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特異点から告ぐ  作者: 宵山
第二章 ──誘拐事件、交錯する運命──
42/49

42- 素晴らしき出会いを祝して!

 

「やはり、サヤカさんのピアノの演奏は心が打たれますね」


「えへへ、ありがと~、ツェルさん!とても嬉しい!」


 夜を迎え入れる黄昏時。カボチャ頭の三兄弟の住む演奏会の舞台、サーカステントにて。サヤカはピアノを弾いて皆に聞かせていた。同居する二人のグラスとマルキス。その友達のツェル。カボチャ三兄弟。サヤカ自身も含めて合計七人の、三兄弟主催の小規模の演奏会を終えた直後だった。


 サヤカに向けられる称賛を、彼女は素直に受け止めて心から笑う。そこに、マルキスが珍しく微笑む。


「このレベルのピアノの腕は才能だよな。こうやって聞くのは二回目だけど、すげえな。本当」


「えへへへへ~、マルキスから言われるとすっごく照れる!!!」


「んだよ」


 珍しい人からの称賛に、サヤカは薄気味悪い笑みを浮かべてしまい、マルキスから微笑みが消えた。その隣で、グラスは感銘を受けた顔でぽつりと呟く。


「音楽ができるってすごいなあ。魔法と同じセンスだよね……」


 それぞれが思い思いの感想を述べている中、三兄弟の一人であるカルダがみんなに向けて放つ。


「よし!みんな!出会いの感謝の宴だぁ!!」



 *



 三兄弟の住む、ハロウィンを彷彿とさせるデザインが基調の、居住スペースに来た一同。居間に着いて早々、マルキスが、心躍っている様子のサヤカに一言。


「一人の演奏者とその友達のためにここまですることってあるんだな」


 テーブルや椅子を用意し、快活に準備を済ませていくカルダとナインドを見る彼。せっせと動く様を見ながら、サヤカは微笑む。


「前にみんなと話した時に聞いたんだけどね、自分じゃなくてマナを使って楽器を弾く人がいたりするから、そういう人とはどうしても仲良くなれないって言ってたの。だから、そうじゃない私ともっと仲良くなりたいって言ってた。よっぽど、珍しいんだと思う。マナ無しの演奏者って」


 芸術にマナを駆使するかしないか。この手で作品を生み出すか、マナを介して想像して作品を作り上げるか。この世界においてその二つにはちょっとした隔たりがあるのだと、以前三兄弟と話していたその時にサヤカは思った。だから、マナを使わずに楽器を演奏できるサヤカを三人は放っておけないのだ。


 納得するように頷いたマルキス。彼も、音楽ではないが、別の方面での芸術家だ。自分自身の手を使って作品を生み出す苦悩を知っている。


「なるほどな。マナを扱えれば、わざわざ手で弾くことはせずに魔法で弾けるし、慣れれば同時に演奏することも出来そうだ。……絵描きと似てるね」


 一方で、トイレから帰ってきたツェル。テーブルの上を片付けてスペースを作っている犬と三兄弟の様子を一瞥し、足はサヤカとマルキスの方へ。


「パーティだと、あの方々が言ってましたね。マルキス、懐かしく思いませんか?」


「あ?ああ。……そうかも」


 マルキスとツェル。前々までは、今のように小規模ながらも、不定期に開催して盛り上がっていた時期があった。郷愁のため息を吐くマルキスに、その気持ちを知らないで興味を示すサヤカ。


「え、なになに?前にやったことあるの??」


 マルキスは、あからさまに面倒くさそうな顔を浮かべて、長い耳を伏せた。彼の代わりにツェルが答えることに。


「そうです。もうかなり前でしたが……楽しかったです。私にとっては、灰色がかった景色を色づけてくれたきかっけですので」


「そんなにすごいパーティやったの……!?もしかして、今から始まるものより??」


「それは、まだ判断しかねますね。然るべき時にお聞かせしますよ」


 直後、居住スペースと外を繋ぐ入口から鈴が鳴る。誰かが来たようだ。準備に忙しいカルダが、座ってのんびりしているアルタルスに指示をする。


「アル!出てくれ!」


「は~い。……ねえねえ、サヤカも来てよ~、浮遊魔法でもボクだけじゃ多分重くて持ちきれないかも」


 のっそのっそとしている三男。サヤカの名前を呼び、一緒に玄関へ来るよう朗らかな笑顔で促す。顔を見合わせる三人は疑問符を浮かべつつも、サヤカは彼の後ろを着いていくことにした。


 どんどんと、早歩きで辿り着いて玄関を開ける。そこには、白い羽毛を生やしたシロフクロウの鳥人族が、美味しそうな匂いを漂わせる箱を大量に浮かせて待っていた。そんなにうまく魔法を扱えない人なのだろう。深く被った帽子の奥の鋭い目は伏せられ、嘴を固く結んだ表情を浮かべている。


「ども、ハヤブサスーパーフーズっす……」


「はいは~い。大量の料理をありがとう~~」


「こ、こんなに……?」


 困惑したサヤカ。両手では到底持ちきれない量の各種料理とオードブルを、アルタルスは大半を受けとって軽々と浮かせる。それに続いてサヤカも残りを受け取って、少しばかり浮遊させる。簡単な魔法ならもう問題無いが、隣にいる彼には及ばないだろう。重そうにする様子など一切見せず、むしろ配達してくれた鳥人に改めてお礼を言えるほど。お金を渡すほどの余裕すらある。


「こ~んな重いの届けてくれてありがとうね~」


「いや、全然……。丁度っすね。ありがとうございます、じゃあ……」


 どこかぎこちない鳥。品物を渡してから礼をするまでの間、帽子の奥の目が、落ち着かない様子で二人を交互に見ていた。金額を確認して、たちまち扉を閉める。二人はその挙動不審さに首を傾げた。


 サヤカはそれを、楽観的に捉える。


「ふふ、もしかして三兄弟さんのファンなんじゃないですか?」


「かな~。言ってくれれば全然サインとか握手とかするのにな~」


 同調したアルタルス。彼女と同じ、いや、彼女より楽観的な彼は、むしろそうなのだと思い込んだ。


 数多の浮かせた料理たちを居間まで運び、スペースを用意してくれた大きなテーブルにひとつずつ丁寧に置いていく。その量に、マルキスやグラスは当然驚くが、届声(かいせい)で直々に注文したナインド、そして隣のカルダも口開けて狼狽する。


「え、あれ……こんなに注文した……??」


「……ナ、ナインド。まさかさ、適当にパッパと決めたりしたのか?」


 咎めるような目つきになるカボチャ頭の長男が次男を問い詰めた。必死の弁明をするナインド。


「いやぁ、ボクはチラシの表に書いてあるやつで足りるって思って、そこから頼んだだけだよ!そのあと、デザート頼みたいってアルが……」


「……」


 嫌な感覚がしたカルダ。テーブルに佇む料理と未だ置いていく料理を見つめ、アルタルスを訝しむ。すると、こちらの尋常じゃない様子を意に介さないカボチャの顔が、にっこりと笑う。


「大丈夫だよ~、ちゃんとみんなの分もあるし、頼んでないやつも、裏面のやつもちゃ~んと全部頼んどいたよ~」


 全部頼んだ、という言葉。パーティである以上、良かれと思っての行動だろう。だが、七人いてもこの量は食べきれない。嫌な予感が見事的中したカルダは、つい叱りつけてしまう。


「表面も裏面も全部頼んだのかよ!こんなの、全員でも食いきれるわけないじゃんか!もうちょっと、加減ってのをなぁ……!」


「明日の朝食にすればいいんだよ~。それでも余ったらボクが食べるから安心して~」


「はぁ……」


 呆れかえるカルダ。頭を抱えて、ナインドに同情と責任の眼差しを向けた。


「ナインド。アルに食べ物関係を任せるなってずっと言ってただろ」


「ご、ごめん、兄ちゃん……完全に油断してた……」


 三兄弟以外の二人、マルキスとサヤカは、その会話を聞いて状況を理解すると、同情を目をカルダ達に向ける。ただ、グラスは違った。三兄弟のファンである彼は、そんな兄弟間の会話に感動を覚えて尻尾を振る。


「なんだか……ずっと舞台の上の三兄弟しか知らなかったから、すごく新鮮だなあ!!」


 グラスの感動する様子に、苦笑いで溜息を吐くマルキス。その注文しすぎた大量のそれらと、陽気な三男を半目で見る。


「めっちゃ食うヤツがいればそれだけで食費が跳ね上がる。有名人だから金の心配は無いだろうけど……あの二人の心配事はそこじゃねえんだろうな」


 そしてツェル。彼は、この想定外な状況を楽しんでいるようで、控えめに笑いつつ彼らを羨む。


「まあ、良いのではありませんか?パーティというのはこういうものでしょう。着々と進行する中で、想定していたことが覆される瞬間。それが何度も起こり得るのが醍醐味の一つでしょう?」


「よくわかんない楽しみ方するね、ツェルは」


「そうは思わないのですか?サヤカさんは?」


 持っていた料理をアルタルスに任せて戻ってきていたサヤカ。急に話を振られて戸惑うが、あの三兄弟の様子を見て微笑む。


「まあ、確かに……??弟がいたから、予定を崩されるっていうのは慣れてる感覚はするけど……多分、そういう感覚がツェルさんは好きなんですよね?」


「その通り。要はトラブルですよ。頭の中で考え得るすべての事柄に引っ掛からない、全くの新しい事象に遭遇するのがたまらなく好きでしてね。アルタルスさんが大柄であることからある程度の予想は出来ていましたが、量が想定より、その……大量であることに、ふふふ……すみません……」


 未だ並べられていく料理に、途中で失笑してしまったツェル。シルクハットを深く被りなおす。


 そして三兄弟たち。諦めた様子の兄弟二人は料理を貰い受け、テーブルに所狭しに敷き詰めた。ようやく並べ終わり、アルタルスを皮切りに全員が席に着く。


 気を取り直したカルダが、咳払いをして進行を務める。


「さてと、サヤカさん、グラスさん、マルキスさん、そしてツェルさん!……それはもうめちゃくちゃ注文されていっぱい料理があるから、もう気にせず好きなものを食べて、楽しく過ごそう!!」


「いえーーい!」「いえ~~~い」


 次男と三男がパーティの開催に叫び、四人はそれに続くことに。合計七人の、騒々しくて楽しいパーティが始まる。



 *



 パーティの中盤ほど。


 年齢を理由にお酒が飲めないサヤカと、お酒に強いツェル、そしてそもそもお酒を飲んでないマルキス以外。つまりグラスとカボチャの三兄弟のみんなは、お酒が入ってべろべろに楽しく愉快な会話を繰り広げられている。アルタルスがカルダに投げかける。


「お兄ちゃ~んそれもう一個取って~~」


「またかよ!もうそっちに置いとけ!」


 グラスとナインドがテーブル越しに会話する。


「その後アル君がねえ~涙流して出てきたんだよ!!あの時の可愛さったらな!」


「あそこってすっごくリアルで怖いお化け屋敷だもんね!一回だけ行ったことあったけど、僕も怖かったから、アルタルスさんの気持ちよくわかるよ~!!」


 そんなうるさくも面白い会話に挟まれつつ、他の三人は三人で楽しく会話していた。


「マルキス。これ、飲みますか?」


「何回目だ。遂に酔ったか?」


「いいえ。ただまあ、酔いが回って、少しからかいたくはなってはいるかもしれないですね」


 マルキスに寄りかかるツェル。影族の、影色で冷たい手が兎の肩に掴まれた。呆れる様子の兎。


「運転は任せてとは言った。けど酔いつぶれるんならここに置いてくよ」


「節度くらい知ってます。どれくらい飲めるかと密かに挑戦していたのですよ。……アンディーほどの酒豪はもはや才能ですよね」


 知らない名前が出た、とサヤカがツェルを見る。聞いてみようかと笑みをこぼしているツェルに向かって口を開いたが、マルキスが先に言葉を発して聞けない。


「アンディーなあ。お酒はその人の知らない一面を引き出すことがあるけど、アンディーは全く変わんなかったな。アリアなんて笑い上戸になったのにな」


「ええ。主任がお酒に弱いのは意外でしたよ。あそこからでしたねえ。主任に対する、親近感を覚えるようになったのは」


 彼らにしか分からない会話になって、水を差すのが悪いかも、と口を閉ざしてしまうサヤカ。とりあえず静観することにし、彼らだけの世間話に耳を傾けることにした。


 ツェルが酒をちびちび飲む様子を、半目で呆れるように見ていたマルキス。しかし、何かを思いついたように片方、口角を上げた。


「ツェルも、アンディー程じゃないけど酒に強いよな。酔っぱらってる様子を見たことないし、想像もできないし。そういうわけだから、やっぱ酔いつぶれるまで飲んでみてよ」


「おやおや、あなたからそんな提案をするとは珍しい。是非とも応えてあげたいですが……その前に一つ」


 シルクハットの奥。マルキスを煽るような紫の瞳。横目で見て、たちまちサヤカに振り返る。ツェルにも考えがあった。


「私の弱った姿をこの場にいる全員に見せるのは、少々プライドが傷ついちゃいます。ので、マルキス。あの時のパーティで泣き上戸だったあなたの様子を、サヤカさんに一部始終を聞かせてからでもよろしいですか?」


 静観しようと思っていたサヤカ。あまりにも気になる話題に引っ張られて、早々に言葉を返す。


「えあぁ!!?なにそれ、超気になるんですけど!ツェルさん!マルキスに何があったの!??」


 思いがけない切り返しにたじろぎ、羞恥心で白い顔が赤くなっていくマルキス。


「お、おいツェル!やめろバカ!」


「いいのですか?私を酔いつぶれさせたいのでしょう?」


「くっ……やっぱダメだ!」


「短い文章で一部分だけですから」


「ダメって言ってんのになんで教えようとすんだ!ダメだって言ってるだろ!」


 サヤカがツェルに囁く。


「ちょびっとだけ!ちょびっと!ね!」


 マルキスの、白くて長い耳が立つ。先っぽまで紅潮していた。


「聞こえてる!」


「ふむ。では……」


 もはや彼からの提案などどうでもよく、からかって楽しんでいるツェル。マルキスの様子を窺いながら、たった短い一言、サヤカに。


「私に……」


 マルキスの顔が凄んでいる。この先を言ってしまえば、信頼の裏切りと彼は捉えるかもしれないとツェルは考えて、話を切り上げる。


「これ以上は言わないでおきましょうか」


「当たり前だ!ったくもう……」


 苛つきながら腕を組むマルキス。そして、その先が気になって気になって仕方ないサヤカ。彼女は思い切り息を吸う。


「めっちゃ気になるんですけどっ!!ねえっ!!なんでそこで終わらせるのよ~!マルキスがツェルさんに何したの!!分からないと寝れなくなるじゃない!!」


「なら寝れなくなっちまえこの野郎……」


「もう~~!絶対聞き出してやるわよ!」


「その瞬間お前とはもう会わないから」


 彼の本気を感じられる言葉と、悔しそうに唸って続きを聞きたそうにしている彼女に、ツェルは満足げに笑う。


「ふふふ……これ以上は『秘密』です」


「く、くし~~~っ!!!」


「くし……?」


 サヤカの独特な唸り声に引っ張られて、思わず怒りが消え困惑してしまったマルキス。そして未だに不敵に微笑んだツェルがいた。



 *



 その後。パーティが無事終わった。ただ、飲みすぎた三兄弟のうちナインドとアルタルスはダウンして無防備に寝てしまい、近くのソファに移された。グラスはすんでのところでマルキスからのストップがかかったので何ともないが、ほわほわしてまともに話せなくなっていた。


 一方でカルダ。長男であるがゆえにしっかり者なのだろう、酔いつぶれるところまではいかずに意識もしっかり明瞭で、パーティの後片付けをしていた。そこにはサヤカ、マルキス、ツェルも手伝ってくれている。


 カルダは友達四人に対して感謝を述べる。


「今日は本当にありがとう。みんなのおかげで思い出に残る一日になったよ。二人の弟もそう思ってくれているはずだよ」


「こちらこそありがとう!カルダさん!こんなに楽しいパーティ、初めてだったわ」


「たまには、こういうのも悪くないね」


 笑顔でほろほろなグラスの肩を持ったマルキス。案外楽しかったと、カルダに不器用に微笑んだ。すると隣のグラスも赤い顔でほわほわのまま礼をする。


「あいあと~かうだ~~、たのいかったよ~~」


「ははっ、そう言ってくれるとやった甲斐があったってものだね」


 楽しく過ごしてくれたことに安心して満足のカルダ。そこでツェルも、感謝のついでに返礼をしようと懐に手を入れる。


「こちらからも、ありがとうございます。サヤカさんの友人ということだけで招待してくれたこと、感謝いたします。それで、もし良かったらですが……」


 懐から名刺を取り出し、カルダに手渡す。


「レベルシティで探偵を営んでいます。今回のパーティのお礼として、一回限り、依頼料を二割引きさせていただきます」


「探偵をしていたのか!へえ……無くし物とか探してくれたり?」


「それもいいでしょう」


 思いがけない職業に驚く彼。名刺を受け取ってまじまじと見つめた。物珍しさに目を輝かせている彼を横目に、隣にいるマルキスに囁く。


「あなたは?」


「……もちろんやるって」


 影が茶化すように一言。


「私が先で悔しかったりなど?」


 呆れ顔の兎。


「相当酔ってるね。先に車で待ってたらどうだよ」


「そうさせてもらいましょう」


 ではまた、とツェルはカルダに別れを告げて玄関へ。一方残ったマルキスは、ポケットから届声機の番号が書かれた紙を取り出した。自身の仕事について紹介する。


「そうそうカルダさん。俺も実は画家やってまして。依頼通りの絵をお作りしますので、良かったら」


「おっとと!二人してか!君は絵描きを生業にしているのか。芸術家同士だね。ありがとう。いつか依頼しようかな」


「いつでも待ってます。……じゃあ帰ろうか、サヤカ」


 楽しさの余韻に浸って笑顔のサヤカ。満足げにカルダに手を振る。


「またね、カルダさん!またピアノ弾きに行くから!」


「ああ、待ってるよ!でもたまには、フルートとかも一緒に吹いてほしいってナインドが言ってたんだ。今度はそっちをやってみないかい」


 サヤカはピアノ以外の楽器をあまり弾いた経験が無い。全くの新しい体験になるだろうと心が躍った彼女は、朗らかに返す。


「フルートね……うん!次の時によろしくお願いね!」


 三人は玄関まで来てくれたカルダに別れの挨拶を交わして、車へと向かって行く。七人の特別な夜が終わった。しかしながらその余韻が、車の中を満たして、サヤカはうとうとと眠りこけてしまう。


 着いたら起こすから寝ていろ、という声が運転席のマルキスが言ってくれた。その言葉に甘えることにしサヤカ。揺り籠のように揺れる車内で、グラスと同じように睡眠の世界へと堕ちて行った。


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