第二十話 悲しみの底の真実
コリーンはナターリアが恋していた人物を探し出そうと思った。
探し出してからは,その人物をどうするかは考えていなかった。ただ,どうしようもない憎しみがこみ上げてくるのだ。落ち着かない足取りで,部屋中を歩き回っていると,静かに扉が開いた。
そこには,うつむくカタリーナが立っていた。
*
カタリーナは静かに語った。
「ナターリアに好きな人がいることは誰でも知っていました……。
他国へ嫁ぐ前に恋などご法度だということも,本人は知っています。周りはそんな彼女を苛めていたんです。「汚い」って……。けれど,私には手を出すことができなかったんです…。
彼らの多くは公爵の子女だったり,伯爵の子女でしたから……。あまりにも高位だったんです。
ナターリアは苦しんでいました。日に日に痩せていくのも,心なしか感じていました」
………。
コリーンはナターリアが笑顔を見せないのを,実は感じていた。
カタリーナは続けた。
「彼女はある日,私に打ち明けました。その好きな人は,もうすでにこの宮殿にいないそうなんです。
名前は……確かレックスという方でした。もちろん私はそのような方は知りませんでしたが……」
まさか……!!コリーンは耳を疑った。
まさか彼……レクシアスだったなんて!!ナターリア,あなたは!!
「レックスと言ったのね?確かなのね?」
コリーンは繰り返した。カタリーナはうなずいた「確かです」
*
それからしばらくして,カタリーナは部屋を出て行った。
コリーンはまだ信じられずにいた。ナターリアは血のつながった兄に恋をしていたのだ。
叶うはずのない恋を……!
コリーンは複雑な気持ちで,座り込んだ。