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第6話 試練の始まり

「試練……ね」


 アリスの言う言葉が、頭の中で響く。

 私の力が試される? そのために何か特別な敵が現れる?

 その言葉の意味が分からない。いや、分かりたくない。

 だって、もし本当にその「敵」が現れるなら、私や周りがどうなってしまうのか、全く予測がつかないから。


「シズナ、大丈夫?」


 ユイちゃんが心配そうに私に声をかけてくる。

 私は無意識にうなずいたが、その顔はきっと引きつっていたに違いない。

 だって、私はまだ自分の力すら完全に制御できていないのに、そんな「試練」を迎えるなんて……


「アリス、試練に関して、もっと詳しく話してくれないか?」


 カケルが冷静にアリスに問いかける。


「試練っていうのは、具体的に何が起きるんだ?」


 アリスは少し考えてから、ゆっくりと口を開いた。


「あなたが使った力、あれはただの『始まり』に過ぎないわ。あの力は世界の均衡を崩し、時空の破壊を引き起こす可能性がある。それを完全に制御できるようになるには……あなたが試練を乗り越え、成長しなければならない」

「それって、どういうこと?」


 ユイちゃんが顔をしかめながら問いかけると、アリスは目を細め、真剣な表情で続けた。


「あなたが今後遭遇するのは力を試す『相手』よ。あなたがその相手を乗り越えることで、少しずつ自分の力を制御できるようになるはずなの。ただし、力を試すために現れる『敵』は、一筋縄ではいかない」

「敵……」


 その言葉を聞いた瞬間、私は再び緊張に息を呑んだ。

 私は自分の力でさえ、まともにコントロールできていないのに、その力を試す敵が現れるなんて……

 どんな現象が起きるのか、全く想像がつかなかった。


「それで、その試練ってどうやって始まるんだ?」


 カケルが冷静に尋ねると、アリスはちょっと黙ってから、ようやく答えた。


「それはシズナが決めることよ」

「え?」

「試練は、あなたが自分の力に向き合い、覚悟を決めたときに始まるわ。そして、その力をどのように使うかによって、敵が現れる場所や状況が変わるの。あなたが何を選ぶか、それが試練の内容を決めるのよ」

「私が選ぶ……?」


 私はその言葉に驚き、思わず口に出してしまった。

 自分の力をどう使うか、私が選ばなければならないなんて、まるでその責任が全部自分にかかっているように感じた。


「でも、どうして私が選ばなきゃいけないの?」

「あなたの力を制御するためには、あなたがそれをどう使うべきか、どんな覚悟を持ってその力に立ち向かうのかを決める必要があるからよ。それは意識的かもしれないし、あるいは無意識かもしれない」


 アリスはそれだけ言うと、少し黙り込んだ。その静かな空気が、私の心をさらに重くしていく。

 でも、私にはまだその覚悟が持てなかった。


「私が決めなければいけないなんて……」


 だって、私はただの普通の女の子だ。

 どうしてこんな力を持ってしまったんだろう? ただ平穏に暮らしていければよかったのに……

 その答えが出ないまま、私はただうつむいてしまうのだった。




 その夜、私はベッドで寝ながらも、目を閉じていられなかった。

 自分の力に向き合うこと、そしてその力を試す相手が現れること。

 そのどちらも、私にはまだ耐えられる自信がなかった。

 だけど、どこかで感じていた。

 これは、逃げられないことだと。

 スマホでも見ようと手を伸ばすといきなり呼び出し音が鳴って、私はびっくりしながら手に取った。


「シズナ、起きて」

「まだ起きてる」


 慌てたようなユイちゃんの声だった。


「すぐに外に出て。異常が発生したから」

「異常?」


 外を見ようとカーテンを開けると、家の前でユイちゃんが手を振った。

 私は急いで起き上がり、服に着替えてユイちゃんと一緒に家を出る。

 カケルもすぐに駆けつけてきて、私たちは学園に向かって走り出した。

 その途中、私は何か不安な予感が胸をよぎった。

 昼のアリスの言葉が、何かの予兆のように感じられてならなかった。




 学園まで来た瞬間、私たちは驚くべき光景を目の当たりにした。

 空が赤く染まり、まるで異次元から何かが押し寄せてきているような恐ろしい光景だった。

 その中心には、黒い煙を吹き出す巨大な『影』が浮かんでいる。


「こ、これは……!」


 カケルが声を震わせながら言う。


「シズナ、あれが試練の始まりなのか?」

「分からないけど多分そう」


 まさか、これがアリスの言っていた試練の「敵」だとは……

 見えなかった物が今形となって目の前に現れている。

 その影は、私に向かってゆっくりと近づいてきている。


「シズナ、力を使って!」


 ユイちゃんが叫ぶ。

 私はその言葉に反応し、手を差し伸べるが、恐怖から手が震えて止まらない。

 どうしても、この力を使うことが怖かった。

 でも、私は決心しなければならない。

 この試練を乗り越えなければ、私は一歩も前に進めない。


「怖くない……」


 私は小さな声で呟き、深呼吸を一つして力を使い始めた。

 すると、手のひらから青白い光が放たれ、その力が徐々に収束し始めた。

 その瞬間、巨大な影が不規則にうねり、私に向かって襲いかかってきた。


「来るなら、来い!」


 私は力をさらに強く、そして自信を持って発動させた。

 その光が巨大な影を打ち消し、少しずつその形を崩し始める。

 しかし、まだその影は完全には消え去っていない。


「これが、私の力……」


 支配する力。それが影を調伏するのに最適の形を取るようだった。

 私は深く息を吸い込み、再びその力を解放する準備をした。

 試練の始まり、そしてその先に待っているものを乗り越えるために……

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