第8話 『ものまね士』の特性
朝から近衛兵厩舎で、カナベルたちと共に汗を流す。厩舎内には剣の音や掛け声が響き渡り、訓練は白熱していた。
「よし、仕上げだ。全員、相手を決めて模擬戦だ。バンダナ、お前は俺とやるぞ!」
「よっしゃ! 今こそ試す時だ!」
カナベルの言葉に、心の中でガッツポーズを取る。昨夜考えたことを試す絶好のチャンスが訪れた。
カナベルと剣を交え、彼の動きを『ものまね』する。
「いいぞ、昨日よりも剣に鋭さがあるな。上達が早いじゃないか」
「ありがとう。それに今日は身体が軽く感じる」
「減らず口を叩く余裕まで出てきたか。それならどうだ」
カナベルが剣を構え、動きが一気に速くなる。
「『疾風斬!』」
これだ、今こそやるんだ!
「『ものまね・疾風斬!』」
高速の剣が火花を散らし、二人の剣が激しくぶつかり合う。
「くっ、もう一発! 『疾風斬!』」
「『ものまね・疾風斬!』」
何度も繰り返される激しい攻防。そのたびに、ものまねで完璧に対応する。
「これならいける!」
そう思った瞬間、カナベルがさらに新たな技を繰り出した。
「『真空斬!』」
鋭い真空の刃が放たれ、こちらに迫ってくる。
「『ものまね 真空斬!』」
自分の剣からも真空の刃が放たれ、二つの刃が激突。衝撃音と共に相殺される。
「そこまで!」
激闘を見守っていたエドガーが声を張り上げて止めに入った。周囲の訓練生たちも息を飲んで見守っていたようだ。
「お前、本当に『ものまね士』なのかよ…模倣の精度が異常だぞ」
カナベルが半ば呆れたような顔で言う。
「はは、俺もここまでできるとは思ってなかった」
息を整えながら俺が答えると、カナベルは笑いながら肩を叩く。
「やるな、バンダナ。この調子なら、すぐに戦場でも通用するようになるだろう」
「ありがとう。でも、もっと鍛えないと」
「その意気だ。次はもっと強い戦技を教えてやる」
カナベルの言葉に、俺は拳を握りしめ、さらに上を目指す決意を固めた。
厩舎の片隅で、カナベルと一緒に昼食を取る。
粗食ではあるが、味付けが絶妙で、しっかりと体力を補える内容だ。
「バンダナ、お前の『ものまね』はやはり異常だ」
カナベルが箸を置き、真剣な表情で口を開く。
「異常って、どういう意味だ?」
少し驚きつつ問い返すと、カナベルは頷いて説明を続ける。
「俺の剣さばきを真似できるのは驚異的だが、それだけじゃない。問題は戦技だ。戦技は強力だが、発動するたびに体力を消耗する。体力が三割以下になると発動すらできないことになっている」
「そんな条件があったのか…」
昨夜のステータス確認を思い返しながら、カナベルの話を聞く。
「普通の剣士なら疾風斬を数回使えば体力が尽きる。だが、お前は平然とそれを超えていた。何か特別な理由があるはずだ」
カナベルの言葉に、ものまね士の特性を思い出す。
「それは、多分俺のジョブ――『ものまね士』の特性かもしれない。まさか、こんな特典があるとは思わなかったけど…」
「特性?」
「ものまねをする時に『体力や魔素を消費しない』って能力があるんだ。だから、戦技を連発しても疲れないんだと思う。」
カナベルは一瞬驚いた表情を浮かべた後、大きく頷いた。
「なるほど、それなら説明がつく。それは『ユニークスキル』だな。 ユニークスキルはこの世界でも珍しく、持っている者は極めて少ない。それだけに強力だ」
「ユニークスキルか…」
その響きに胸が高鳴る。自分がこの世界で特別な力を持っていると実感し始めた。
「さて、今日はここまでだ。もし疲れたなら、街を散策して気分転換でもしてみろよ。たまには剣から離れる時間も必要だ」
カナベルの助言を胸に刻み、一度宿に戻ることにした。
宿の快適な部屋で少し休憩してから、街へ繰り出す計画を立てようと思う。
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