表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/100

第87話 悪魔水


「このままいけば、王都騎士団と王都魔道団の勝利さ」


 チェルシーの言葉に、俺は頷いた。


「チェルシー、ユリアス。行くぞ。俺は『隠蔽』で姿を隠して進む」


 チェルシーはニヤリと笑いながら答える。


「神鎖の神殿……二百年ぶりだねぇ。あたいについてきな」


 俺とユリアスはチェルシーに導かれ、神殿の奥へと進んだ。

 封印の間へたどり着くと、すでに先客がいた。


「やっと来たか。待ちくたびれたぞ」


 その声の主は、赤き翼のリーダー、レオニクスだった。

 その背後にはシーフのレイアード、魔術師のダリアナ、治癒士のエリナスが並んでいる。


「お前さんたちは……赤き翼だね」


 チェルシーが冷たい視線を向ける。


「これは光栄ですな。悪魔大戦の英雄、隻眼の魔女チェルシー様。それに、グラングリオン王国第二王女、ユリアス姫」


 レオニクスたちは皮肉たっぷりにお辞儀をした。


「ふん、随分と余裕じゃないかい」


「余裕? いや、そうでもないな」


 レオニクスは肩をすくめて続けた。


「上の連中は魔法騎士団に敗れるだろう。貴重な悪魔水を分けてやったというのに、まるで役に立たん。まあ、その代わりに、俺たちがやるだけさ」


「ほう……あたいとユリアスは眼中にないってわけかい? 甘く見ていると痛い目に遭うよ」


 チェルシーの隻眼が妖しく赤く輝く。


「これはこれは……隻眼の魔女の実力、試させてもらうとしよう」


 その瞬間、ユリアスが動いた。

 目にも留まらぬ速さで、治癒士エリナスと魔術師ダリアナへと迫る。


「『神速』、『タオ流奥義・刹那龍王拳』!」


 龍王の咆哮のごとき一撃が放たれる。


「くっ……『鉄壁』!」


 レオニクスは即座に防御魔法を展開するが――

 ユリアスの拳がそれを粉砕した。


 衝撃波とともに、エリナスとダリアナは壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。


「ちっ……こいつら、やるな!」


 レオニクスの表情が一変した。


 俺は静かに息を殺し、気配を断つ。

 今こそ、この戦いの流れを俺たちのものにする時だ――。


 チェルシーは余裕の笑みを浮かべ、レオニクスを挑発する。


「どうだい? うちのじゃじゃ馬娘の拳は。まさか、一撃で吹っ飛ばされるとは思わなかったかい?」


 レオニクスは悔しそうに顔を歪め、唇を噛んだ。


「ふん、バンダナさえ倒せば簡単だと思っていたが……どうやら甘かったようだな」


 そう言うと、レオニクスは懐から小さな玉を取り出し、床に叩きつける。


 バァン!!


 眩い閃光が周囲を包み込んだ。

 俺たちは一瞬、視界を奪われる。


「くくく……この力だ!」


 視界が戻ると、レオニクスたちはすでに悪魔水を飲み干していた。

 彼らの身体は異様に赤く染まり、筋肉が膨れ上がり、不気味な気配を放っている。


「悪魔水かい……趣味が悪いねぇ」


 チェルシーが吐き捨てた、その時――


「『テラ級・フレイムバースト』!」


 悪魔水の力を得たダリアナが、巨大な炎の渦を巻き起こし、俺たちに迫る。


「『テラ級・アイスバースト』!」


 チェルシーの氷の魔法が炸裂。

 炎と氷がぶつかり合い、轟音とともに凄まじい爆風が封印の間を満たした。


 氷と炎がせめぎ合い、壁や床が砕け散る。

 だが、その混乱の中――俺は微かな殺気を感じ取った。


「ユリアス姫……命、もらったぜ」


「『黒閃突』!」


 レオニクスの部下レイアードが影のように背後から忍び寄り、短刀を心臓めがけて突き出す。


「――させるかよ」


 俺の声が響くよりも早く、体が動いていた。


「『獄炎乱撃斬』」


 姿も音もない。

 炎を纏った剣が一瞬で空間を切り裂く。


 次の瞬間――


 レイアードの体は燃え盛る獄炎に包まれ、そのまま灰となって崩れ落ちた。


「……っ! 何が……? 一体、何が起こった……?」


 レオニクスの目が驚愕に見開かれる。


 ユリアスは静かに拳甲を握り締め、俺の方を見て微かに微笑んだ。


「……ありがとう」


「礼はいい。ここからが本番だ」


 俺は刀の柄を握り直し、燃え盛る戦場の中で次なる戦いに備えた。

もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。

応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。

ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。

作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ