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トゥルース・ワールド  作者: 結城 空
王都ハルベリア
8/10

光速の黒雷

今回俺達はついに実践演習ということで魔王軍討伐の任務に来ていた。


俺達もそれなりに強くなりつつあるということでのことだった。


「腕がなるぜえー」


聡は気合十分のようだ。


「緊張してきたなー」


一方こちらはやや不安なようだ。


「いざとなったら助けてやるさ」


「大丈夫。私も強くなったから」


由美も少しは頼りになってきたかなとわずかに感じる。

俺達はこの世界にきて一ヶ月ほどたった。それまで魔王を倒すための訓練をずっとこなしてきたが俺達はすさまじい勢いで成長してきた。


「君たちを頼りにしているよ」


と、笑顔で期待のまなざしを飛ばしてくるのはロイヤルナイトの一人、爽やか先輩のマルス・アスターだ。


「おそらく今回敵の勇者も来ると思うから、気をつけて」


こっちは若干俺よりも歳が低そうだがもう一人のロイヤルナイト、エミリア・ハーネットだ。口数が少なく感情もあまり表に出さない双剣使いだ。


「前方敵集団発見!!まもなく接触します!」


偵察隊の一人が叫びながら戻ってくると全員が戦闘準備を始める。


時刻は夜8時。

日も沈み真っ暗な森の中。唯一の手がかりは月の光だけだ。


刹那、一瞬の光が遠くで光ったと思ったら何かが飛んできた。

いや、走ってきただけだ。ただあまりの速さに飛んできたのだと勘違いしたのだ。


俺も瞬時に反応し、ガキィィンと金属がぶつかり合う音が響く。

黒いコートに黄色いラインが入っている。そんな衣装に身を包んだ存在を俺は目で捉えた。


あまりにも早い斬撃をしばらくはただガードするしかなかった。

五連撃ぐらい受けきっただろうか。それらを受けると強襲者は距離をとった。


「アークの報告じゃあ雑魚だと聞いていたが、案外やるじゃねぇか」


黒いコートに金髪の髪、そして禍々しい赤い瞳。その瞳が彼の禍々しさをあらわしている。


「まさか、お前が魔界の勇者さんですか」


「はっ、物分りが早いじゃねえか、俺が・・・・・いや、俺達が魔王軍の勇者、虔爾けんじだ」


低いアルトボイスからは先の禍々しさがびりびり伝わってくる。

さらに後から魔王軍が迫ってくる。


こちらの王国軍も時の声をあげ、両軍がぶつかりあう。

王国軍といっても今回は二十人ほどで、敵の軍も同じくらいだ。両軍とも相手の力量を測るかのごとくこんな戦いを日々している。

しかしいずれこの拮抗は破られ近々戦争になるだろうと王様は言っていた。


「せい、はっ、とりゃあ!!」


聡が次々と敵をなぎ倒していく。

すばやい格闘技に時折土魔法も入っている。

ずっと彼は魔法の習得にはげんでいた。その姿は俺の目に焼きついている。


だから俺も負けじと日が暮れるまで特訓したものだ。

と、今度は由美の水魔法が敵を巻き込む。

渦巻く水の水圧に敵がぎしぎしと軋む音がする。


だがそれだけでは終わらず、魔法で身動きが取れない敵に硬直が解けた由美は一直線に距離をつめていく。

そのまますれ違いざまに敵を縦横無尽に切り裂く。そのフォームはいつ見てもきれいだと感心せざるを得ない。


あらゆる場面で戦闘は一気に熱をましていく。


マルスの華麗な剣技とクラスⅡの空魔法、それにエミリアの双剣は敵を一網打尽になぎ払っていく。


「やっぱ、これじゃこっちの軍が全滅するのも残りわずかだな。それまでの間、しっかりとたのしもーぜ」


早い、黄色い光を帯びた剣が襲い掛かってくる。

再び防戦一方となるが攻撃を受けるたびに敵の攻撃に慣れてくる。

十五発ほど受けて俺はついに敵の隙を見つけた。

そこに剣を滑り込ませるように振る。

しかし俺の剣は空を切るだけだった。


捕らえたはずだったのだが、すぐさま飛びのかれた。


「いいねぇ、楽しませてくれるじゃないか。じゃあ次はもっとはやく・・・・」


再び襲い掛かってくるかと思われたその身体は何者かの手によって動きが止まった。

いや、しっかりと肩をつかんでとめている。


「ちっ、もう終わりか・・・・・ディムロス・・・」


「今日はこのくらいでいいだろう。やつとはまた対峙するときが来るさ」


突如現れたディムロスという男は真っ黒な鎧に身を包み、頭からは曲がった二本の角が飛び出している。


「あれは、ディムロスだ・・・・うかつに近づかないほうがいい」


敵を一通り倒したマルスが隣に来て言う。


「ロイヤルナイトのマルスか・・・・・今お前たちの相手をしている暇はない」


重々しい声でディムロスは続ける。


「まぁ、いずれ俺も貴様らと対峙するときが来るだろう・・・・・近いうちにな」


それだけ残し、ディムロスと虔爾は闇のゲートの中へと消えていった。


敵の姿が完全に消え去り、とりあえずほっと一息つく。

マルスも警戒を解き声を発する。


「あいつは七剣牙の中で№1の実力を持つ。そしてその強さも別次元だ」


そうか、と一言つぶやき地面に腰を下ろす。


「疲れたー、俺はそれよりもあいつとの戦いに神経を集中させすぎた」


あいつとはもちろん虔爾と名乗る勇者のことだ。


「おつかれ浩介さん、すごかったよ、さっきの。あんな早い剣を全部受け止めるんだもん」


駆け寄ってきた由美に声をかけられ周りを見渡す。どうやら皆無事のようだ。


それから城に戻った俺達は結果報告とともにとんでもない事態・・・・いや、皆薄々感じていたであろう。王様から戦争の決定を告げられた。


開戦は今から一ヶ月後


俺達はそれまでの間、全力で自身の強化にあたる。

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