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第92話 魔法陣発動

 悪魔は大きく翼を広げ、不敵に笑った。


「我を本気にさせたな……身の程をわきまえるがいい! 『オメガ級・ヘルズ・アナイアレーション』!」


 チェルシーが即座に叫ぶ。


「まずい! あの魔法は『究極魔法、オメガ級』だ! お前さんたち、ここが踏ん張り時だよ!」


 次の瞬間、悪魔が放った漆黒の破壊光が俺たちを襲った。


「くっ……!」


 圧倒的な破壊力が防御を粉砕し、俺たちは壁のように叩きつけられる。地面に転がりながら、俺はすぐにチェルシーとユリアスの様子を確認した。二人とも、深手を負っている。


「『エリア・ギガ・ヒール』!」


 俺は広範囲回復魔法を発動し、二人の傷を癒やした。その瞬間、ユリアスが素早く飛び上がり、魔素を溜め始める。


「私は負けない……! 『神速』、『刹那聖王拳』!」


 強烈な閃光がほとばしる。


「生意気な小娘め……ならば、我が拳を受けるがよい! 『奈落滅覇拳』!」


 二つの拳が激突し、凄まじい衝撃が大気を揺るがした。


「うおおおおぉぉっ!」


 ユリアスの拳が悪魔の顔面を捉え、悪魔は吹き飛ばされる。


 チェルシーが微笑む。


「ユリアス、タエコの戦技を完全に自分のものにしたようだね。あたいも負けてられない……! 『テラ級・セイントバースト』!」


「俺だって! 『聖焔乱撃斬』!」


 俺たちの魔法と戦技が悪魔に直撃し、両の翼を粉砕した。


「ぐおおおおおお!! 我の翼が……貴様ら、許さんぞ!!」


 悪魔は怒り狂い、最後の力を振り絞る。


「これで終わりだ……! 『オメガ級・ヘルズ・アナイアレーション』!」


「いけぇぇぇっ!! 『ものまね・ヘルズ・アナイアレーション』!」


 二つの究極魔法が激突し、凄まじい爆風が戦場を飲み込んだ。天空が裂けるように轟音が響き渡り、豪雨が降り注ぐ。


 壁に叩きつけられながらも、俺たちは全身の痺れに耐え、歯を食いしばりながら立ち上がった。


「……ッ!」


 前方を見ると、悪魔は立ち上がることすらできず、明らかに限界を迎えていた。


「よし……今なら封印できる!」


 俺がそう確信した瞬間だった。


 悪魔の足元に、突如として魔法陣が浮かび上がる。


 ガーナが満面の笑みを浮かべ、優雅に言い放った。


「おほほほ……チェルシー、ご苦労様。しばらくそこで休んでてね。あとで、ゆっくり始末してあげるから」


 彼女の手前には、『エーテル銀』『魔素の核』『霊樹の樹液』『ムーンストーン』が浮かび、互いに反応し合いながら強烈な光を放っている。


 悪魔は苦痛に顔を歪めながらも、ゆっくりと立ち上がった。


「ぐ……ぐぐ……ガーナよ、これは何の真似だ……? まさか、我を……封印するつもりか……?」


 ガーナは愉悦に満ちた笑みを浮かべ、優雅に髪をかき上げる。


「ふふふ、今更気づきましたか? 悪魔インフェルナス。あなたには、私の栄光の礎になってもらいます! 『サンクチュアリ・ケージ』!」


 その瞬間、魔法陣がさらに輝きを増し、七色に光る鎖が出現。悪魔の体をがっちりと拘束する。


「ぐおおおおおおっ! 貴様……! 貴様あああああっ!!」


 悪魔は激しくもがき、力を振り絞って抵抗したが、鎖はさらに強く締め上げた。


 ガーナはうっとりと微笑み、呟く。


「私が……悪魔を封印している……! なんて、なんて気分がいいのかしら……! これで、私こそが英雄よ!!」


 だが、その光景を見ていたチェルシーの左目が、怪しく赤く光る。


「……ガーナ、気を抜くんじゃない!」


 チェルシーの鋭い警告が響いた瞬間——


 悪魔の体から黒い霧が溢れ出し、七色の鎖が次々と千切れていく。


「ふはははははっ!!」


 悪魔の嘲笑が響き渡った。


「貴様……200年もの間、我が何もしていなかったとでも思ったか?」


「そ、そんな馬鹿な……!?」


 ガーナはその光景に絶望し、膝をついた。


 黒い霧が晴れ、そこに立っていたのは——

 最初に現れたときよりもさらに禍々しい気配をまとった、完全復活を遂げた悪魔インフェルナスだった。


 その背には、再生された漆黒の翼が大きく広がっている。


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