十二話
「それにしても………どうしていきなり大量の魔力を魔法に注ぎ込んだの?セント。途中までは極少レベルで抑えてたじゃない」
(いや極少レベルに抑えてたんじゃなくて、魔力を全部注ぎ込んで極少レベルなんだが…………じゃない、母様は気付いていないのか?)
「いや、そうじゃないよララ。セントは極少レベルのまま魔法を発動しようとしてたからね、ただ発動する直前に何かがセントの魔力を引き出すために自分の魔力を直接心臓に触れて流し込んだんだ」
その言葉にさすがと思う。
父様が「何か」と言っているという事は、精霊とまでは解っていないだろう、だがそれが「何をしたか」は正確に把握している。
(あんだけ荒れた雷の音と光の中でどんだけ冷静に観察してんだよ父様)
「そうだよね?セント」
(さてしらばっくれるか)
ここは何もわからないフリをした方がいいだろう、変に答えて墓穴を掘るより何も答えない方がいい)
「すいません………僕にも一体なにが起こったのか。いきなり知らない魔力が入ってきて、僕の魔力を雷にしてしまいました」
「そうか………」
そう言って父様はm何かを考え込むように黙ってしまった。
「ですが、本当によくあそこまで放出した魔法を制御しましたね。それに私達にも一切被害は無かったですし……」
ユリさんが俺を見ながら言う。
「そうね、私達を守ってくれたんでしょ?かっこいかったわよ?セント」
母様も見蕩れるような笑顔でそう言ってくれた。
(そうだな………あいつの魔力でできた雷を制御したのは確かに実力だ。まぁもし俺の魔力量が多かったら制御できて無かったはずだ、よかったー魔力量少なくて、あー……よかったよかった………)
泣きたくなってきたセントだった。
「さ、難しい事ばかり考えるのはやめましょう!セント様は見事雷と闇の魔法を行使されました。その証に、これを」
そう言ってユリさんが俺に渡したものはーーー微かに青い光を放つサファイアのような物と、吸い込まれそうな闇色をしたオニキスのような物が埋め込まれた美しいペンダントだった。
「これは私のような魔法属性を調べる事を許された物にしか作れないペンダントです。偽装ができないよう強力な魔法を10人ががりで作っているので、これが属性の証明となります、おつけしましょうか?」
ユリは美人だ、美人にペンダントをおつけしましょうかと聞かれる。
yes!
「お願いします」
「はい、畏まりました」
クスッと笑って立ち上がり、俺の後ろに回る。
「失礼します」
首にペンダントが回される、ユリさんからはいい匂いがした。
少しこそばゆいが我慢である。
「はい、つけ終わりましたよセント様。これであなたは正式に雷と闇の二属性持ちとなりました。このペンダントをつけたら、10歳になると必ず魔法学園への入学をしなければなりません。これは拒否する事が出来ません」
(そんなに魔法使いは大事にされるのか……いや、手放したくないんだろうな、国が)
「解りました」
「セント様は魔力量が多く、また属性が二つあるのでこれから魔法を使う際は出来るだけ気をつけてください。まぁララ様とサリエル様がお教えになられるなら大丈夫でしょうけどね」
そう言って両親を見るユリさん。
「当たり前よ!ララ様がきっちり教えてあげるわ!ね!サリエル!」
「そうだな、安心しなさい。ただ大きな力を使う事はしないよ?それは魔法学園で学びなさい。僕達が教えるのは基礎だけだ」
(好都合、どうせ俺には大きい魔法は使えないからな。二人を失望させずにすむ。しかし頼もしい限りだな、この二人は。)
「よろしくお願いします、母様、父様」
俺は二人に頭を下げた。
こうして俺の魔法の属性証明は、無事(?)終了したのだった。