十話
「では始めます、セント様、この水晶の上に手を」
言われた通りに水晶の上に手を置く。
手が水晶に触れた瞬間、体の中の血液が一瞬熱くなった気がした。
「ではそのまま目を閉じて…………血液の流れを感じてください…」
ゆっくりと目を閉じる、そのまま血液の流れをーーー感じる。
「血液の流れを感じたら、その流れを左手の人差し指に集めるイメージを」
左手の人差し指の先に血液が集まるのをイメージする。
「そのまま…………溜め続けるイメージを」
血液が人差し指の先に溜まるイメージを続ける。
「限界まで溜まったと思ったら、言ってください。」
限界と思うのは早かった、不思議と本当に体中の血液が人差し指に集まっている気がする。
「限界までためました」
「…………………………………そこにとどめたものが、貴方本来が持っている、生きるために必要な魔力です。次は女神様から与えられた魔力、魔法を感じてください。心臓のあたりに」
妙な間があったが、今は気にしない。
心臓の鼓動を意識するーーーすると、心臓の中に何かある感覚がした。
「心臓の中に………何かが…………」
思わずに口に出してしまう。
「それが魔法です、そこに女神様から与えられた魔力もあります。そこに魔力を溜めた人差し指を当てて、流し込むイメージをしてください。そうすれば魔法は自動的に発動しようとします。ただしそのまま発動させると魔力全開で放つのと同じですので、出来るだけ魔力の収縮をイメージしてください。セント様は2回それが訪れる筈です、落ち着いて………ゆっくりで大丈夫ですので」
言われた通りに、人差し指をゆっくりと心臓に中心に持っていく。
背中には嫌な汗をかいている、握った右手は手汗で湿っていた。
そしてーーー人差し指が心臓に触れるーー
すると体の中を何かが駆け巡る感覚がした、ついでその何かが外に出ようとする感覚もーーー
(まずい!!抑えるんだ!)
最初に収縮をイメージしたのは闇、瞬間部屋の中にパァン!という破裂音が響きわたった。
「セント!闇魔法は成功だ!」
父様の声がきこえる、よかった成功したのかと少し安心した。
そして俺はこの時気を抜いてしまったーーー雷もこの感じならいける、と。
そしてもう一度体の中を何かが駆け巡る感覚、雷の魔力だ。
いけると思ったーーーそこでいきなり声が頭になかに響いてきた。
『私はーーー破壊を愛しているの』
『せっかく貴方に雷をあげたのに最小の魔力なんて楽しくないわ』
『だから、もっとーーーあげちゃいましょ?』
体中の全魔力が雷になるのを感じた。