十六話
ネガティブ思考に囚われていたセントだったが、ある事を思い出し考えをリセットする事にした。
(そう言えば母様が言っていたな………魔法学園についたらすぐにびっくりする事があるとかなんとか………)
その話をしている母様はとても楽しげな顔をしていたので、その時はプラス方面のびっくりを想像していたのだが、
(よくよく考えれば母様は大抵のことを楽しげな顔で話していたじゃないか……父様が仕事で怪我をしてきた日にも楽しげな顔であなたが怪我をおうなんて珍しいわね~とか言って……………)
本人はマイナス思考をリセットしたつもりだが抜け出せていなかった。
(よくある小説とかじゃあ魔法学園に入って最初にある事はなんだったか………………新入生代表の挨拶……?いやしかし勝手に代表が決まっている筈がない、親から離されるとはいえ貴族や名門の子供は自分が代表になると言って聞かないだろう………じゃあどうやって代表を決める?それはーー)
これから初めての学校へ向かう10歳が考える事ではないがーーさすがは前世で虚勢を張り続けた男、読みの良さは素晴らしかった。
(ほぼ確実にクラス選抜、もしくは順位決めの戦闘がある。流石にわがままな奴でもその場で負ければ大人しくせざるを得ないからな)
冷静に考えているように見えるが、セントの表情は青いを通り越して白くなっていた。
(まずい、これはまずい。ユーラスの名を背負っているんだ俺は、しかもーー)
思い出されるのは美しい魔法を見せると約束した少女。
見栄っ張りを前世から引き継いでいるセントには、その少女から失望されるのがとても怖かった。
(考えろ、考えろ考えろ考えろ。魔法学園には他の英雄の子供達も確実にくる、そして英雄の中で最も有名なのはユーラスだ。狙われることは間違いないーー考えろ、考えろ!)
夜になり、野営の準備が始まってもセントはずっと考え続けた。