十三話
証明魔法から5年ーーー俺は10歳の誕生日を迎えていた。
魔法を使えるようになってからは、特訓の日々だった。
大きな魔法の基礎となる部分を母親と父様からこの5年で教えてもらってきた。
基本的な魔法の使い方。
属性を強化する方法。
魔力量を節約する魔法使用。
etc……etc……
母様と父様が言うには、俺は魔力コントロールがずば抜けているらしい。
「証明魔法の時に解っていた事だが、ここまでとは思わなかったな」
父様に与えられた課題ーー魔力を雷に変換し、そのまま一本の線の形にして円を作る。
これを一発でクリアした時に、父様はそう言っていた。
魔力を上手く操る方法、それは実は現代人にとっては簡単なことである。
イメージすればいいのだ、自分がやりたい事を。
確かに鮮明なイメージが必要となるが、火や水、雷などをテレビや写真などでよく目にする現代人は、簡単に想像することができるだろう。
しかしこの世界ではどうだろうか。
魔法技術は発達していても、科学はまだ全くと言っていいほど注目されていなかったし、発展もしていない。
故に人が鮮明なイメージを作るには、他者の魔法を何度も見る。また水や火に関しては雨を見たり、またマッチやロウソクの火を見ればいい。
しかし雷は簡単に見れるものではない、故に雷魔法はコントロールが難しいとされていた。
(前世ではよくビックリ映像とかで雷の映像が流れてたからな)
セントはそれを応用しただけであった。
魔法を行使する際もイメージが大切となってくる。
この世界の魔法に詠唱などは必要としない。ただイメージを作り上げ、それに魔力を流し込むだけでいい。
セントは一度、落雷をイメージして雷魔法を使おうとしたが、自分の体の周囲にババババッ!と雷が弾ける音がするだけで終わってしまった。
明らかな魔力不足である、割と真剣にやっていたためセントはとても残念だった。
また、それを遠くで見ていた母様に、
「セント、今何をしようとしたの?」
と心配そうな顔で聞かれて誤魔化すのが大変だった。
雷魔法は確かに美しく神秘的だったが、使うとどうしても静電気がたまり髪の毛が浮いてしまう。また、少しだが小さな青白い電気を体に纏ってしまっていた。
よくアニメとかである力が吹き出して髪の毛ぶわっとなる、という状況にそっくりだが、セント自身にとってはバチバチしてすごい嫌だった。
雷魔法と並行して、闇魔法の練習もやってきた。
闇魔法は直接的な攻撃系の魔法ではない、と父様が言っていた。
よく使われるのは、幻覚、幻惑、幻影などの幻を創り出すような使い方らしい。なんだ、即死とかではないのか。ザ○キ。
また、闇魔法は使用する魔力量が他の属性に比べて少ないと教わった。
闇魔法を教える事は、父様にも母様にも難しいらしい。珍しい属性で、術者一人一人によって使い方も変わってると言っていた。
魔法学園に入るまで使ってはいけないよ?言われ、ガッカリしたものだ。
が、俺は好奇心に勝てず、一度だけ闇魔法を使ったことがある。
幻を創り出すのならば、落雷の幻だっていけるはずだ。俺はどうしても落雷をかっこよく決めたかった。
「こいよーー落雷ッ!」
かっこよく(?)そう言って闇魔法を発動する。イメージは空から降る一本の青い槍ーーー。
すると落雷をイメージしてしまったからか、バチバチッと俺の周りに少量の電気が飛び散ってしまった。
失敗かなーと思っていた時に突然ドォン!という大きな音がして目の前が真っ白になった。
(じ、時間差かよ!?それに幻だと解っているのに音も光も本物と思ってしまう!すげぇかっこいい!!)
「何事だ!!?」
父様が凄いスピードでやってきた。
そのあと2時間、父様に闇魔法を使った事を叱られ、父の見せた怒りの表情に絶対10歳になるまで闇魔法を使わないことを誓った。
魔法の訓練を始めて、二年ーーー七歳の時からセントは少女との約束を果たすため、美しい雷魔法の練習を始めた。
魔法に使う魔力量を節約する方法が難しく、それをマスターするのに2年も掛かってしまった。その甲斐あって、今では普通の魔法使いがつかう魔力量の三分の一程度でセントは魔法を行使できる。
この方法は殆どの魔法使いに知られてはおらず、魔族の王を倒した時のメンバー、つまり英雄達しか知らないらしい。それを教えて貰ったのだから、セントは両親にもう一度心から感謝した。
さてセントが魔力を節約できるようになっても、魔法を維持できる時間、影響を与えられる範囲、威力などはあまり大きくはない。
三分の一でこれなのだから、元の魔力量の少なさがよく解る。
そんな中でセントが考えた美しい雷魔法はーーー、
(闇夜に、雷の薔薇だ)