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エッセイ

なろうでストレス展開が嫌われる理由

作者: いかぽん

 小説家になろうというサイトでは、鬱展開やストレス展開は嫌われる、叩かれるという話をわりと頻繁に目にする気がします。

 これは本当なんでしょうか。


 これは僕が読んだとある作品の話なのですが……ちょっと読んでみてもらえますでしょうか。

 なお、記憶を掘り起こした上に圧縮して書いているので、細部は適当というか捏造です。


***


 俺はとあるボロアパートの大家だ。

 副業でイラストレーターもやっていて、収入は十分にあるが、その実質はコミュ障の引きこもり。人生は灰色だ。


 その俺が管理するボロアパートの一室、俺のいる管理人室の隣に、若い女性が入居することになった。

 挨拶に来た彼女は、俺みたいなどうしようもないクズを相手にしても、屈託なく笑って、自分をさらけ出してくれた。

 こうも無防備に信頼されると、逆にこの子大丈夫なのか?と心配になったぐらいだ。


 彼女とはご近所付き合いで、毎日他愛もない話をするようになった。

 灰色だった俺の人生が、ほのかに色付いたように感じる。


 母子家庭で育ち、唯一の肉親である母親をも亡くした彼女は、あまり裕福ではなかった。

 働き口を見つけるのはなかなか大変なようで、このたびとあるコンビニに採用されたと言って喜んでいた。


 俺がある日、近所のコンビニに行くと、彼女がそこでアルバイトとして働いていた。

 だが、そこの店長がクズだった。

 事あるごとに、彼女にセクハラ──腰を揉んだり、尻を触ったり──をしている。


 彼女は嫌がっているが、強くは言えないようだ。

 俺は拳を握りしめる。


 だけど、俺に何ができるのか。


 俺が抗議に行ったところで、彼女の働き口を奪ってしまうかもしれない。

 彼女がそれでも我慢して働いているなら、彼女の意志を尊重すべきなんじゃないのか。


 俺は結局、何をすることもなく、コンビニを出るしかなかった。


***


 さて、どうだったでしょう。

 あなたはこの作品を、面白いと思ったでしょうか。


 多分、読後には不快な気分が残ったんじゃないかと思います。




 ところで、この話には数日後、続きが書かれます。


***


 勤務を終えた彼女が、暗い顔でコンビニから出てくる。

 俺は彼女に声をかけた。

 彼女は驚いたようだが、わずかに笑顔を取り戻してくれた。

 どうやらストーカーとは思われずに済んだようだ。


 俺は帰り道、彼女に提案する。

 もしよかったら、俺のメイドさんとして雇われてくれないか、と。


 俺は時間があればイラストを描いているものだから、管理人室の中はぐちゃぐちゃだし、普段ろくなものも食ってない。

 一方で、金はどちらかというと余っている。

 金を払ってでも、家事をしてくれる人が、ちょうど欲しかったところなのだ。


 俺のその提案に、彼女は泣きそうになりながらも、笑顔で頷いた。


***


 どうだったでしょう。

 ここまで来れば、面白いと感じた人もいるんじゃないでしょうか。

 少なくとも、読後に不快な気分が残っていることは、なくなったんじゃないかと思います。




 つまり何が言いたいかというと、なろうでストレス展開が嫌われるのは、カタルシス展開が描かれる前に読んだ読者にとっては、話がそこでストップしてしまうからなのではないか、ということなのです。


 書籍の小説であれば、続きを読み進めることでカタルシスのあるシーンまで一気に辿り着くことができますが、1話ごとに細切れで投稿するなろうの小説では、読者がストレスを受けた状態のまま、放置されてしまうということが起こりうる、ということです。




 そんな風に思ったのですが、どんなもんでしょうか。


 万一、上記ストーリーの元となった作品の作者がこのエッセイを読まれて、気分を害されるようなことがありましたら、誠に申し訳ございません。

 この物語は、構造上非常によくできているなぁと感心したものでありまして、貶すような意図は一切ないことを付け加えさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 漫画の連載などでは引きが大事と言われますよね。 一話毎の区切りを意識するべきなんでしょうが、文字数がまばらになったり意識するのも大変そうだなと思いました。
2021/06/12 05:58 退会済み
管理
[一言] バランスが取れていないことによる収まりの悪さが、ストレスの原因になっているのかなと思ってます。 後からくるハッピーエンドというのも、一つのバランス調整だと思いますし、それ以外にも、例えばその…
2018/11/05 00:50 退会済み
管理
[気になる点] > 万一、上記ストーリーの元となった作品の作者がこのエッセイを読まれて、気分を害されるようなことがありましたら、誠に申し訳ございません。 事前に許可もらわないと駄目じゃないですかね?…
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