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ぷぴ10 精霊の長へひとつ

『もし、【精霊の長】様。シルヴィー・アモンと申ちまちゅ。はじめまちて!』


 はじめまちて!

 はじめまちて!

 はじめまちて!


 はじめまちてが木霊している。エフルではなく人の言葉だが、通じないのだろうか。方言にしてみよう。それにしても響がうるさい。


『これは木霊でちゅね。【木霊の精霊】よ、やめるでちゅよ』

≪あの……。申し上げにくいのですが、【木霊の精霊】は先程叱られ、反省して消えていきました≫


 誰の仕業だろうか。とにかく取次をお願いしたい。沖縄のお国言葉をお借りする。


『やーたい』


 やーたい。

 やーたい。

 やーたい。


 沖縄のお国言葉でもない。はじめしての意なんだけど。第一、異世界で都道府県もあったものかとも思った。ロゼ島とその海の向こうでは違うと思われるが。海外と仮定して、もう一つ試してみる。


アンシャンテ(はじめまして)でち!』


 アンシャンテでち!

 アンシャンテでち!

 アンシャンテでち!


 フランス語だけど、どうなんだろう。国境なきエルフはどの言葉でも、いや、胸の内で話したことでも通じるのだろう。


『覚えておいでなちゃい。おいたをした【精霊】よ。閻魔帳に赤字で名前を書くだけでちゅから』


 緊張もあってか、ストレートに怒りを顔に出したのはロゼ島にきてはじめてだ。まーまとぱーぱが引きつっている。どうしたことか。ほんわかした二人が揉めるなんてあり得なかった。


『もちかちて、はじめての夫婦喧嘩でちゅか。可愛い赤ちゃんを挟んで駄目でちよ』


 後方からそろりと声が入った。


≪悪戯をしているのは、ラムル湖の下にある【精霊】の産屋(うぶや)からでございます 。赤ちゃんが目覚めて遊ぶものもない中で大きい声が真新しく思えたのでしょう。堪えてくださいませんか≫


『では、悪戯なのでちか? 【湖畔の精霊】の顔を立てまち』


 木霊で揶揄うなんて、厄介で苦界だ。おそらく誤解だろうし。うーんマンドリルってぱーぱの癖が出てしまう。


『誤解は厄介でちよ。仲直りしてほちいでち。月の綺麗な夜に仲良くねんねこちましたでちょ』


 まーまが先に噴き出した。おかしなことはないのに。


「シルヴィーちゃん、まーまもぱーぱも再会できたのだから、ここは水に流して」

『それもそうでちゅが、姿を見せない不届きものはゆるちまちぇん』

「姿ですって? 例の【精霊】かしら」


 ん、マンドリル。やはり気が付いていなかった。そもそも私が飛翔していることに疑問も生じなかったのか。


「ルイーズ、いつからシルヴィーちゃんがこうなったのやら」

「ミシェルも計量にうるさいから、そのせいかも」


 は! 本気で喧々諤々きた――。


「あああ! この間パンをまとめて作ったとき、卵の大きさがまちまちなものだから、計量して仕分けしてくれって頼んだのをこの日まで根に持っているんだね」


 あいやあ、横道を真っすぐいっているから、そろそろ湖の中央に出そうなのですが。転生後幸せに暮らしていましたとさ、チャンチャンができない。私にとっても災厄かも知れない。夫婦って不安定な関係なのかな? 赤ちゃんはまーまの子ども、ぱーぱの子ども、二人いてはじめてこの世に生まれられる存在なのに。


「カミーユもソフィアもシャルロットもいい子だわ。体の大きさも違うのだから仕方がないと思うの。シャルロットはまだ産み始めたばかりだし」


 はあ……。ぱーぱ、そんなに浮気しちゃ駄目だっ。女の敵! カミーユ、ソフィア、シャルロットはよほどの魅力があるのね。


『ぱーぱ、もう浮気はしまちぇんって謝ったらいいでちゅよ』

「はあ……」


 まーま、溜息で聞かなかったことにしよう。


「プププ……」


 笑う資格のないぱーぱの気持ちが分からないけど。


「あのさ、どうして僕達がここまできてパンに使う卵の話で揉めないとならないのかな」

「だって」


 ん、マンドリルが一つ。


「この話はもうおしまい」

「だってー」


 ん、マンドリルが二つ。


「おしまい。カーテン引いた」


 まーまのむくれっ面ははじめてか。右耳がくすぐったい。【精霊】からヒソヒソと話しかけられた。


『まーま、【湖畔の精霊】が挨拶するそうでちゅ』

≪ここまでお越しくださって、【精霊】の代表でもありませんが、心より感謝申し上げます≫


 思ったよりも二人は顔に出るタイプだった。


「帰っちゃうの?」

「僕も【精霊の長】様との橋渡しを期待していたのですが」

『聞いてはならないことってあるでちゅよ。【精霊の長】様も聞かれたくないことがあるようでちゅから』


 大人ぶってとジト目がきたけど、中身は赤ちゃんでないもん。


「仕方がないね」

≪ごめんなさい、勝手を申しまして≫

『帰りに会えること、祈ってまちゅ』


 すうーっと付き添ってくれていた【精霊】の気配が消えていった。


「見えていたのはアモンの一家三人だけだったけど、いざ残されてみると寂しいものだな」

『一番鈍感なぱーぱの口からそのお言葉が出るでちか』


 進行方向へ向き直したところだ。大きな壁を感じる。


「どうした? シルヴィーちゃん?」

「道はここまでなの?」


 唾をごくんと飲み込む。緊張してきて浮遊する力が落ちてくるけど、心配させてはいけない。

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