第6話 宿屋「木漏れ日」
俺は独り言を漏らしながら、ぐったりと座り込んだ。
すると、カナベルが手に小さな小瓶を持って近づいてきた。
「ほら、これを飲め。ポーションだ。軽い傷や体力が回復するぞ」
「おお、ありがとう! 助かるよ」
俺は腰に手を当てて、小瓶の中身を一気に飲み干した。爽やかな味が口の中に広がる。まるでハーブティーのようだ。
「うおっ、意外とうまいな!」
「ははは、だろう? これは効果が一番低いポーションだから味付けもできるんだ。だが、効果が高いギガポーションになると味どころじゃなくて、かなり苦いらしいぞ」
ポーションの効果は確かだった。身体の疲労がじわじわと和らぎ、力がみるみる回復していくのが感じられる。
「助かったよ、ありがとう」
「気にするな。それより、これを持っていけ」
そう言ってカナベルが差し出したのは一枚の地図だった。
「この街の地図だ。宿を探しているなら、ここにある『木漏れ日』がオススメだ」
地図を受け取りながら、俺は軽く頭を下げた。
「サンキュー。助かるよ」
「さんきゅー?」
カナベルが首を傾げる。
「ああ、ありがとうって意味だよ。俺の世界の言葉さ」
「ほう、異世界語か。面白いな」
エドガーとカナベルに見送られながら、俺は地図を片手に宿屋「木漏れ日」へと向かう。
カナベルに紹介してもらった宿屋に着くと、木製の扉を引いて中に入った。
すると、中から元気いっぱいの声が響いてきた。
「は~い、いらっしゃ~い!」
若い女性が笑顔でカウンターの向こうから顔を出す。
「お客様、宿泊ですか? それともお食事だけ?」
「カナベルさんの紹介で来ました。宿泊だ」
「それじゃ、宿泊プランの説明をするわね。素泊まりは銀貨3枚、朝夕の食事付きで銀貨5枚、1か月泊まるなら金貨1枚よ」
心の中で軽く計算する。
銀貨1枚が1000円程度だから、素泊まりは3000円、食事付きでも5000円か。
食事付き1か月で金貨1枚が10万円相当だから、かなりお得かな。
「それじゃあ、1か月お願いするよ」
「ありがとう! 女将さん~、1か月宿泊の飯付きでお願い!」
奥から恰幅の良い女性が現れ、受付カウンターへとやってきた。
「うちは前払いが基本だよ。それと、料理の腕前は自信があるから楽しみにしておいで。」
「それはありがたい」
金貨1枚を手渡すと、若い女性が「こっちよ~」と微笑みながら案内を始めた。
「私はシルキー。この宿で受付を担当しているの。一か月よろしくね」
「俺はバンダナ。こちらこそよろしく」
軽く挨拶を交わした後、シルキーは俺を部屋へ案内してくれた。
部屋の扉を開けると、想像以上に広々とした空間が広がっていた。
「うわっ、結構広いな…! 思ったよりずっと快適そうだ」
「でしょ。それに清掃も毎日しているから、いつもピカピカよ」
部屋の中には木製の大きなベッド、テーブル、椅子、そして窓際には簡素ながらも清潔なカーテンがかかっている。家具の配置にも余裕があり、息苦しさは全くない。
「気に入ったみたいね。それじゃ、何か困ったことがあれば、いつでも声をかけてね」
「ありがとう。助かるよ」
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