表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/74

第71話 ドラゴンスレイヤー

 

 俺たちはチェルシーの屋敷の前に立っていた。

 呼び鈴を鳴らすと、しばらくして執事が現れ、屋敷の中へと案内される。


 チェルシーは軽快に話しながら扉を開け、部屋に入ってきた。


「さて、どこかのじゃじゃ馬娘が、またあたいを訪ねてきたよ」


 彼女の視線が俺に向けられると、深いため息をついた。


「はぁ~、じゃじゃ馬娘だけかと思ったら、バンダナまでいるじゃないか。お前さん、カナベルの叙爵式に行ったきり、一か月もご無沙汰じゃないか。まるで紐の切れた凧みたいだね」


 俺は少し気まずそうに笑うが、すぐにユリアスが前に出た。


「チェルシー様、申し訳ありません。これには訳があります」


 ユリアスはこれまでの経緯を簡潔に説明する。チェルシーは話を聞きながら腕を組み、思案深げに頷いた。


「ふーん、あたいがバンダナのことを話しておいて正解だったみたいだね。お前さんたちだけじゃ、エアリアルワイバーンには勝てなかっただろうし」


「はい。それでバンダナさんを巻き込んでしまいました」


 チェルシーは少し考え込んだ後、問いかける。


「それで、エーテル銀は手に入ったのかい?」


「はい、ここにあります」


 ユリアスはバッグからエーテル銀が入った瓶を3本取り出し、テーブルに並べた。チェルシーは瓶を手に取ると、その左目が一瞬赤く光った。


「本物だね。第一段階はクリアだ。これで、あいつらと肩を並べることができた」


 ユリアスは静かに頷き、安堵の表情を浮かべる。しかし、次の瞬間、チェルシーが俺の方を見て驚きの声を上げた。


「バンダナ、お前さん、称号を手に入れてるじゃないか!」


「称号?」


 俺が首を傾げると、チェルシーは呆れたように肩をすくめる。


「はぁ~、その様子じゃ、またステータスを確認してないんだね。相変わらずだ。お前さん、『ドラゴンスレイヤー』の称号を手に入れてるよ」


「えええ!」


 俺は驚きの声を上げた。


「なぜ、ドラゴンスレイヤーの称号が……」


 俺が戸惑いながら尋ねると、チェルシーは肩をすくめて笑う。


「そりゃ、上位種のワイバーンを数体倒すか、ドラゴンを討伐すれば得られる称号だって聞いたことがあるねぇ。しかも、ユリアスたちにはついていない。つまり、お前さんだけがとんでもないヤツだって証明されたわけさ」


 チェルシーは笑いながら言うが、その言葉の重みに俺は少し困惑する。そんな俺をよそに、ユリアスが真剣な表情で話を切り出した。


「チェルシー様。残りの素材、ムーンストーン、霊樹の樹液、魔素の核、愚者の金粉はどこで手に入るのでしょうか?」


 チェルシーは少し考え込み、冷静に答える。


「ムーンストーンは王都で手に入る。ただし、誰でも手に入れられるものじゃないよ。まぁ、ユリアスなら手に入れられなくもない」


「それは本当ですか?」


 ユリアスが食い下がるように尋ねると、チェルシーは静かに頷いた。


「ただし、辛い道のりだよ。王宮の奥には聖なる教会があるのは知ってるだろう。そこには満月の光しか通さない特別な部屋がある。その部屋で、王家の血を引く者だけがムーンストーンを手にすることができる」


「わかりました。私がやります」


 ユリアスは即答する。チェルシーはその真剣な表情を見て、さらに説明を続けた。


「ただし、生半可な覚悟では手に入らない。その部屋は暗く、音も聞こえない。何十日も満月の光が差し込むのを待ち続けなければならないんだ。満月がない日は、ずっと暗闇の中さ。それに耐えられるかい?」


「きっと耐えてみせます」


 ユリアスの瞳は真剣そのもので、その覚悟が伝わってくる。チェルシーは満足そうに頷き、言葉を続けた。


「うん、いい顔になったじゃないか。元気だけが取り柄のじゃじゃ馬娘は卒業したようだね」


「はい! バンダナさんと一緒にエアリアルワイバーンと戦った経験が、私を変えました。全てはバンダナさんのお陰です」


 ユリアスは熱いまなざしを俺に向ける。その視線を受け止めると、何とも言えない気恥ずかしさが込み上げてくる。そんな様子を見たチェルシーが、呆れたようにため息をついた。


「バンダナ、お前さんって男は、ほんとに……はぁ~」


 チェルシーの表情には、呆れと感嘆が入り混じっていた。

もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。

応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。

ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。

作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ