第91話 悪魔の復活
「なんてこったい……悪魔が復活したよ」
チェルシーが低く呟く。
「バンダナ、ユリアス、気をつけな」
彼女の指示に従い、俺とユリアスは即座に戦闘体勢を整えた。
一方、ガーナは歓喜に満ちた表情で叫ぶ。
「インフェルナス様、万歳!」
悪魔はゆっくりとガーナを見下ろした。
「我が名は暗黒界のインフェルナス……貴様が我をここへ導いたのか」
「左様でございます!」
ガーナはひれ伏し、恍惚とした声で続ける。
「私は、インフェルナス様を崇拝する者、ガーナでございます。どうぞ、上にいる死者たちを貴方様への供物として捧げます。彼らにとって、それこそが本望……どうぞ、お納めください」
インフェルナスはニヤリと笑った。
「ふむ……日頃より、お前たちの信仰心は感じていた。よかろう」
そう言うと、悪魔は大きく息を吸い込む。
宙に黒い塊が浮かび、みるみる膨れ上がっていった。
「ふはは……このような魂を喰らうのは久しぶりだ」
インフェルナスは黒い塊を一気に飲み込み、満足そうに舌なめずりする。
「実に美味であった……ガーナ。お前の望みを叶えてやろう」
「ありがとうございます!」
ガーナは陶酔した声で言い放った。
「私の望みは、この三人を殺し、この国のすべての貴族を滅ぼし……そして、王国を再生することです」
「良きかな……殺戮と再生、そして絶望……それこそが魂の循環……」
インフェルナスはゆっくりとこちらを向く。
「では、まずは貴様らを……喰らうとしようか」
悪魔の視線がチェルシーに向けられた。
「ん? まさか……お前は……」
「ふん、やっと気が付いたようだね」
チェルシーが不敵に微笑むと、悪魔は低く唸り、怒りを込めた咆哮を上げた。
「お前か! 思い出したぞ……二百年前、我を封印した張本人!」
次いで、悪魔の目が俺たちにも向けられる。
「それに……そこの二人……容姿は違えども、その魂は確かに感じる……ならば、あの時の借りを返してやろう」
「バンダナ、ユリアス、来るよ!」
チェルシーの声に応じ、俺たちは即座に動く。
「『聖壁』!」
「『テラ級・プロテクション』!」
「『テラ級・セイントオーラ』!」
俺は聖なる障壁を展開し、ユリアスは物理・魔法耐性を強化、チェルシーは聖なる加護を高めた。
その間にも、悪魔の周囲に禍々しい魔素が渦を巻き始める。
「滅びるがよい……『テラ級・ダークネスブラスター』」
闇の魔力が一点に収束し、圧縮された暗黒の波動が解き放たれた。
空間ごと削り取るような破壊の光線が、俺たちに向かって一直線に放たれる。
「『聖壁』!」
俺の張った障壁に直撃し、凄まじい衝撃が炸裂した。
空間が震え、地面が唸る。
「『テラ級・プロテクション』!」
ユリアスの補強魔法が障壁を支え、チェルシーの「セイントオーラ」が聖なる輝きを放つ。
黒き破壊の光と、俺たちの防御が激突し、地面が抉れ、大気が裂けた。
だが——
「今度は、俺たちの番だな!」
俺たちは同時に動き出した。
「『聖焔乱撃斬』!」
「『刹那聖王拳』!」
「『テラ級・セイントバースト』!」
俺の剣が聖なる炎を纏い、ユリアスの拳が白銀の光を帯び、チェルシーの魔法陣が天へと輝く。
三つの力が一斉に悪魔へ襲いかかった。
「『テラ級・ダークプロテクション』!」
悪魔は黒い霧の障壁を纏う。だが——
「突破する!」
俺たちの力はその障壁を打ち破り、聖なる閃光が悪魔の肉体を貫いた。
「ぐあぁぁぁーーー!」
インフェルナスの体が弾け、黒い血が飛び散る。
だが、その口元には、不気味な笑みが浮かんでいた。
「……なかなかやるな」
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