49- 短針を追う長針
もうすぐで夕刻。空島にある家から治安維持団に連行され、数時間にわたる取調べを受けたイノヴァ。誘拐犯と繋がっているという直接的な証拠はなかったとはいえ、観念したらしい彼は取り調べで色々情報を吐いたようだ。
結果から言えば、イノヴァはやはり誘拐犯と繋がっていた旨を明かした。誘拐事件の起こった家を、立場を利用し、捜査という名目で証拠になるものを隠蔽していたという。それは、ある男からの脅迫によるものであるということも明かしてくれた。
彼は、種族は分からなかったが、身体的特徴や服装、印象をいくつも挙げた。長身、細身の男性。黒いマントや目元が見えないほどの帽子。そして、圧倒的な威圧感。従わなければ殺される、と思わせるような恐怖の象徴ともイノヴァが言っていた。彼から聞き出せたのはそれほど。
取調べの終わり。すぐ隣の部屋の三人、第一隊長のアデランドと女性影族の上級隊員、そして隊員に扮した団長がいた。
アデランドは彼女に質問する。
「取調べ中、あなたから見たイノヴァは、どういった印象でしたか?」
影族である彼女は、相手の今の感情をオーラとして可視化するという特質を持つ。取り調べを行っている最中に、ずっと混じっていた感情を話す。
「怯えや恐怖を感じる時に見える紫のオーラが常にありました。イノヴァ隊員が怒った時も、涙目で弁明していた時も、常に変わらず存在し続けていましたね」
「終始落ち着きがない様子でしたが、やはりそれが原因だったのですね。……わかりました。今後の参考にしましょう。書類を纏めておいてください。終わり次第私に報告するように」
「了解です」
返事し、何枚かの紙を手に持って彼女は席を立った。アデランドは、その場に残った団長に、今回の取り調べについて語る。
「レイト隊員が、イノヴァ隊員の家の侵入を強行したことによって得られた新たな情報がありました。イノヴァ隊員の語った、ある男について。彼が、この誘拐事件の首謀者であると考えますか?」
『そう考えていいでしょう。誘拐事件の解決は、その男を捕らえることによって収束する。……彼の特徴をもとに、最大限の演算を駆使して映像の分析に移ります。それでは』
今後の調査が明確な団長。言い終えた後、彼のハッキングしていた機械族の隊員が元の状態に戻った。アデランドが出ていくよう命じ、一人になった静かな部屋で考える。
(細身で種族のわからない男。名前も知らない彼が、いかにしてイノヴァを闇へと引き入れたのでしょう……誘拐事件の首謀者であるなら、第一隊長として、為すべきことを為すまで……)
*
場所は休憩室。リーロとレイトが、イノヴァの聴取が終わるのを待っていた。厳かに背筋を伸ばしてやってきてアデランドが、二人に情報を共有する。
「新しい情報は得られなかったそうです。特に重要だと思われる、誘拐犯の名前、居所、種族以外での特徴的な詳しい姿や経歴、その他謎の男との接触などを追及しましたが、どれも分からないとの一点張りでした。ただ──」
「開かなかった机の引き出しに何があったんですか?見たんすよね?」
ここで待っている間、そのことが頭から離れないでいたレイト。続く言葉を遮ってまですぐに聞いたが、アデランドは首を横に振る。
「マナの気配が残っていました。ただいま、分析をマナ専門技師に任せています。迅速に分析しているとのことですので、明日にはある程度判明するかもしれません。手がかりとしては、今はこれだけが頼りですね」
「…………」
脚を組むリーロ。何かを考えるように天を仰ぐ。レイトは、現状を把握して苦しい顔を浮かべた。
「……そのマナが誘拐事件に関わりのあるヤツじゃないと、振り出しに戻っちゃうな。あいつから色々聞き出せればよかったけど、思った以上に何も知らなかったなんてな……それで、アデランドさん。俺が不法侵入したことについての処遇って……」
「団長は厳重注意で済ませておくとのことです。治安維持団の持つべき三つの信条のもとに起こした行動であり、イノヴァも罪を犯した隊員でしたから、あまりお気になさらず。ただ、殴ったのはいただけませんがね」
申し訳なさそうに頷きながら、細い尻尾を垂れて反省するレイト。
「すいませんっす……」
「そしてリーロさんもです。いくら情報を聞き出すとはいえ、拘束した上に脅迫は、あまり褒められた行為ではありませんね」
「……ああ。そうだな」
対照的に、冷めた返事をするリーロ。ただ、いつものニヤケ面ではないことから、上辺だけでもある程度の反省の色はあるようだ。二人を窘めたアデランド。今後の行動について話し合おうと、二人と向き合う形で椅子に座った。
「今後の誘拐事件について、少し明確にしておきましょう。担当のイノヴァがいなくなってしまった代わりに、私に担当させて貰うよう団長に進言してきました」
「そうなんですか……!隊長直々に捜査してくれるのはありがたいっすけど、忙しい身で大丈夫です?」
隊長からの、決意を滲ませた声。機械族とはいえ、立場が上である機械族の団長より人間らしさが垣間見えるアデランド。
「多忙を盾にして凶悪事件を放置するわけにはいきません。これ以上の被害者は出したくありませんので。それに……誘拐事件の担当になりたいと提案したイノヴァを、その役割に宛がったのが私です。ゆえに、私にはこの事件を解決し、誘拐された被害者を救い出す義務と責任があります」
「……」
レイトは嫌な記憶を思い出して、一瞬だけ口を噤んだ。次には、その決意を礼賛する。
「ありがたいっす、本当に……!一緒に頑張りましょ!!」
「誘拐犯、そしてその裏に潜む首謀者も捕まえてみせましょう」
「隊長さんよォ」
隣で決意を見届けていたリーロは、腕を組みながら彼に向けてニヤケ面を向ける。
「誘拐事件の捜査資料とか報告書とかを見てた時に、別の事件についても暇つぶしに見てたことがあってな。そん中でお前さんの話もあったぜ。一年以上前だっけか?マナの魔法でハイになって暴れまわった連中、五十人くらいを一人で一気に制圧したんだってなァ?そん時のこと聞かせてくれよ」
あまり気乗りしない、戒めるような低い声。
「人に聞かせるようなものではありませんよ。報告書を見たのであれば、あれがどんなに凄惨だったかを知っているはずです。……私から言うことは何もありません」
「……そうかい。ま、いいぜ」
あっさりと諦めてくれたリーロ。微妙な空気になってしまったところで、レイトはアデランドに一つ質問を投げかける。それは、他の隊長のこと。
「そういえば、アデランドさん以外の隊長もいるんすよね?その人たちも、手伝ってくれたりとかは……?してくれそうなんすか?」
「ふむ……」
第一隊長は、それぞれの隊長を思い浮かべながら協力してくれるだろう人を絞る。
「基本的に、全員協力してくれると思いますよ。まず第二隊長であるレイノルズは、管轄であるリバング街が既に誘拐事件の発生が多いですからね。彼はすぐ手を貸してくれるでしょう。第四隊長のヒセノイッチも、協力してくれる姿勢を見せてくれています。
第三隊長と第五隊長も多忙でなければおそらく。ただ、あまりむやみやたらに手を貸してしまっても仕方ありません。事件の規模が大きくなって、私たちだけでは手に負えそうにないと判断した場合に限り、この二人には協力を仰ぐことにしましょう」
「そっか、そういう感じっすか……」
出来れば総出で協力が欲しかったレイト。相手は強大で、一筋縄ではいかないことを知っているからだ。レイトはリーロに目配せすると、耳元まで顔を近づけて囁く。
「あの男のこと、言ってもいいか?」
リーロはニヤニヤした顔つきで、アデランドを顎で指す。何だ、と見たと同時に、彼はわざとらしくテレビ頭から咳払いの音を出す。
「知っていることがあれば、隠さずに共有してください。レイトさん」
「あっ……はい」
もとより話す気でいたがために、こそこそと話そうとしてバレてしまった緊張感より、やっと話せるという安心感を覚えていた。
「俺は……あの男のことを知ってます。イノヴァが言ってた、細身で、帽子を被ってる男の人……」
「詳しく」
重々しい空気が漂い始める。一息吐いて落ち着くも、獅子の三角の耳は怒りを抑えられずに後ろに反り返る。
「あの男の名前は草上城虚って言います。俺がいた村の警察──……村を守る人だったんですけど、ある時なぜか狂っちゃって……クサカミさんが、この誘拐事件の黒幕で間違いないと思います」
声を出さず、アデランドは驚く。事件の首謀者に関わる人が、ここにいた事実。ましてや、治安維持団の隊員に。色々聞きたいことがあるが、まずは丁寧に聞いていく。
「面識があったのですか……。彼の種族は?」
「え、えっと……」
言葉に詰まるレイト。彼はクサカミの種族を知っている。しかし、どう表現すればいいのか。ここで隠しても、アデランドにはわかるだろう。素直に言った方がいいと判断し、重い口を開く。
「に、人間っていう種族っす……し、知ってます?」
困惑したアデランド。何もわからなかったからだ。
「……いえ、私のデータベースには何も。すべての種族をデータにして保存してありますが、ニンゲン、という種族は全く記録にありません。他国にいるのでしょうか。どういった姿なのですか?」
「なんつうか、俺らとおんなじだけど、髪っていうか、毛が頭にしかなくって、マナを扱えない人が多い種族……って思ってくれていいっす……それで、そいつについてなんですけど……」
彼は、いかに狡猾で、容赦のない悪逆非道であることを伝える。
「今の俺たちじゃ、あいつに会っても太刀打ちできないと思うんですよ。その気になれば、殺すことも躊躇しない人……。ですからもし、誘拐犯の居所が分かって、あのクサカミと戦うっていうことになった時に……治安維持団総出で……は無理かもしれないっすけど、少なくとも絶対に隊長全員の協力は欲しいんです。……ダメですかね?」
「総出とは大きく出ましたね。その男に、一体どんな力が秘められているのですか?」
「それは……」
とある光景が蘇った。かつて彼の研究所に【透明】で潜った時のこと。思い出して、言葉が詰まる。
「その……クソっ……すいません……」
「俺が説明する」
涙目になって向こうに顔を向けたレイトに、助け舟を出したリーロ。
「誘拐事件の被害者に選ばれてるやつらは、マナをかなり保有できる種族に限られてるだろ?クサカミの野郎がやってんのはな、そいつらから大量のマナを吸い上げて、自分自身に保有してんだ。
んで、時間が経って被害者の体にマナが補充されっと、また吸い上げる。それを繰り返して、今やアイツのマナの保有量は無尽蔵みてえでな。個人差はあれど、どの種族も必ず保有量が決まってるはずだ。なぜクサカミにはそれが無いのか。その理由はさっぱりだが……俺らだけじゃ打倒出来ないってのも分かるよな?」
「…………」
話を聞いたアデランド。沸き上がったのは困惑。受け入れられないその言葉たちをなんとか受け入れて理解すると、次に湧いたのは激しい怒り。機械族らしからぬその感情に満ちた声が低く響く。
「被害者の……マナを吸い取る……?」
「ああ。すっからかんになるまでな。勿論、マナが無けりゃ抵抗するための魔法も使えない。
マナが無くなる分にはそれくらいの弊害しかないが……問題なのは、被害者はよくわかんねえ機械に取り付けられて、拘束されて、逃げ出せない。マナが無いために抵抗もできない……ま、端的に言やあ監禁ってやつだよ。そこでずっと、クサカミのマナの養分となり続ける……そうだったよな?レイト」
「……そう」
精一杯頷いた。レイトはあの光景を、間近で見た。【透明】になるしか能がない彼は、救い出すことすら出来ずに、あの時はただ歩みを進めるだけしかできなかった。
悲しみと怒りに溢れるレイト。一方でアデランドは、誘拐された被害者の辿った末路が信じられず、怒りと困惑で押しつぶされそうになる。
「レイトさんの反応を見る限り、嘘ではないことはわかります。ですが……そんな惨いことを、クサカミという男は……」
アデランドの、握り締める拳が強くなっていく。感情の波が押し寄せて、一旦心の中で落ち着くと、戻っていく。
「……よくわかりました。ですが二つ、聞きたいことがあります。一つは、レイトさんはなぜそのようなことをご存知だったのですか?」
「その……どう言ったらいいか……」
この情報は、もはや誘拐事件どころではないからだ。だが、彼相手に嘘を吐いても見破ってくるだろう。助けを求めるようにリーロに目を向けても、肩をすくめてレイトにゆだねる。
言うしかないようだ。信じられなくてもしょうがない。手の内を明かすようで心が落ち着かないが、今後の計画のためと割り切り、一つ一つ話し出す。
「俺たち……別の……世界から来たんすよ……。それで……」
言葉を区切ってアデランドからの反応を窺うが、止める様子はない。このまま言葉を紡いでいくレイト。
「クサカミがいる研究所、俺はそこに潜入したことがあるんです。そこに誘拐された被害者たちがいて……でも密室で助けられなくて……途中で、この世界から人を調達する、みたいな紙を見つけて……そこから色々あって、この世界にやってきました。この世界の、誘拐犯の居所は知らないけど、内情を知っていたのはそのため……です」
色々と端折った情報がいくつかあるが、変に混乱させないためにも簡潔にして伝えた。目の前の隊長は考え込む様子で黙っているが、なるほど、と理解したように呟く。
「……レイトさん。リーロさん。あなた方は、この世界から誘拐され、別の世界で監禁されているその人たちを助けるために、この世界へやってきた。……ということですね」
意外にも、話をすんなり受け入れてくれた。驚いて、俯いていた顔を上げたレイト。それを察したように、話を続ける。
「あなたがたについて、不明な点が多いでしょう。ですから、正直なところ、何かしらの秘密を抱えているとは思っていました。団長もそう仰っていましたよ。……これで、ようやく判明しました」
アデランドの、頭部のテレビ頭に映された、閉じた目が順番に注がれる。レイト、そしてリーロへと。
「あなた方は正義の味方です。団長の目に狂いはなかった」
「お……俺が嘘を言ってる、とか思わない、ですか?」
逆に、彼の言葉を信じ切れていないレイト。驚愕の顔のまま聞いた。芯の通った声のアデランドが、返す。
「別世界がどうのこうのなど、普段であれば嘘と言って取り合わなかったでしょう。それこそ、入隊した直後であれば。しかし、私は隊員全員の働きを漏れなく見ています。そしてあなた方も。やりすぎな程、献身的に誘拐事件を解決しようとする二人が、嘘をつくことはないと思いましたから」
話がここまでうまく進むとは思わなかったレイト。それはリーロも同じだったようで、悠々としてアデランドに、聞き出していく。
「へえ。嘘をつくことは無いから本当かァ。別世界の存在について疑いはしねえのかよ」
「確かに、現実味はありません。ニッチな研究分野として確立されてはいるものの、物語の中にしかないような突拍子の無い話。しかしながらそれについては、被害者たちを助けに行く過程で、そのクサカミの研究所という場所に向かうでしょう?
それが別の世界にあるというのですから、それが嘘か真か、事件を追う道中で後々判明することになります。……私たち治安維持団、事件科の目的は一つ。事件を解決し、レッケイドの平和を維持すること。別世界の有無など、私たちにとっては些細な事柄です」
驚きっぱなしのレイト。開いた口も塞がらないほど。やっとことで口元を押さえ、安堵のため息を一つ。直後、頭を下げる。
「その……マジで、ありがとうございますっ!!俺たちと一緒に、クサカミを倒しましょう!!」
勢いに乗ってきた言葉がそのまま溢れだした。三人以外誰もいない休憩室に響き渡り、第一隊長はしっかりと頷く。
「彼が元凶というのであれば、その人を捕らえるまでレッケイドに平和は訪れません。共に前へ進み、悪を成敗しましょう。私たちならできます。……話してくださってありがとうございました」
頭ごなしに否定せず、客観的に物事を判断してくれる第一隊長、アデランド。彼に打ち明けて良かったと、レイトは心の中の靄が晴れた気分になった。
しかしリーロは違った。俯瞰して考えていたことがあった。信じてくれている一方で、それはあくまで治安維持団としての立場。事件を解決するためという名目があるとはいえ、相手は人の命を軽んじ非道な行いをしている奴らを相手にするのである。その気になれば殺しも厭わない。
命を賭して戦う程の覚悟が、個人として存在しているのだろうかとリーロは考えていた。途中で裏切らないだろうかという猜疑心が働いて、素直に喜べなかった。心触りの良い言葉を吐いて懐柔し、相手の座についてこちらの寝首を掻こうとしているのではないかと。
いつものニヤケ顔でその気持ちを覆い隠し、表には出さなかったが、簡単にこちらの言葉を信じた彼を見て、本当に、どうしても、信じ切れないでいた。
リーロが信じ切れない相手、アデランド。彼は一息ついて、二つ目の質問を投げかける。
「もう一つ、質問がありましたね。彼……クサカミという男は無尽蔵にマナがあるということ。その余りあるマナを利用して、彼は一体何をするつもりなんですか?」
変わらないニヤケ面のままの影。肩をすくめながら、思うことを言う。
「…………それに至っては、残念ながら分からねえな。ま、良くない事ではあるだろうよ。クソ外道が考えることなんて、常人には一生かけても分かんねえよ。分かりたくもねえ」
「……レイトさんはわかりませんか?彼の目的を」
急に話のバトンを渡され、強制的に会話に引っ張られた。先ほどの嬉しい気持ちが残ったままだが、背筋を正して話に加わる。
「ええと……わかんないっす……。さっき警察って言ったじゃないですか。それで、狂う前は確かに優しかったんですよ。こんな馬鹿な事する奴じゃないって思うくらいには……。だから、どんなに考えても、クサカミさんのやりたいことってのがずっとわからないんです……」
「なるほど。……他に彼に関する情報はありますか?あれば共有いただけると、今後の対策になりますので」
深堀りして聞き出そうとする彼に、レイトは腕を組んだ。自身の知るクサカミについて語る。
「あの人は、警官なんですよ。んで、俺の住んでた村に来た経緯は、不祥事で左遷?異動?させられてきて、でも、そんな不祥事をする人には全く見えなかったんですよ。法と、規則を第一に考えて、暴力から守ってくれる優しい人で……実際、俺もあの人に救われたとこもあったんすけどね……。分かってるのはこれくらいっすかね。生い立ちとか、そういう細かいところまでは分からないです」
「十分です。法と規則と重んじ、暴力から庇護してくる人物であったと。それが今や、誘拐事件の首謀者に。彼に、自身の信念が曲げられてしまう程の大層な出来事が起きてしまったのでしょう」
狂った彼とかつての優しい彼を見ていたがために、レイトは再び悲しみに暮れる。あの優しさは、すべて嘘だったのかと。しかし涙は堪え、一息。落ち着いて、現状を改めてアデランドに伝える。
「なので……もし彼と戦うなんてことになったとき、治安維持団、総出であの人を捕らえて、説得したいです。なぜ、あんなことをしたのか……」
「事情はよく分かりました。……時間はまだあります。団長に掛け合ってみましょう。了承を得られ、彼と相対するまで、良い説得の言葉を考えておいてください。かつての優しい心が再び蘇るというのなら、それを成し遂げられるのはレイトさんしかいません」
レイトの落ちていた視線がリーロに向く。まるで、リーロの先にいる誰かを見ているかのように。レイトは思わず笑みがこぼれると、アデランドに向き直って一言。
「そっすね……頑張ってみます」
こうして、休憩室での今後の作戦会議は終了した。これからは第一隊長であるアデランドが、発生直後の誘拐事件の調査を共にしてくれる。治安維持団に五人しかいないうちの一人が調査に加わることに、レイトはただただ安堵した。
目下の目的は、誘拐犯の根城を特定して事件を終わらせること。そうすれば、例の男、首謀者であるクサカミに近づける。もしかすれば、思ったより早く相対することになるかもしれない。彼は一体何をするのだろう。あの無尽蔵にあるマナで、一体。




