第6話前編「盆踊り 暴動、暴動、大暴動!」
お盆帰省ラッシュを何とか乗り切り、
「やっと平穏な日常が…」と思った林 。
しかし霊界という場所は――休ませてくれない。
魂が抜けそうなほど疲れた体をデスクに沈めたその日、
課長は笑顔でこう言った。
「今日から部下が増えるわよー!」
その新人は里芋をのどに詰まらせ命を落とし、天然オーラを全身から放つ小野沢さん。
平穏な日々の幕開け…かと思いきや、訪問先は
「平均キャラ濃度、人間界の5倍」を誇る行政官庁区。
さらに千層院のド真ん中で、濃すぎる幹部たちと挨拶三昧。
そして帰庁早々、現世から飛び込む“嫌な予感しかしない”アラート。
『盆踊り会場にて霊魂間の大規模喧嘩が発生』
そう、これはもう平穏でも中休みでもない。
むしろ、エクストララウンドのゴングが鳴った瞬間だった――。
お盆帰省ラッシュをなんとか乗り切った林は、魂が抜けそうなほど疲れた体でデスクに突っ伏していた。
そこへ課長の小島が、いつものハツラツ声でやってくる。
「はやし君、お疲れさまー! 今日からあなたの部下になる新人ちゃんを紹介するわね。入ってきてー!」
現れたのは、小柄でぱっと見は中学生のような女性。
「はじめまして、小野沢です。配車係に配属になりました。よろしくお願いいたします!」
──おお、ついに部下が…!あの地獄のブラック業務から少しは解放されるか!?
林「…ん? でもこの子、当然だけど死んでるんだよな?」
「えーと、大変な時期になぜこちらへ?」
小野沢「あ、死因ですか? 里芋を喉に詰まらせて!」
林「違う違う! 死因じゃなくて、なんでこの部署に来たか?って話!」
小野沢「え? あ、希望じゃないです。小島さんが『ようこそー』って言って…」
フンスと胸を張る。天然か、この子。
小島「今日は落ち着いてるから、小野沢さんを連れて各部署に挨拶してきてね。まかせたわよー」
行政官庁区の濃すぎる面々
中枢区を囲む【第一区:行政官庁区】は、霊界の官僚たちの巣窟だ。
まずは林の勤務先でもある精霊配送管理センター、続いてRide Pet統制局(あのコンタの職場)、霊界税務署(徳ポイント課税)やクレジット徳審査局、不徳再教育センターを回る。
どこへ行っても濃いキャラの職員たちがずらり。
小野沢「…なんか、キャラクター濃い方が多いですね」
林「ここ、平均濃度が人間界の5倍だから」
【第二区:産業支援・供養情報区】では、供養物の仕分けや現世から届くお菓子・花を選別する物流ターミナルを見学。霊界技術局で黒戸と村吉に挨拶すると、黒戸がげっそりした顔で「そんなの無理だよ…」と言いながらも書類にサインしてくれた。村吉はいつものように振り回されてお疲れモード。
千層院の大物たち
最後は【中枢核区:千層院】。高さ1000メートルの千層塔がそびえ、RENと呼ばれる霊界システム本体が中枢に鎮座している。
ここでは、配送部の藤村部長、管理部の南田部長、通訳の遠藤に挨拶。
藤村はニコニコ「よろしくね!」を繰り返し、南田は横文字混じりの自己紹介を延々と語ってきた。
相変わらず遠藤は何を言っているかわからなかった・・・
小島課長のもとに戻ると、
「お帰りー、楽しかった?」
小野沢「キャラクター濃すぎてびっくりしました」
林はふと疑問を口にする。
「課長、現世に帰った霊って今何してるんですか?」
「ほとんどは家にいるか、慰霊碑でワイワイしてるわね。あとは…盆踊り」
──盆踊り、か…なんか嫌な予感がする。
予感は的中。霊界全域にアラートが鳴り響いた。
『盆踊り会場にて霊魂間の大規模喧嘩が発生。至急鎮圧せよ!』
林「やばくないですかこれ!?」
小島「そうだ、小野沢さんと一緒に、地獄の吉原さんに行って事情説明してきて」
地獄、そして改造ナス馬...嫌な思い出がよみがえる...
地獄行き専用エレベーターで降りると、例の豪快な声。
「おお、林じゃねえかタコ!…そっちのちっこいのは新人か?」
小野沢「初めまして、小野沢です!」
「おぉ!よろしく頼むな!…で、何しに来た?」
事情を話すと、吉原は面倒くさそうに目じりをひっかき、
「毎年恒例だな…ちょっと待ってろ」
やがて、爆音とともに現れたのは、ナスやキュウリを無理やりエンジン搭載した暴走精霊馬の一団。背中には「曼荼羅」の刺繍。先頭は金髪の男。
「オー待たせたな!こいつらが一発で片付ける。リーダーの尾川だ!」
「林さんっすね?尾川っす!任してください!」
林と小野沢は改造ナス馬に乗せられる。
「なんか低くないですか?」
「バネ切ってるんで!あっもちろん直管っすよ!」
尾川を先頭に、地獄発・現世行き暴走精霊馬隊が爆音とともに疾走する。