第86話 神鎖の神殿
俺たちは王都を出発し、『神鎖の神殿』へ向かった。
険しい山道を越え、神殿の近くで野営する。静寂に包まれた森の中、焚火の灯りが揺れていた。明日の決戦に向け、皆それぞれ武器の手入れをしたり、作戦の確認をしたりしている。
翌朝、陽が昇ると同時に、王都騎士団隊長のバセットが隊員を集め、最後の作戦を伝えた。
「よし、全員集まったな。これから俺たちは神鎖の神殿へ向かい、悪魔復活を阻止するため、インフェルナス教を殲滅する!」
バセットの声に、場の空気が一気に張り詰める。
「出発前に話した部隊編成を変更する。東側から攻める王都騎士団は、前列に王都魔道団を置き、後列に騎士団を配置する。逆に、西側から攻める魔道団は、前列に騎士団、後列に魔道団を配置する!」
突然の変更に隊員たちがざわめき、すぐに質問が飛んだ。
「隊長、なぜ急に編成を変えるのですか?」
バセットは険しい表情で答える。
「出発前に、我々の情報が漏れていたことが判明した。インフェルナス教は東側に魔法部隊、西側に近接戦闘部隊を配置すると予測できる。だからこそ、こちらも戦術を変え、敵の裏をかく」
「そこまで読んでおられるとは……さすがです、隊長!」
隊員たちは納得し、次第に落ち着きを取り戻していく。
「いいか、王都の未来はお前たちの双肩にかかっている。今こそ日頃の訓練の成果を見せ、インフェルナス教を討ち取るのだ!」
「おおおおおお!!」
バセットの激励に、士気は最高潮に達した。俺も改めて心を引き締める。
チェルシーが隣でつぶやいた。
「いよいよって感じだね、バンダナ」
「ああ。ここが正念場だ」
ユリアスも拳を握りしめ、気合十分な様子だ。
「必ず、悪魔の復活を阻止しましょう!」
俺たちは頷き合い、戦場へと足を踏み出す。
いよいよ、インフェルナス教との決戦だ。
戦場での戦闘。
戦況が一変し、俺たちは後方で様子を見ていたが――
悪魔水を使ったインフェルナス教団員が出現し、戦場は混乱を極めていた。
「バンダナ、あれが悪魔水だね」
チェルシーが低く呟く。俺はその光景を見ながら、かつての因縁を思い出していた。
「ああ、間違いない。あれにやられたことがある……借りを返してくる」
チェルシーとユリアスは少し呆れたような顔をしていたが、俺はすでに気配を消し、戦場へと向かっていた。
「『神速』、『獄炎乱撃斬』!」
一瞬で間合いを詰め、刀を振るう。
俺の一撃が決まると、教団員の体は燃え盛る炎に包まれ、消し炭と化した。
「やっぱり……この装備の力は桁違いだな……」
そう呟きながらも、まだ気を緩めるわけにはいかない。すぐに次の標的を定め、王都魔道団の方へ向かった。
敵が気づく間もなく――
「『神速』、『獄炎乱撃斬』!」
二度目の瞬殺。
戦場が一瞬、静寂に包まれる。
俺は何事もなかったかのように、チェルシーたちの元へ戻った。
「バンダナ、お前さん……姿も音もなく、悪魔水を飲んだ団員を瞬殺するとは驚きだよ……」
チェルシーが目を見開く。
「私も驚きました。なんとか目で追えましたが、それでも速すぎます」
ユリアスも、信じられないような表情で言った。
「俺も自分の速さに驚いてるよ。でも、ユリアス、お前の装備も同じくらい強力だ。気を抜くなよ」
ユリアスは静かに頷き、光を放つ『天光の拳甲』を見つめながら、拳を握りしめた。
バセット隊長も戦場の異変に気づいたようで、驚愕の声を上げる。
「一体何が起きた……? 一瞬で敵が炎に包まれ、倒れた……?」
混乱する彼の様子を横目に、俺たちは次の戦いに備えた。
「まだ油断できないね」
チェルシーが鋭い視線を向ける。
「ああ、インフェルナス教の本命はまだ現れていないはずだ」
俺は刀の柄を握り直し、迫る決戦の気配を感じていた。
もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。
応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。