自分で自分のスペックに驚くのもこれで何度目か。

両親に感謝だった。


セントも初めはカナリアとジャンヌに付き添いながら走っていた、一人で走るより、そりゃ美少女二人と走ったほうが楽しいしやる気もでる。

だが少女二人が遅れ始めた時に、ほかでもない少女二人が言ったのだ。


「セ、セント……私達に合わせなくても大丈夫よ?あなたの邪魔は、したくないわ」


「そうですよ、セント様。どうか、お先に……」


深刻な顔でそう言われれば、気持ちを無為にすることも出来ず。

しぶしぶセントは一人ペースを保っている。








(しかし……あと一人はどこ行った?ウル先生もいないという事は、一緒にいるんだろうが)


走っているのはーー5名。セント達の第七教室クラスは全員で6名だ。

走ると言われ、着替えを渡された時には一緒だったはずだがーー果たして何処に行ったのか。

ちなみに更衣室ではセラ・フィールと二人きり。何か話しかけられた気がするが、生憎走ると言われ機嫌が下がったセントに男と会話する元気は無い。適当な返事を返してはいたが、内容は覚えていない。

気まずかった事だけは確かだが。


(それにまだちゃんと顔を見れてないんだよな、そいつだけ。黒髪ポニーテールは気になるがーー今はいいか。とりあえずは俺たちが走って一人だけ走らないのは気に食わないぞ……)


内心でも文句が絶えない。

このあとも、ウル先生がやってくるまでの長い時間を、五名の少年少女は過ごしたのだった。











「……走っているセント様も、凛々しいですね」


「……そうね」



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