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第80話 打つ手なし

 

「やっぱり、戻ってきて正解だったようだな」


 不意に聞こえた声に振り返ると、レオニクスたちが立っていた。


「バンダナ。できればこんなところで会いたくなかったな。その様子だと『愚者の金粉』を手に入れたようだ」


 俺は警戒を崩さず、無言で構える。


 レオニクスは薄く笑いながら言葉を続けた。


「ふん、沈黙は肯定と受け取ろう。となると、俺たちのこと、いや、『インフェルナス教』についても知っているな」


「ああ、悪魔崇拝教だろう」


 俺の言葉にレオニクスは嘲笑を漏らす。


「ははは、無知は実に愚かだ。俺たちは悪魔崇拝教などではない。『インフェルナス様』のお力を借り、この穢れた貴族社会を浄化し、世界を平穏に導く救世者だ」


「その力をお前たちが扱えるとでも? 扱えなかったから『悪魔大戦』が起きたんだろう」


 レオニクスはわずかにため息をつき、肩をすくめる。


「ふっ、これ以上話しても無駄だな。これが最後だ、バンダナ。俺たちの仲間になれ」


「断る!」


「仕方がない」


 レオニクスが手を振ると同時に、仲間たちが俺に襲いかかってきた。


「背後は貰った! 『黒閃突』」


 レイアードが高速で突きを放ってくるが、俺はその気配を察知し、ぎりぎりでかわす。そして反撃に移った。


「『神速』、『ギガ・ファイアストーム』!」


 炎の嵐が一気にレイアードたちを飲み込む。


「くっ、『鉄壁』!」


 レイアードは防御スキルを展開して炎を防ごうとするが、魔法の威力に押し負け、仲間たちもろとも吹き飛ばされる。


「くそっ、やっぱりあの時に殺しておくべきだったな……!」


 レオニクスは苦々しい表情を浮かべながらポケットに手を突っ込み、小瓶を取り出した。それを一気に飲み干すと、仲間たちも次々と同じように小瓶を取り出し、口に含む。


「ぐおお、これだ! この湧き上がる力! 俺たちは悪魔の力を得た! 覚悟しろ、バンダナ!」


 レオニクスが小瓶の液体を飲み干したことで、周囲の魔素が格段に高まったのを感じる。同時に彼の体は赤く変色し、その異様な様子に驚愕する。


「おい、毒でも飲んだのか? 正気の沙汰じゃないぞ」


「ふん、知ったことか! これでも食らえ!」


 レオニクスが剣を振り下ろしてきた。


「速い!」


 その動きは以前とはまるで別人。剣さばきが格段に速くなり、その一撃一撃に圧倒される。


 俺が剣で防ぎながらなんとか持ちこたえていると、突然背後から冷たい感触が走った。


「『黒閃突』!」


「くっ……『神速』!」


 わき腹を切られる。咄嗟に間合いを取るが、痛みによろける俺をさらに追い詰めるように魔法が飛んでくる。


「回復させないよ! 『ギガ・アイスボール』!」


「『魔法剣・ギガファイア』!」


 俺は魔法剣でアイスボールを相殺するが、連携攻撃の嵐で徐々に体力が削られていく。


「強い……!」


「今さら後悔しても遅いぞ、『大地斬』!」


 レオニクスが放った大地斬の衝撃波が俺を直撃し、壁まで吹き飛ばされた。


「ぐはっ!」


 壁に叩きつけられた衝撃で口から鮮血を吐く。どうやら内臓に損傷を受けたらしい。


 衝撃で剣を落としてしまい、手元にはもう何もない。


「どうする……?」


 俺が苦悶の表情を浮かべている間に、レオニクスがゆっくりと歩み寄る。


「そろそろ終わりにしてやるか。この薬の効果は短時間だが、おまえを葬るには十分だ。死ね!」


 レオニクスが力を溜め、必殺の戦技を放とうとした瞬間、俺は最後の賭けに出た。


「ここだ! 『テラ級・フレイムバースト』!」


 灼熱の炎がレオニクスたちを飲み込もうとするが、彼らも全力で防御する。


「『鉄壁』!」


「『テラ・プロテクション』!」


 スキルと魔法防御によって、フレイムバーストは完全に防がれてしまった。


「くっ、打つ手なし、か……!」


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