女の子の疑問 愛ってなぁに?
一人の女の子がいました。好奇心旺盛で分からない事があると聞かずに入られません。
今も分からない事が一つあります。気になって仕方がありません。それは愛とは何かという事です。
この間大人達が話しているのを耳にしたのです。愛ってなんだろう? 何だか難しそう、それでいて何だかワクワクする言葉です。
いても立ってもいられず、女の子は大人に聞いてみる事にしました。
最初に出会ったのは、パパくらいのおじさんと若くて綺麗なお姉さんでした。
「ねぇおじさん。愛ってなあに?」
突然の質問に驚いたようですがおじさんは答えてくれました。
「愛っていうのはね、お金で買えないものだよ」
すると隣のお姉さんが言いました。
「あら? 私はこれから愛をお金に換えるつもりだったんだけど?」
困り顔のおじさんはいいました。
「時と場合によっては買う事もできるかな」
買えないのに買えるの? 女の子は余計に分からなくなってしまいました。答えは得られません。
次に会ったのは牧師さんでした。教会の中で女の子は同じ質問をしました。
牧師さんはとてもいい笑顔で答えてくれました。
「愛とは神様が与えてくれた最高の産物のことですよ」
「神様がくれるの?」
「ええ。神様がくれるのはそれだけではありません。愛、そして平和です」
へいわ。この間テレビでやっていたので知っています。しかしその時テレビの人はこうも言っていました。
「でもでも、せんそうがなくならなきゃへいわはこないんだよ? ねぇ、どうしてせんそうはなくならないの?」
牧師さんは笑顔を崩す事無く言いました。
「それは、神様がたくさんいるからだよ」
別の疑問が増えてしまい、女の子は更に分からなくなってしまいました。ここでも答えは得られません。
最後に会ったのは若い恋人同士でした。二人はどうやらケンカをしていたようで、何だか空気がピリピリしています。
それでも女の子は勇気をだして声をかけました。お兄さんの方が難しそうに顔を歪めながら答えてくれました。
「そうだね……相手を思いやる心のことかな」
「思いやる心があると何が起こるの?」
「その人と仲良くなれるんだ」
女の子は不思議そうにお兄さんとお姉さんの顔を見て訊きました。
「じゃあどうして二人はケンカしているの?」
お兄さんが言葉に詰まっていると、お姉さんが彼を見ながら言いました。
「それはね心がとても不確かで曖昧なものだからよ」
大人はたまに難しい言葉を使います。やはり答えは得られません。
女の子は答えが分からないまま家に戻ってきました。分からない事を分からないままにしておくのはすごくモヤモヤするので嫌いです。
するとお母さんがやってきました。女の子は今日の事をお母さんに話しました。お母さんは優しく微笑んで言いました。
「そうね、そのどれもが正解でどれもが不正解だと思うわ」
お母さんまで難しい事を言います。女の子はもう考えるのを止めようかと思いました。
「そうね…愛に答えはないの。答えがない、それが答えよ」
決まりです。考えるのを止めにします。しかし一日聞いて回ったのに分からないままなのはとても残念でした。
がっかりして俯いているとお母さんが抱きしめてくれました。
「ふふ。ちょっと難しかったわね。分かりやすく言うとね? お母さんは、あなたを『愛している』わ。それもすっごく『愛してる』」
女の子は少し苦しいお母さんの胸の中で、モヤモヤがちょっぴり晴れたように感じました。
終わり