第58話 パーティープレイ
テントから出ると、すでにレオニクスたちは片付けを終えかけていた。
レオニクスが俺に気づき、気さくに声をかける。
「よく眠れたか?」
「ああ、おかげでな」
「準備ができたら、すぐ出るぞ」
俺も手早くテントを片付け、レオニクスたちのもとへ向かう。
「さて、まずは自己紹介をしようじゃないか」
レオニクスが腕を組みながら言った。
「リーダーのレオニクスだ。ジュブは騎士で盾役を務める」
次に、細身の女性が微笑みながら名乗る。
「私はエリナス。治癒士で支援よ。よろしくね」
続いて、大柄な男性が頷きながら口を開く。
「俺はレイアード。シーフだ。中衛を担当する」
最後に、長いローブをまとった女性が優雅に一礼した。
「私はダリアナよ。魔術師なので、魔法は任せてね」
俺も軽く頷いて応じる。
「俺はバンダナ。グラングリオンの冒険者でBランクだ。剣と魔法を扱え、中衛役をやる」
その言葉に、レイアードが興味を示す。
「ジョブは?」
「すまない。訳があって、ジョブは言えない……」
レイアードは一瞬驚いたが、すぐに肩をすくめる。
「そうか。まあ、みんなそれぞれ事情があるからな」
レオニクスが笑顔で場を和ませる。
「よし、フォーメーションの確認をしよう。万が一のことを考えて、まずはこの階の階段付近で試してみる。問題があれば、魔獣が追ってこれない上の階に退くぞ」
レオニクスはそう言うと、奥の洞窟へ進んでいった。
しばらくして、彼はグレートオークの上位種、オークチーフを二体連れて戻ってくる。
「いくぜ!『挑発』、『 鉄壁』」
レオニクスが戦技『挑発』を放つと、オークチーフたちの目が鋭く光る。
次の瞬間、彼は盾を構えながら戦技『鉄壁』を発動。全身から放たれる気迫は、まるで動かざる城壁のようだった。
「砕けぬ壁よ、我の周囲に築かれよ! 『メガ・プロテクト』」
エリナスが詠唱を終えると、神聖な光が降り注ぎ、レオニクスの防御をさらに高める。
その時、オークチーフの二体が同時にレオニクスに斧で攻撃するが、レオニクスの鉄壁の防御により攻撃は弾じかれ、オークチーフたちが態勢を崩す。
「『瞬地』!もらったぜ『黒閃突』」
レイアードの姿が一瞬掻き消えたかと思うと、オークチーフの目の前に現れ、鋭い突きを繰り出す。
短剣の刃が心臓を抉り、オークチーフの巨体が痙攣するように震え、息絶えた。
刹那、レイアードは素早く間合いを取り直し、元の位置へ戻る。
「灼熱の業火よ、敵を焼き尽くす玉となれ! 『メガ・ファイアボール』」
ダリアナが詠唱を終えると、巨大な火球がもう一体のオークチーフに直撃した。
轟音とともに爆炎が炸裂し、オークチーフの巨体が揺らぐ。皮膚が焼け焦げ、断末魔の咆哮が響く。
「とどめだ。『大地斬』」
レオニクスの戦技が大地を震わせるような勢いで振り下ろされる。
鋼の刃がオークチーフの胴を斜めに切り裂き、巨体がゆっくりと崩れ落ちた。
――戦闘終了
彼らの戦いぶりを目の当たりにした俺は、自然と感嘆の息を漏らしていた。
レオニクスの鉄壁の防御、エリナスの支援魔法、レイアードの鋭い暗殺技、ダリアナの圧倒的な魔法攻撃――
それぞれが役割を完璧にこなし、隙のない戦闘を展開していた。
「すごいな……」
思わず呟くと、レオニクスがニヤリと笑う。
「さて、次はお前の番だな」
彼の言葉に、俺は剣の柄を握り直した。
――俺の実力を見せる番だ。
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