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第十八話 戴冠

コリーンは名をコリーン・アリステッド・クァールス・ル・ナルセーシュタノリアと改め,かつて母のものだったドレス,宝石,権力,威厳をもって堂々と戴冠した。


イギリス,アメリカなどの人々は彼女を「メシア・クァールス(救世主たる女帝)」と呼んだ。その美しい容姿からもフランスなどのヨーロッパで「マドンナ・デュース(美しき女神)」と呼んだ。女帝は教養があり,威厳がありそして冷静だった。


女帝の夫ペスタリカ国王アンドレイ・コルヤーヌ・フォン・ハトルスワフは(彼は三週間前に戴冠した)彼女の神々しい姿にまたもや飛びついてきた。

アンドレイはコリーンが監禁されていたとき,抗議しなかったことを詫びた。

コリーンはそれを無視したが,アンドレイはしつこかった。


「すまなかったよ。その時アルセリーナ陛下がすごい剣幕でね。僕は手も足もふさがってたんだ」


幼いエレーナは1人でも私を助けようとしたわ―コリーンは叫ぼうと思ったが,すぐにやめた。

言い争うほどこのクリスタリア女帝に同等の資格をもく者ではないと考えたからだ。


アンドレイはコリーンの気持ちが分かったのか,


「悪かったって……。それは分かってくれよ。僕は今でも君を愛しているのだから」


ふざけないで。この男が見せる,女なら僕を許してくれるという愚かな考えがコリーンを苛立たせていた。愛しているといえば,女は許すとでも思っているのだろうか?私は娼婦でもないし,そんなに軽い女ではないわ。


コリーンは重たい声で呟いた。


「そこをおどきなさい。私はまだ仕事があるの。

 言い訳は無用です」


アンドレイは怪訝そうな顔つきをすると,サッと身をひいた。

いくら強大国ペスタリカ王でも,このクリスタリアの高貴なる女帝の頭上に立つことはできなかった。

コリーンは目をつりあげながら彼の前を通り過ぎた。コリーンの夫に対するこの態度にアンドレイ崇拝者たちは喜んだが,宮廷の大臣や重臣達はしびれを切らした。


レンペロー伯爵は何度も女帝を叱責したが(レンペロー伯爵はかつて皇女コリーンの家庭教師だった)コリーンはそれを適当にあしらっていた。







だが,宮廷人のみならず実は女帝も悩み始めていた。

アンドレイへの態度はどうでもいいとしても,子供がいないのだ。

コリーンはアンドレイへの強固な拒絶を断念して,できるだけおだやかに接するようにした。


後継者問題はいつでも女帝の一番の問題として掲げられた。

民衆はこれに満足はしなかった。聡明な女帝は嬉しいが,後継者のいない不安定な女帝は喜びがたいと。


そんな時,はるか遠くの国スペインからレクシアスの手紙が届いた。

コリーンはそのときだけは皇女のようになって,彼とあたたかい手紙を交わした。


「親愛なるコリーン・クァールスへ。


 僕が祖国を離れて1年が立ちます。この一年の間に,あなたはとても変わられたようです。

 女帝のあなたは,元皇太子である僕には手も及ばない存在となってしまいました。

 どうか,私達の母が成し遂げられなかったことを,民衆が望んでいることを,あなたは叶えてやってください。返事をまっています。


 あなたを誰よりも愛するレクシアスより       」


コリーンはすぐにレクシアスに国に戻るよう言ったが,レクシアスはそれを拒んでいた。

彼はもう,コリーンに逢ってはならないと感じていたのだ。

愛を別の愛に変えてはならないことを,彼はすでに痛感していたから。




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