表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雰囲気だけで生き残れ  作者: 雰囲気
17/72

十四話

「さて……と」


光陰矢の如し、俺は一昨日10歳の誕生日を迎えた。

10歳から魔法学園に行かなければならず、一度入学すれば暫くは家族に会えなくなる。その分かは解らないが、一昨日の誕生日パーティーでは両親からいつも以上に甘やかされた。

その時のことを思い出して苦笑しながら、今は学園に行くための荷造り中だ。


「魔法学園か、どんなとこだろうかね。まぁ前読んだ小説とかじゃあ高飛車なお嬢様やら偉そうな坊ちゃんがいるんだがーー」


前というには勿論前世のことである。

というかセントも充分お偉い坊ちゃんなのだがーー本人は解っていないようだ。


「それよりアリアだな………綺麗になってるんだろうな」


5年前にあった優しく美しい少女を思い出す。

彼女との約束である魔法ーー美しい雷魔法は、ほぼ完成していた。

早く見せたいという気持ちもあるが、期待に添えなければどうしようという気持ちも大きいのだった。


「頑張ろ………っよしと」


お気に入りの本を鞄に入れ、荷造りを終える。

そもそも生活に必要な物は学園にあるし、10歳に出来る荷造りは自分の部屋の持っていきたいものを鞄に入れる程度のことだった。


部屋を出て家の玄関へ向かう、もう馬車は昨日からきているのだった。


(いきなり来ていきなり明日の朝出発します、だもんなぁ)


しかし両親は驚きもしなかったため、これが普通なのだろう。


「母様、父様」


玄関で俺を見送ろうと待っていてくれた両親を呼ぶ。


「セント、準備は出来たのね?」

「忘れ物はないね?」


そう言ってくれる両親の顔には、隠しきれない寂しさが浮かんでいた。

前世では両親に優しくしたことなど殆どなかった、いつも見栄ばかりはって、親の気持ちなど考えたこともなかったかもしれない。

だからこそ、だからこそこのセント・ユーラスとしての人生では、この優しい両親に心から感謝し、恩返ししようと思った。


「はい、母様、父様。会えなくなるのは寂しいですが、次に合うときはもっと立派になって帰ってきます。必ず!」


俺がそう言うと、二人とも顔を見合わせて、それから優しく微笑んだ。


「もう充分立派だけどね、セント。あなたなら何処へ行っても大丈夫。だってこのララ様の息子なんだもの!ね?」

「そして僕の息子でもあるよ、ララ? セント、悔いのないように頑張ってきなさい、いつも私達はお前を思っているよ、それを忘れないように、ね」


心から、この人達の所に生まれてこれて良かったと思った。


「はい!いって参ります、母様、父様!」

「いってらっしゃい!セント!」

「うん、頑張ってきなさい」



こうして俺、セント・ユーラスは、魔法学園へ向かう馬車に乗り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ