第59話 最深部到達とボス戦の準備
見事なフォーメーションだったが、どこか違和感を覚えた。
魔法の詠唱が長く、発動までのタイムラグが大きい。
そして、『瞬地』の移動速度も、思ったほど鋭くない。
それぞれの動きに、まだ改善の余地があるかもしれない。考え込んでいると、レオニクスが話しかけてきた。
「どうだった? 俺たちの戦いは?」
「いい感じだ。それぞれのジョブを活かした戦い方だな」
「満足いったようだな。さあ、バンダナ。次はお前の実力が見たい」
俺は静かに頷く。それを見たレオニクスは、再び通路の奥へ向かい、先ほどと同じようにオークチーフを連れて戻ってきた。ただ、今回は様子が違う。
「悪い、三体来た。みんな、援護を頼む……って、バンダナ?」
俺はその言葉に首を振り、ゆっくりと前に出た。
「レオニクス、俺一人で十分だ」
「は?」
彼が返事をする間もなく、俺は詠唱もなく呪文を放つ。
「『メガ・サンダーストーム』」
雷鳴が轟き、空から降り注いだ電撃が地を這い、オークチーフたちを貫く。まるで雷神が地上に降り立ったかのように、稲妻が地面を焦がし、オークチーフたちの動きを封じた。
すかさず、俺は両脇の剣を抜く。
「『瞬地』、『疾風連撃斬』」
次の瞬間——俺の姿は残像すら残さず疾走し、剣閃が閃光のようにオークチーフたちを刻む。
鋼が肉を裂き、血飛沫が舞う。
一撃ごとに敵の巨体が揺らぎ、そして——最後の一体が膝を折ると同時に、静寂が訪れる。
オークチーフたちは、全て沈黙した。
「……マジかよ。速すぎるだろ」
レオニクスが驚愕の表情で声を漏らす。
「おい、俺の瞬地より断然早い。どうやった?」
「ちょっと、私が先よ! 無詠唱で、あの威力? そんなの聞いたことない!」
レイアードとダリアナが矢継ぎ早に詰め寄ってくる。
興奮しきった二人を、レオニクスが手を挙げて制した。
「おい、落ち着け。バンダナにも聞きたいことがあるだろうが、順番だ」
その場が静かになったのを確認し、俺は少し笑みを浮かべた。
「焦るなよ。コツを教えてやる。ただし、練習は必要だぞ」
そう言って、俺は戦技と魔法を効果的に使うための秘訣を、彼らに少しずつ教え始めた。
フォーメーションを確認しながら、俺たちは無事に最深部へたどり着くことができた。
道中では、
・オークチーフの上位種「ジェネラルオーク」
・俊敏な「バトルウルフ」
・猛毒と鉄壁の防御力を持つ「アーマースコーピオン」
・連携して襲いかかる「スウォームコンバット」
など、厄介な敵が次々と現れたが、俺たちは力を合わせて討伐を成し遂げた。
一息ついていると、レオニクスが話しかけてくる。
「バンダナがいてくれて、本当に助かった。特にスウォームコンバットの群れ攻撃には手を焼くところだった。ダリアナの広範囲魔法だけでは厳しかったかもしれないな」
「いや、そんなことはないさ。ダリアナの魔法にエリナスの支援が組み合わさっていれば、十分対応できたと思うよ」
「確かに、エリナスの支援があれば何とかできたかもしれない。だが、それでもお前がいて助かったのは事実だ」
レオニクスの真剣な言葉に、俺は少し照れくささを感じた。
彼は仲間たちの方を見渡し、声を上げる。
「みんな、聞いてくれ。ついに最深部に到達した。ここはボスエリアだ」
「ボス戦……?」
俺が問いかけると、レオニクスは軽く頷いた。
「そうだ、バンダナにはまだ話していなかったな。このダンジョンのボスは『輝晶獣 ブルーワイバーン』。竜系の魔獣で、『エーテル銀』という希少な素材を稀に落とす。詳細は明日伝えるから、今夜はここで休み、明日ボス戦に挑む」
俺たちは、他の冒険者たちが休んでいる場所から少し離れた静かなエリアにテントを張り、それぞれ眠りにつく準備を進めた。
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