第7話 私の試練
私の手から放たれた青白い光が、巨大な影に直撃した。その瞬間、影は歪みながら揺れ、轟音を立てて一部が崩れ始めた。しかし、完全に消えることなく、未だにその形は崩れずに空中でうねり続けていた。
「シズナ、大丈夫か!?」
カケルが叫びながら、私のすぐ横に駆け寄った。
「う、うん……! でも、まだ終わってないみたい……!」
私は震える手で、再び力を集中させる。
これまで使ってきた力の中でも、最も大きな力を今、解放しようとしていた。
これが試練という物だろうか。本気を出すのは恐ろしい。でも、今はやる時なんだ。輝いて燃えて爆ぜろ。
その時、影は一層激しく暴れだし、周囲の空気が変わる。
まるで私を試すかのように、影はさらに強く膨れ上がり、圧倒的な力を放ってきた。
「シズナ!」
ユイちゃんが声を上げる。その目は怖さと心配でいっぱいだった。
「こっちに来ないで! 私がやってみるから!」
私はユイちゃんに言ったが、振り返る暇もなく、目の前の巨大な影に集中していった。
その力が私にどんどん近づいてきている。
このままでは、全てが壊れてしまう。
私は今、逃げられない。
そのことを強く心に誓った。
「私がやるしかない……!」
私の体から、再び青白い光が放たれた。
それが周囲の空間を切り裂き、影に直撃する。
今度はただの光ではなく、力そのもので影を圧倒し始めた。
影は悲鳴のように唸り、しばらくしてようやくその力が収束し、完全に消え去った。
空気が一瞬で静まり、私たちの周囲には平和な静けさが戻った。
「シズナ……」
カケルが私に駆け寄る。
「すごかった……本当に、君の力は……」
「でも、まだ完全にはコントロールできていない。あんなに大きな力、いつ使うべきか分からないよ……」
私はそのまま、息をつきながら肩を落とす。
ユイちゃんも私に歩み寄り、微笑んだ。
「でも、シズナ、すごく頑張ったよ。もう少しでその力を完全に使いこなせるようになるよ」
「でも、次に現れる相手がもっと強かったらどうするの? 私はまだ怖いよ、こんな力を使うのが」
「それでも、シズナにはその力と向き合う覚悟があるって、私は信じてるよ」
ユイちゃんの言葉に、私は少しだけ胸を張った。
でも、やっぱり恐怖は消えなかった。
私の力は確かに強い。けれど、それを使うことは常にリスクを伴う。
それが私の心を重くしていた。
その後、影が消えたことにより、学園は元の状態に戻った。
周囲の空気も穏やかになり、時間が進んでいることに気づかされる。
「シズナ、あれで本当に終わりなのか?」
カケルが不安そうに言った。
「アリスは言ってたんだろ? 試練はまだまだ来るって」
「うん、試練はまだ始まったばかりだよ。私の力を試す『敵』はこれからも現れるはず」
私が静かに頷く。
「試練が終わったら、私は力をちゃんと制御できるようになるのかな?」
アリスの言葉を思い出す。
『あなたの力を試す敵は、あなたの成長を促すために現れるの。その相手を倒すことで、あなたが力を使いこなすための『道』が開かれていくわ』
だからこそ、私はその道を進む覚悟を決めなければならない。
「でも、もし次に現れる敵が……」
「強くても、必ず乗り越えられるよ。だってシズナが強いのを私達は知っているもの」
ユイちゃんの言葉が、少しだけ私の不安を和らげてくれる。
カケルも、少し真面目に言った。
「次はお前ももっと強くなる。だから心配するな」
「ありがとう、二人とも」
私は笑顔で答えたものの、心の中ではまだ不安が残っていた。
でも、それでも私は決めた。
自分の力を使いこなすため、私はもっと強くなる。
そして、どんな敵が現れても、必ず乗り越えてみせると……
その時、突然、背後で不自然な音が聞こえた。
「……!?」
振り返ると、またしても空に不穏な変化が見られた。
影のようなものが、再び現れようとしていた。
「もう来るの……!?」
カケルが叫びながら、私の前に立ちふさがる。
「シズナ、覚悟しろ! これからが本当の試練だ!」
私は深く息を吸い込み、決意を固めた。
次の敵は何だろうが、私は立ち向かう。
これが私に与えられた試練だと、心の中で誓った。
「来なさい! 私の力は私の物!」
その言葉とともに、私は再び力を解放し始めた。
今度こそ、恐れることなく。
試練に立ち向かおうと。