四話
迎えた五歳の誕生日の朝、母様は俺に言った。
「女神さまのおつげはね、大体夕方に来ると言われているわ。私も夕方だったの」
「そうなんですか」
「ええ、だから夕方を楽しみにね、それともう一つ。女神さまのおつげは魔力量が多ければ多いほど鮮明に聞こえるわ、逆に魔力量が少ないと掠れたりしてきこえにくいの、まぁセントは綺麗に聞こえるだろうから、びっくりして泣いちゃわないようにね?」
「泣きませんよ、もう五歳なんですから」
「あら、五歳なんてまだまだ子供よー?大人ぶっちゃって!」
明るい笑顔を浮かべて母様がからかってくる。
(母様ほんと美人……というか大人だからな、それにしても魔力量が多ければ鮮明に聞こえる、か・・・楽しみだな)
そんな事を思っていると父様が帰ってきた。時刻はまだ昼を過ぎた程度、いつもよりだいぶ速かった。
「ただいまララ、セント」
「お帰りなさいあなた!」
「父様お帰りなさい、早いですね?」
「ああ、今日はセントの誕生日だからなぁ。仕事を頑張って速く終わらせたんだよ」
そう言って俺の頭を撫でる手は優しい、いい家族を持ってよかったと心から思う。
「ありがとうございます父様、嬉しいです!」
こうして昼は久々に父様と母様と仲良く会話をしたのだった。
そして空は徐々に茜色に染まり始める。
夕方がくると俺は自室に戻った、静かな所で聞きたかったからだ。
(いよいよか、落ち着いて待とう)
そうしてじっとしていると微かにザザっと言うノイズみたいな音が聞こえてきた。
(きた!しかしこれは・・・)
「あ……た………ザザ……女神の加………ザザ…受け…………」
電波の悪いラジオのような、雑音交じりのーーいや寧ろ雑音メインになってしまっている。
(思いっきり掠れてるしノイズがひどい、え、これ魔力量が少ないって事?あの二人の息子で?そんなバカな)
「属…………ザザ……つね……」
(おい待てほとんど聞こえないぞ!!?やばいこれ両親にどうやって報告すりゃいいんだ!!?)
「セントー、おつげきた?」
「うわぁ!!か、母様いきなり後ろから現れないでください!」
「あら、びっくりした?ごめんごめん」
母様は笑いながら、まったく悪いと思っていない顔で謝った。おのれ。
「それでそれで?おつげは?」
期待に満ちた目である。正直に告げようとしたが、俺は前世の癖でとっさに嘘をついてしまった。
もはや呼吸のように嘘をつくようになってしまっている。
「はっきり聞こえましたよ、女神の加護の話が」
前世の俺は嘘つき見栄っ張りと完全にクズだったが、その癖が考えるより先に出てしまった。
「まぁそう思っていたわ!じゃあ明日にでも王城にいかなきゃね!大丈夫よ!ララ様が一緒についていってあげますからね」
「は、はい」
これが俺の、この世界に転生して初めてついた嘘となった。