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トゥルース・ワールド  作者: 結城 空
王都ハルベリア
7/10

聖夜の出来事

クリスマス


日本では恋人同士がいちゃいちゃするイベントだ。

だがこんな異世界でもそれと全く同じ光景が見て取れる。


「全く、クリスマスの本当の意味を知らんのか」


とひとりでに文句を言っていた。


「それはあからさまに負け組みの台詞だよ」


と由美が独り言を返してくる。


「どうせ由美もその負け組みの一人だろう」


ため息混じりに由美に返す。


「んなっ・・・失礼な・・・・・彼氏ぐらいいたことありますよーだ」


「今はいないんだろう」


由美に彼氏がいたことに少し驚いた。まあ、あのルックスなら当然うなずけるがなんだか意外だった。


「そういう浩介さんだっていないんでしょ」


「あたりまえだ」


「そ、即答だね・・・」


「リア充爆発しろーー!」


城から叫ぶ俺の声は城下町のカップルには当然届くことはなく虚しく空に消えていった。


すると後から誰かが近づいてくる。

ミルチだ。


「独り身の男女がいてなぜくっつかないのか?そんなにクリスマスのイベントに参加したいのなら二人で行けば良いじゃないですか?」


「何言ってんだよ、そんな簡単にカップルが出来てたまるか。そういうのはもっとお互いの距離が縮んでからだろ」


ふふん、と鼻を鳴らしミルチが得意げに言う。


「それはもう一方の方に聞いてみれば良いじゃないですか。まんざらでもない顔をしていますよ」


え?と由美のほうに振り向く。


「わ、私もクリスマス楽しみたいし・・・・・今日一日だけなら浩介さんの彼女になってあげてもいいよ?」


「え!?俺も別に・・・・由美がいいなら、いいけど?」


由美と一日でも恋人になれるなら、断る理由なんてないはずだ。


「じゃあ、決まりですね。お二人で楽しんできてください」


ミルチに見送られながら俺達は町に向かった。



「なんだかわくわくするね」


「そ、そうだな」


内心ではわくわくよりドキドキのほうが明らかにでかい。

しかしここで一つ問題があった。デートなんてしたことない俺がどう彼女をエスコートしたら良いのかまたクわからなかった。

するとなんというタイミングか、カップル限定のイベントをやっていた。

どうやらお化け屋敷のようだ。こんな子供だましなイベントはスルーしようと思っていたが由美があからさまな反応をしていた。


「ああ・・・・・あんな子どもっぽいイベント・・・・・誰がやるんだろうねえ・・・・」


めっちゃ震えた声で言っていた。

即座に俺は


「さ、いこうか」


「ええ!?いいよ、いかなくて・・・・・」


「いいじゃん楽しそうだし。まさか怖かったりするわけじゃないよね?」


「そそそ・・・・そんなわけないじゃん・・・・・ぜんぜんよゆーですよ!」


これはもうどうあらわしたらいいのかわからないようなくらいあがっていた。


「じゃあ、いこうか」


入場料金500円というぼった栗金額を払って中に入っていった。

そのときの由美のこの世の終わりを見たかのような顔を見た係り委員がびくっと震えたのを見て思わず噴出しそうになった。


「さあ、たのしんでいこーか」


と俺は爽快な声を出すと、由美ががばっとしがみついてきた。


「絶対に私から離れちゃだめだよ。私から離れたら浩介さんは食べられちゃいますからね」


君に食べられるのか?


「大丈夫だよ、そんなに怖がらなくても。出てくるお化けなんて単なる作り物だろ」


「だ、だから怖がってなんてないですってば。私がいなかったら浩介さん、今頃食べられちゃってますよ」


さっきから食べられてばっかだな俺。


しかし内心馬鹿にしていたが外見とは裏腹に中は相当凝ったつくりになっていた。

が、お化けが出てくるたびにこの世のものとは思えないような悲鳴を上げるお化けが隣にいるのでもはや怖がってなどいられなかった。はたしてここを出るころ俺の聴覚は無事なんだろうか。


「というか由美、くっつぎ過ぎじゃないか?」


胸が・・・・胸がやわらかいよー

このままおしり触ってもきずかれないだろうか?


「私がいなかったら浩介さんは50回くらい食べられてますよ」


まだ、強がるのか。

しかし頭の中は真っ白なのだろう、さっきからおしり触ってても全くきずかれないぞ。


そしてようやく出口が見えた。

やっと終わったと由美。

もう終わりかと俺。






「どうだったお化け屋敷?」


「こわか・・・・たのしかったよー」


後半は棒読みだった。


「でも、なんかずっとおしり触られてた気がするんだけど・・・・あれ浩介さん?」


「そ、そんなわけないだろ。お化けの仕業だよ」


「うう~、エッチなお化けもいるんだね」





そのあと俺達は町を夜遅くまで回っていた。

それなりに楽しい時間だったと思う。

誰かと過ごすクリスマスがこんなにも楽しいのだと。そう感じた。


「由美はクリスマス、二人で過ごすのは二回目なのか?」


「ううん、今回が初めてだよ」


「そ、そうか・・」


テレながら答える。


「私、浩介さんがはじめてでよかった」


「なんかそのいいかたエロいな」


「え、い、いやそういう意味じゃなくて!エッチなのは君だよ」


こんな雑談を繰り返しクリスマスも終わりをむかえようとしていた。


「今日はすっごく楽しかったよ。お化け屋敷はもうこりごりだけどね」


「俺も楽しかったよ。恋人もこれで解消だな」


「うん・・・・・ねえ、またこんな感じでデートしよっ」


いきなりの提案に戸惑ったが俺は


「ああ、またデートしような」



恋人は解消された。


だが二人はその帰り道も手をつないで帰った。

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