二十四話
クイーラ王国の王都は3つのエリアに分けられている。
花の一街、空のニ街、大地の三街。
3つに分けられているからといって、どこかがスラムになっているとか他の街に比べて治安が悪いだとか、そういう事は全くない。
どのエリアも他国の商人が行き来し、珍しい商品が露店形式で売買されている。
勿論、露店形式だけでなく貴族や裕福な家庭が足を運ぶような高級店なども充実している。
王都には今日も多くの人が訪れ、いつもと変わらない活気を溢れさせていた。
そんな王都の花の一街、そこに『救世の英雄』ユーラス夫妻の屋敷があった。
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「ちょっとサリエルー!!お休みだからっていつまで寝てるのよぅ。せっかくこんないい天気なんだから、お弁当もってピクニックに行きましょう!」
「…………………もう少し………もう少しでいいから寝させてくれララ………」
「むー!!このララ様がピクニックに誘ってるのよー!?サーリーエールー!!!!」
「わかった、わかったからその手のひらの炎をしまってくれ。家が無くなる」
「………じゃあ一緒に行ってくれる?」
「……そうだねぇ、何時までも寝ていてはつまらないからね。準備しようか、ララ」
「うん!!……無理矢理起こしてごめんね?サリエル」
「いや、ダラダラしていた私が悪かったよ。元気に行かなけれなね」
「うん!おはようサリエル、今日もこのララ様があなたを愛してあげるわ!!」
「おはようララ、今日もこのサリエルはあなたを愛するよ」
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そもそもこのクイーラ王国に英雄と呼ばれる者は何人いるのか。
実はこれ、英雄と呼ばれる人数などは相当にてきとうなのだった。
英雄認定証!なんて物があるはずもなく、結局誰を英雄と思うかは人それぞれなのだ。
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「準備ができたわサリエル!さぁ行きましょう!!」
「ちょっと待とうねララ、僕が起きてからまだ3分と経っていないよ?どうして?」
「それはあなたが起きる前から私は準備が出来ていたからよサリエル!私は用意周到だわ!さすがね!」
「……………………あと10分待ってくれ、すぐ準備する」
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セントが魔法学園に行ってから、家にはララとサリエルの二人きり。
甘々だった。
セントが家にいれば、魔法を教えたり、勉強を見てあげたりで、なんだかんだ夫婦二人で堂々と仲良くする時間は少なかったのだ。
仕方ない、仕方ないのである。
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「ほんとにいい天気ねサリエル!やっぱりピクニックにきて正解だわ〜!」
「あぁ、本当に気持ちがいい。あのまま寝ていたらこの気持ちは味わえなかったなぁ」
「このララ様に感謝しなさい!えへへ」
「ありがとうございます〜、ララ様」
「あ、今ちょっと馬鹿にしたでしょ。馬鹿にしたわよね?」
「ごめん、謝るから手のひらの炎をしまってくれ」
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サリエル・ユーラスは王城勤めの魔法使いである。
普段は魔法の研究をして、有事の際などはすぐに対応する。
ただこのクイーラ王国に戦争を仕掛けるような国はなく、またサリエル・ユーラスや他の英雄が多数いる王城を襲おうなと考えるような人間もいない。
サリエル・ユーラスは基本的に最近暇であった。
まぁそのおかげで愛しいララとの時間が沢山取れるのだから、本人はとてもありがたがっている。
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「これはまた……凄く美味しそうだ。ありがとう、ララ」
「夫のために美味しい弁当を作るのも妻の大事な役目よサリエル!」
「うん、相変わらず君は満開の花のように笑うね。凄く可愛い」
「わ、私が可愛いのは当然だわ!……………その………ありがと……」
「あはは、顔が真っ赤だよララ」
「そ、そんな事無いわ!そう言うあなたの顔色は最悪よサリエル!今にも死にそうだわ!」
「待ってくれララ、それは照れ隠しと受け取っていいんだよね?僕は本当に今にも死にそうなのかい?」
「そんなことより早く食べましょう!私はお腹が減ったわ!」
「そ、そんなこと……………そうだね、食べようか」
「ええ、いただきます!そしてどうぞ沢山食べてね!」
「いただきます」
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魔王を倒した『救世の英雄』。
サリエル、ララをはじめ、この国の王を含む5人。
サリエル・ユーラス
ララ・ユーラス
アクラ・イクリュリア
アノエスト・エンジ
ドラン・クルトール
この五人が、世界を壊していく魔族を薙ぎ払い、魔王を倒したとされる者とされている。
だがユーラス夫妻はこの『救世の英雄』という呼ばれ方が嫌いだった。
そもそも、英雄という言葉が嫌いらしい。
魔王を倒した五人、これは大きな間違いだ。
五人で魔族全てを屠れる訳が無い。いくら力を持っていても少数では無理なのだ。
では何故魔王を倒せたのか。
簡単な話である、五人以外の誰かが戦っていた。それが真実だ。
勿論主力となったのは五人含む少人数だろう。しかし確かに魔族と戦った者はいるのだ。
当然、命を落とした者もいる。いない筈がない。
国を、世界を守るために命を掛けたのだ。
その者達を英雄と呼ばずして、なんと呼ぶのか。
ただ力の大きさが違っただけで、同じ戦場で戦ったことには違いないのに。
それが英雄のユーラス夫妻が、英雄という言葉を嫌う理由だった。
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「われながら私の料理は最高ね!ね、サリエル!」
「そうだねララ、自分で言わなければもっと良かったかもしれない」
「私は褒められて伸びるタイプなのよ!」
「それじゃあ君は自分で自分を褒め続けて永遠に伸び続けるのかい?恐ろしいな」
「さすがララ様ね!」
「…………………ご馳走様、ララ」
「ええ、お粗末様!」
「お腹いっぱいになったら眠くなるのは人間の魂に刻み込まれたものだな…………」
「朝あれだけ寝てまだ寝るのね………でも今は私も少し眠いかも………サリエルうでまくら〜」
「はいはい、どうぞ。お姫様」
「お姫様じゃなくて、ララ様よサリエル」
「ふふ」
「笑わないの」
「ごめん」
「もう………」
「…………やっぱり、心配かい?セントの事……」
「……うん、心配よ。死なない事は解ってるけど、大怪我して精神にダメージを負う子はいるわ」
「…………」
「それに、あの子には初級魔法しか教えていないわ。低級幻術と雷光だけよ?」
「………それは仕方のない事だよララ。僕らは確かに魔法使いだけど、魔法教師ではないんだ。下手に教えれば、どんな危険があるか解らないから」
「うん……解ってる、解ってるわサリエル。でもーー」
「ララ、あの子は大丈夫だよ」
「………」
「魔法の怖さを知っている。自分の力をしっかり理解して、この5年間のほとんどをコントロールに費やしてきた。信じてあげようじゃないかーー僕達の息子を」
「………そうね、そうだわ。なにせこのララ様が産んだ子なんだもの」
「ふふ、そうだね」
「じゃあサリエル、二人で一緒に、セントを見守ってくれるよう女神様と精霊様に頼みましょ?」
「そうしようか」
「「セントに女神様と精霊様の祝福あれ」」




