第89話 決着
「チェルシー、ユリアス! 俺の後ろへ!」
「『ものまね・魔轟地獄斬』!」
俺が放った煉獄の炎と氷塊が、敵の攻撃と激しくぶつかり合う。瞬間、爆発的な水蒸気が辺りを覆った。
その隙を突き、ユリアスが疾風のごとく飛び出す。
「タエコ様、お力を! 光よ、我が拳に宿り、闇を打ち砕け!――『刹那聖王拳』!」
拳から放たれた神聖な閃光が、天の裁きのごとくエリナスへ向かう。
「『ダークプロテクション』!」
エリナスが灰色の障壁を展開するが、神聖な覇気に触れた瞬間、それは脆くも砕け散った。
「きゃあああ、体が……ぁぁぁ……!」
エリナスの身体は瞬く間に干からび、砂となって崩れ落ちる。
「エリナス!」
ダリアナが絶叫する。しかし、その一瞬の隙を、チェルシーは逃さなかった。
「よくやったね、ユリアス。今度はあたいの番だよ――『ギガ級・セイクリッドバースト』!」
圧倒的な聖なる光がダリアナを包み込む。
「いやぁぁぁ……! やっぱり死にたくないぃぃ……!」
彼女の叫びも虚しく、ダリアナも砂となって風に消えた。
レオニクスの目が血走り、怒りに震える。
「おのれ、よくも……! 『魔轟地獄斬』!」
灼熱の煉獄の炎を帯びた刃が襲いかかる。
俺は即座に反応した。
「『ものまね・魔轟地獄斬』!」
互いの衝撃波が空間を震わせながらぶつかり合い、相殺される。
だが、レオニクスは疲弊していた。対して、俺のものまねは体力も魔素も消費しない。
俺は冷静に次の一手を放つ。
「『ものまね・魔轟地獄斬』!」
再び煉獄の炎がレオニクスを飲み込んだ。
「ぐああああ……っ!」
悪魔の力を得たはずの肉体が、今度は灼熱の炎によって焼き尽くされていく。
「まだだ、バンダナーーー! 『魔轟地――』」
レオニクスが戦技を放とうとした刹那、俺は先手を取った。
「『ものまね・刹那聖王拳』!」
拳から放たれた神聖な閃光が、レオニクスの体を包み込む。
彼は一瞬、驚愕の表情を見せたが、やがて静かに笑みを浮かべた。
「どうやら、ここまでのようだ……」
神聖な光に焼かれながらも、穏やかな口調で続ける。
「……もし、俺たちがあのまま組んでいたら……最高のチームだったかもな」
俺は一瞬、沈黙し、短く答えた。
「ああ、そうだな。残念だよ」
レオニクスはゆっくりと目を閉じる。
彼の身体は、灰のように風に溶け、やがて完全に消えた。
「バンダナ……片付いたようだね」
チェルシーの言葉に、俺は静かに頷く。
だが、彼女の表情は険しかった。
「さて、バンダナ……ここからが本番だよ」
「本番?」
俺が問い返すと、チェルシーは小さく頷いた。
「王国の情報によると、インフェルナス教団には『教皇』と呼ばれる存在がいる」
「教皇……?」
「そうさ。教団の実質的な支配者であり、諸悪の根源ってやつだ。団員たちを『服従の薬』で縛り、悪魔の復活を目論んでいる張本人さ」
「ってことは、レオニクスたちを操っていたのも、その教皇か?」
「おそらくね」
無意識に、俺は拳を握りしめた。
レオニクスは確かに敵だった。だが、あいつがここまで堕ちたのは、誰かに利用された結果でもある。
――教皇。
レオニクスを、エリナスを、ダリアナを……そして、もっと多くの者たちを道具のように扱い、捨ててきた存在。
「許せねぇな……」
低く呟いた俺に、ユリアスとチェルシーが視線を向ける。
「行こう。全てを終わらせる」
俺たちは決意を新たにし、次なる戦いへと足を踏み出した。
もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。
応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。