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第5話 やってくる試練

「ふぅ……やっと、落ち着いたかな」


 私は部室の机に戻り、肩の力を抜いて深呼吸をした。

 時空を乱す異常なエネルギー波を止めるために必死に力を使った結果、無事に学園の時間の歪みを修正することができた。

 その後、何度もカケルやユイちゃんと一緒に確認作業をして、元の平和な学園が戻ったのを実感した。

 それでも、私はまだどこか落ち着かない気持ちを引きずっていた。


「シズナ、大丈夫?」


 ユイちゃんが心配そうに私を見つめる。


「うん、なんとか……」


 でも、実は自分でもよくわからない。

 あの力を使ったことで確かに学園は救われたけれど、今後もこの力を使うことになるのか、それとももう何も起きないのか……

 どちらにせよ、私はまだ自分の力に完全には向き合えていない気がした。


「でも、シズナ、すごかったよ! ほんとに、あんなに強い力を使えるなんて思わなかった!」


 ユイちゃんは私の力を認めてくれている。カケルも私に向かってニヤリと笑いながら言う。


「まぁ、確かにお前のスキルは一度使うと規模が大きくなるから、最初はちょっと怖かったけどな。でも、なんだかんだお前がやってくれたおかげで、助かった」

「うーん、でも、私はあんなこと二度としたくないし……」

「でも、それが君の力だろ? それに、慣れれば次はもっと上手く使えるようになるよ」


 カケルは軽く言うけど、その言葉が妙に心に響いた。

 確かに、私はあの力を使うことができる。でも、よく分からない力だ。

 いつか全貌が掴めるようになるのか、それともこれからも分からないなりに使っていくしかないのか……


「シズナ、心配しなくて大丈夫だよ」


 ユイちゃんが私に優しく微笑んで言う。


「あなたが使う力は、きっとみんなのためになるから」


 その言葉で少し気が楽になったけれど、心の中にはまだ不安が残っていた。

 今後、私の力をどう扱っていくか、それを決めるのは私自身になるだろう。

 でも、どうしたらいいのかが全然わからない。




 次の日、私はまた学校へと向かっていた。

 時間の流れがどうなっても毎日変わらない日常の風景。

 途中でユイちゃんとカケルと出会って、一緒に登校する事になった。


 その時、突然、私たちの前に現れたのは、見慣れない女の子だった。

 整った顔立ちをしていて、何か不穏なオーラを漂わせている。

 彼女は私たちに近づいてきて、少し無愛想に言った。


「あなた達が『放課後不思議研究会』のメンバーなの?」


 その言葉に、ユイちゃんとカケルが驚いたように顔を見合わせる。


「え……? あ、ああ……そうですけど……」


 その女の子は、私に視線を向けた。


「あなたがシズナ?」

「う……うん、そうだけど……?」


 女の子は、微かに口角を上げて、魅惑的な笑みを浮かべた。


「ふふ、あなたがシズナね。素敵な名前。私はアリスよ」


 その一言が、なんだか不安にさせる。


「私の力について何か知っている人?」


 アリスはわざとらしく首をかしげ、まるで何かを楽しんでいるような様子で答える。


「ええ、もちろん。だって、あなたの力って特別でしょ? 時間の流れだって簡単に直しちゃうぐらいに。興味があるの。少しだけ教えてくれない? どうしても気になっちゃって」


 その言葉に、私は胸の奥がざわつくのを感じた。


「シズナがやった事を知っているなんて。君、誰なの?」


 カケルが警戒しながら問いかける。

 アリスは軽く肩をすくめ、つまらなそうに答えた。


「あらあら、そんなに警戒しなくてもいいのよ、カケルくん。私はただ"遊びに来ただけ"なんだから」


 彼女の口調は甘く、挑発的だった。その一言が、どこか腹の底に不安を募らせる。

 アリスは楽しげに続けた。


「私はシズナ、あなたが今後避けては通れない試練について、少しお話に来ただけよ」

「試練……?」


 ユイちゃんが驚いたように問いかける。


「ふふ、そう。あなた達が力を使ったことで、時間と空間のバランスが崩れ始めて予期せぬ事が起き始めているの」


 アリスの目の光と笑みが一層深くなる。まるで事件が起きているのを愉しむかのようだ。

 その言葉に、私は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。


(まさか、私が使った力が、予期せぬ影響を与えているなんて……)


「じゃあ、これからも私が力を使ったら、世界が壊れちゃうってこと?」


 私は少し震えた声で問いかける。

 アリスはいたずらっぽく目を細め、優雅に首を振る。


「いいえ、違うわ。でも、あなたがその力を完全に制御できるようになるまでは、"試練"が続くわ」

「試練って……どんな?」

「あなたの力が最強である以上、それにふさわしい敵も現れるの」


 アリスはにやりと笑い、私をじっと見つめる。


「あなたがどうその力を使い、どう成長するかが試されるわ」


 その言葉に、私は再び緊張を感じる。

 自分の力が強大だということは理解しているけれど、それに対して試練が訪れるなんて……


「どうすればいいんだろう? 私には、この力を制御するなんてできるのかな?」


 アリスがゆっくりと歩き寄り、優雅に微笑んだ。


「それはあなた次第。力は表にも裏にも、あるいは過去にも未来にもなる可能性を秘めているものなの。ふふ、シズナ……。あなたは、もう戻れないのよ」


 その言葉が私の胸に深く刻まれる。


「もう、逃げることなんてできないわ。だからこそ、この力を使う覚悟を決めなさい」


 その冷静で挑発的な口調に、私は身動きが取れないような気がした。

 でも、同時に確かに感じる……覚悟を決めるべき時が来ていることを。


「……私は……」


 私は深呼吸をし、目を閉じた。


「わかってる。覚悟を決めなきゃ、いけないんだよね」


 アリスはにんまりと笑い、軽く指を鳴らす。


「その通りよ。さて、どうなるかしら?」


 彼女は満足そうに言って笑う。


「でも、楽しみだわ。シズナがその力をどれだけ使いこなせるか、興味は深いもの」


 アリスの小悪魔的な笑みが、私の心に引っかかるように残った。

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