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第75話 深淵の魔泉


 俺は地底湖のダンジョン『深淵の魔泉』の近くに立っていた。


 ナダルが用意してくれた地図のおかげで、ここまでは問題なく辿り着いたが、目の前の難関に頭を抱える。


 周囲では数人の監視員が巡回しており、無断での侵入は不可能だ。


「しまったな……こんなことなら、ユリアスに頼んで王家の許可書を取っておけばよかった」


 考え込んでいると、突然声が飛んできた。


「おい! そこにいるのは誰だ!」


 驚きつつも、すぐに冷静を装って振り返る。


「ん? 『深淵の魔泉』の下調べに来たんだが、何か問題でもあるのか?」


 監視員が警戒心を露わに睨んでくる。


 俺は冒険者ギルドのカードを取り出し、見せた。


「Bランク冒険者か……すまなかったな。最近、このあたりで監視員を暴行して無断侵入したパーティーがいてな。俺たちも神経質になってるんだ」


「そうか、それはご苦労なことだな」


 俺は鞄から女将さん特製の肉サンドを取り出し、彼に差し出した


「まぁ、これでも食べて落ち着けよ」


 監視員は不思議そうな顔をしながらも受け取り、一口かじった途端に顔がほころび、夢中で食べ始める。


「すまないな、腹が減ってたところだったんだ」


「それで、少し聞きたいんだが。このダンジョン、どうして王家の許可書が必要なんだ?」


 監視員は肉サンドを食べながら口を開いた。


「まぁ、これの礼だ。あまり口外しないでくれよ。――昔、このダンジョンは王家の管理下にあったんだ。最深部には祭壇があって、王家が成人の儀を行う場所だったらしい。それが理由で、今でも許可が必要ってわけだ」


「なるほど。とはいえ、今は使われてないんだろ? 許可なんて要らない気がするが」


 監視員は口元を拭いながら続ける。


「そう思うだろ? でも、このダンジョンは特殊でな。魔素が濃すぎるせいで転移石が使えない。それに、昔は王家の財宝が眠ってるって噂が広まって、盗掘がひどかった。盗掘防止用の罠もたくさん仕掛けられてる。それで、許可がない者の立ち入りは禁止されてるってわけさ」


「なるほど、色々と事情があるんだな。教えてくれてありがとう」


 俺は軽く頭を下げ、日が暮れるまで待つことにした。


 夜が訪れ、俺は行動を開始する。


「スキル発動――忍び足。神速」


 忍者スキルの「忍び足」で気配を完全に消し、「神速」で一気に監視員の隙を突いてダンジョンの入り口を駆け抜ける。


「ん? ……風か」


 監視員はまったく俺に気づいていないようだ。


 ダンジョンの中に足を踏み入れると、冷たい空気が肌を撫でた。


「さて、ここからが本番だな」


 俺は「地図捜索」「鑑定」などのスキルをすべて発動させ、周囲を慎重に調べながら進む。


「なるほど。魔獣は弱いし、数も少ない。だが、道は迷路のように入り組んでいて、至るところに罠が仕掛けられている。一筋縄ではいかないダンジョンだ」


 探索を続けるうち、俺はあることに気づいた。


「このダンジョンの攻略法がわかったぞ。――ずばり、魔素だ」


 分岐点に差し掛かるたび、魔素が濃い方向を選んで進むと、罠や魔獣に遭遇することなく進めることに気づいたのだ。


 慎重に魔素の濃度を感じ取りながら進むうち、やがて広がる地底湖へとたどり着く。


「なんてきれいな地底湖だ……」


 目の前に広がる地底湖は、まるで宝石のようにエメラルドグリーンに輝いていた。高い魔素濃度のせいか、湖全体が幻想的な光を放っている。


 透明な水の底に、何かが沈んでいるのが見えた。


「祭壇……か?」


 それは、古代の儀式に使われたような石造りの祭壇だった。静けさの中に漂う荘厳な空気が、ここがただの地底湖ではないことを物語っている。


「ここからが本当の試練だな」


 俺は地底湖に向かい、一歩を踏み出した。

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