ゾンビとウェアウルフと吸血鬼
ゾンビとウェアウルフと吸血鬼が教会に集まりました。今晩、誰が人間たちを支配するか決めることにしたのです。各種族の隊長たちは檀上に出ました。睨み合っていた部下たちはお互い唸るのを止めて集中しました。
吸血鬼の隊長は言いました。
『我々は一番イケメンの種族だから人間を支配する権利がある。』
ウェアウルフが言い返しました。
『優男めが偉そうに。強い種族こそ人間を支配する資格がある。』
吸血鬼は皮肉に笑いながら言いました。
『貴様らは力だけ強く、知能が低いからダメだ。我々みたいに賢くなければ。』
ウェアウルフも負けませんでした。
『吸血鬼が賢いと?自分勝手なやつらがよ。俺たちみたいに義理がなきゃ世界はめちゃくちゃになる。』
『ヴオオオ……』
ゾンビが割って入りましたが、誰も相手してくれませんでした。
『犬のくせに。』
『ゾンビのような死体め。』
『我々吸血鬼をゾンビなんかと比べるのか?あんなに醜い存在と?』
『文句でもあんのか?お前らはゾンビたちと一緒に棺の中で眠ってろ。』
『ヴアアアー!』
イラっとしたゾンビがウェアウルフの腕を噛んでしまいました。
『畜生!』
ウェアウルフはゾンビと吸血鬼両方ともかじりました。
『我を巻き込むな!バカども!』
吸血鬼も負けず、ウェアウルフを噛もうとしましたが、ゾンビがいきなり前に飛び出したせいでゾンビを噛んでしまいました。
自分の隊長たちが戦い出すと、会議場についてきた各種族の部下たちも互いを噛み始めました。すると、変なことが起こりました。ゾンビの隊長は吸血鬼になり、ウェアウルフの隊長はゾンビになり、吸血鬼の隊長はウェアウルフになってしまいました。
だが、化け物たちは喧嘩を止めませんでした。種族の入れ替わりが何回も繰り返されました。
戦いの果ては見えませんでした。ある種族が他の種族を全部噛んで同族にしないと終わらなさそうでした。しかし、共食いのような状態だったので各種族の数に変わりはありませんでした。
彼らは朝も夜も構わず三日も戦い続けました。みんな汗と血にまみれになりました。ところが、いつしか種族に関わらず一匹ずつ消え始めました。死んだわけではありません。逃げたわけでもありません。文字通り消えたのです。
喧嘩に夢中だった隊長たちは部下たちが全部消えたことに気づいて戦いを止めました。
『みんなどこへ行っちゃったんだろう。』
その時にはもう誰も誰がゾンビだったのか、ウェアウルフだったのか、吸血鬼だったのか覚えていませんでした。彼らはただ互いの顔をぼんやりと見ているだけでした。
耳元にプーンという音がしました。みんないきなり体が痒くなって掻きむしりました。そして隊長たちも消えてしまいました。実は本当に消えたのではありません。空中をよく見れば、蚊たちが飛んでいるのが見えました。
そうなのです!化け物たちはみんな蚊になってしまったのです。勿論、蚊に刺されたから。ゾンビの牙に刺されるとゾンビになり、ウェアウルフの牙に刺されるとウェアウルフになり、吸血鬼の牙に刺されると吸血鬼になるように蚊に刺されると蚊になるのです。
でも心配は要りません。蚊に刺されたとしても掻かないと蚊になりませんから。
私も一発刺されました。すこし痒いです。薬を塗らなきゃですね。さて、少しだけ掻くくらいなら大丈……
プーン。




