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第4話 力を試す時

「うーん……やっぱり、ちょっと怖いなぁ」


 私は部室でペンをいじりながら、意識して浮かせたり、回転させたりしてみていた。

 昨日、無意識に発揮した力を意識的に使うようになって、どうしてもその力に対して怖さを感じるようになった。

 だって、私が一度でも力を誤って使ったら、周りに迷惑をかけてしまうかもしれないんだから。


「シズナ、またペン動かしてるの?」


 ユイちゃんが部室に入ってきて、私の手元を見て驚いたように声をあげる。

 私は慌ててペンをテーブルに戻した。


「ううん、別に……なんでもないよ」

「でも、そのペンすごく浮いてるし、怖がるのもわかるけど、でも、シズナ、もう少し力に慣れた方がいいよ」


 ユイちゃんは笑顔でそう言ってくれるけど、私はそれでも恐怖心が拭えなかった。

 何も意識せずに使っていた力が、自分の手の中にあるという現実が、どうしても受け入れられない。

 だって、力があるということは、必ずそれに伴う責任があるんだってことを、私は本能的に感じているから。


「でも、怖くないの? 私がこんな自分でもよく分かってないスキルをすぐ近くで使ってて」

「怖いけど……でも、シズナが怖がってると、私たちも成り立たないんだよ?」

「え?」


 ユイちゃんの言葉に私は驚いた。

 彼女は私がどれだけ頼りになる存在だと思っているのだろう? 私はただ自分が生えている木や転がっている石ころのように思っているのに。

 でも、ユイちゃんはそんな私を見捨てるどころか、むしろ支えてくれようとしているんだ。


「シズナが力を使うと、みんな助かってるんだよ。シズナが怖がって立ち止まってたら、みんな困る」


 ユイちゃんが私に言うその言葉が、少しずつ心に響いてきた。

 でも、どうしても自信が持てない自分がいる。


「でも、私……やっぱり普通の女の子だし、こんな力なんて使いたくないよ。私なんかが出しゃっばったら誰かに迷惑をかけるんじゃないかって、すごく怖いんだ」

「シズナ……わかるよ。でもさ、力を使うことが悪いことじゃないよ。使い方さえ間違えなければ」


 その言葉を聞いて、少しだけ安心した気がした。でも、やっぱり怖いものは怖い。




 次の日、学園に新たな異常が現れた。

 私が部室で一人でペンをクルクル回していると、時空を歪めるようなエネルギー波が突然学園内で発生し、時間の流れが急速に崩れ始めたのだ。

 その波動に触れると、誰もが時間の感覚を失い、何度も同じことを繰り返すような錯覚を覚え、異常がどんどん広がっていった。


「シズナ、また時空の流れが乱れる何かが起きてるわ!」


 ユイちゃんが慌てて部室に駆け込んできた。

 カケルもすぐに資料を手にしてやってきて、事態の深刻さをすぐに理解する。


「どうしてこんなことが起きてるんだ? こんな目立つ大規模な波動、今までなかった!」

「もしかして、私が力を使い始めたことが関係してるのかも……?」


 私は恐る恐る言うが、ユイちゃんとカケルはすぐに否定する。


「いや、君が力を使い始めたからじゃない。これは、もっと大きな原因があるんだ」


 カケルが計算式を見ながら言う。


「時間の歪みが、君の力と関係している可能性は確かにある。でも、それがどうしてこんな規模で影響を及ぼしているのかは……まだわからない」


 その言葉に私は背筋を凍らせる。


「でも……もし私が関係なかったとしても、その歪みを止める方法を見つけないと、この学園、全部壊れてしまうんじゃ……?」

「そうだ。だからシズナ、今こそ君が立ち上がって力を行使する事が必要なんだ」


 カケルが私をしっかりと見つめ、真剣な顔で言った。


「シズナ、僕たちは君を信じてる。君の力なら、絶対に解決できるよ」

「やろうよ、シズナ。私達でこの問題を解決するのよ」


 その瞬間、私は少しだけ気持ちが楽になった。

 怖かったけれど、もしかしたら、私はこの力で何かを変えることができるのかもしれない。

 私は自分に言い聞かせるように、深く息を吸った。


「わかった……。やるよ。私達のスキルでこの不可思議な問題を解決しよう」




 私たちは学園の中心に向かって走り、異常なエネルギーの源を探し始めた。

 時間の崩壊を引き起こしているそのエネルギー源は、まるで異次元から来たような奇怪な波動を放っていた。

 それを前にして、私の足が止まる。

 でも、これ以上何もしなければ、この学園が壊れてしまう。


「シズナ、頑張って! もうひと頑張りよ!」


 ユイちゃんの声が後押ししてくれる。

 カケルも何かを計算しながら、私に指示を出す。


「シズナ、このエネルギーをコントロールしているものがあるはずだ。君がその中にある「核」を見つけ、力を使ってそれを壊すんだ」


 私は心の中で決意を固め、ゆっくりとその波動に手をかざした。

 少しずつ、無意識にスキルが反応し、力を感じ始める。


 その瞬間、私の手のひらから異次元のエネルギーが一気に放たれ、波動を押し返す力が生まれた。

 それは、自分でも驚くほど強大で、まるで私が世界そのものを操っているような感覚だった。


「これが……私の力? 波動を支配して波動を返す!」


 ペンを動かす要領で力の流れを動かして返す。

 その瞬間、エネルギー源が大きく震え、波動が消え去っていくのがわかった。

 周囲が静まり返る中、私はほっと息をついた。


「やったね、シズナ!」


 ユイちゃんが駆け寄ってきて、私を抱きしめる。


「すごいよ、シズナ! 君が本気を出したから、みんな助かったんだ!」


 カケルも笑顔で言う。


「君が覚醒した瞬間、全ての歪みが消えたんだ。これでまた元の時間が戻る」


 私はその言葉を聞いて、ようやく肩の力を抜いた。

 でも、今はまだわからない。

 自分の力がどれほどの影響を持つのか、全てを制御できるようになるにはどれくらいの時間がかかるのか……


 でも、少なくとも一歩、前に進めたんだ。

 この力を使って、私は少しずつ強くなっていく。

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