表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/100

第56話 迷宮への挑戦


 馬車に揺られ、途中で数回のキャンプを挟み、ようやく三日目の朝、『蒼輝の迷宮』の入り口に到着した。


 同じ馬車に乗っていた冒険者によると、これでもかなり早く着いたほうらしい。


 俺は馬車を降り、迷宮前にある受付の建物へ向かい、迷宮の入場料を聞いて、思わず顔をしかめた。


「金貨三枚か……高いな」


 受付の男は慣れた様子で笑いながら言う。


「まぁ、ここはBランクダンジョンだからな。それに、このダンジョンは一攫千金を夢見る奴らが多い。お前はソロみたいだし、気を抜くなよ。ここじゃ気の緩みが即、命取りになるからな」


 忠告を受け、俺は改めてこのダンジョンの危険さを実感する。


「わかった。忠告、ありがとう」


 金貨三枚を支払い、受付を済ませる。建物を出ると、目の前に迷宮の入口が広がっていた。


 荷物を確認し、装備や魔法道具に不足がないことを確かめてから、『蒼輝の迷宮』へと足を踏み入れる。


 中に入ると、その美しさに思わず息を呑んだ。


 薄暗い空間に、蒼白い光が神秘的に広がっている。壁や床は青く輝く鉱石で覆われており、まるで夜空の星が地上に降りてきたかのようだった。


「すげぇな……」


 目の前の光景にしばし見入った後、地図捜索を使用する。


 このスキルのおかげで、迷宮全体の細部までは分からないが、大まかな構造や現在地を把握できる。


「よし、これなら進めそうだ」


 自信を胸に、俺はさらに奥へと足を進めた。


 しばらく進んだところで、前方から魔獣の気配を感じる。


 現れたのは、グレートオーク二体とトロール三体のグループ。


「こんな序盤でこれかよ……まぁいい、試し撃ちだ!」


 俺は構えを取り、詠唱を開始する。


「メガ・サンダーストーム!」


 次の瞬間、蒼白い稲妻が迷宮内を駆け巡る。


 轟音とともに雷が降り注ぎ、魔獣たちは咆哮を上げながら痙攣し、蒸し焼きになっていく。


 グレートオークの一体は燃え尽きる寸前に膝をつき、もう一体はそのまま後方に吹き飛ばされた。


 トロールたちは耐久力があるが、それでも一瞬で黒焦げになり、崩れ落ちていく。


 やがて、静寂が戻った。


「……威力が上がってる?」


 明らかに、魔法の威力が以前より高い。


 その原因を考えていると、ふとヨルダンの言葉を思い出す。


 「『高い魔素伝導性を兼ね備えた防具』……そういうことか」


 確かに、魔素が身体を通っていく感覚が、以前よりも滑らかで自然だ。


 防具の力を実感しながら、俺は気を引き締め、さらに地下へと降りていく。


「シュッ!」


 壁から何かが勢いよく発射され、空気を切り裂く音がした。


「また罠か。毒矢ね」


 俺は冷静に矢が放たれた方向を確認する。


 先ほど石を投げて反応を引き起こした床がトリガーだったようだ。


「俺は鑑定スキルがあるから回避できるけど、他の奴らはどうやって突破してるんだ?」


 迷宮内を歩きながら、ふとそんなことを考える。


 罠や仕掛けの種類は実に多彩で、毒矢以外にも落とし穴や爆発系のトラップまであった。


 それらを回避しつつ、時折襲ってくる魔獣を倒しながら、最短ルートを進んでいく。


「確かに、魔獣が以前よりも強い気がする。でも――問題ない」


『ものまね』スキルのおかげだ。


 このユニークスキルは、魔法や戦技を模倣して使用できる特性を持つ。そのため、魔獣相手にも余計な体力や魔素を消耗せずに対処できる。


「改めて思うけど、『ものまね』は本当に万能だな……」


 途中、他の冒険者たちに何度か遭遇した。


 彼らは皆パーティーを組み、それぞれの役割を分担しながら迷宮に挑んでいる。


「やっぱり、パーティープレイっていいよな……」


 VR・MMORPGで遊んでいた頃の記憶がふと蘇る。


 あの頃は、俺も仲間たちと協力して戦っていた。


 だが今の俺は、ソロプレイ。そして、ジョブは『ものまね士』という変わり種だ。


「他の冒険者たちから見たら、俺のジョブってどう思われてるんだろうな……」


 そんな考えが一瞬頭をよぎったが、すぐに振り払う。


 ここで気を抜くのは命取りだ。


 そのまま慎重に進み続け、ついに地下五階に到達する。


 この階層はセーフティーエリアとなっており、魔獣や罠の心配がない。


 エリア内にはすでに多くの冒険者が腰を落ち着け、空いたスペースにテントを張ったり、焚き火を囲んで談笑しながら食事をとっていた。


 俺も周囲を見回し、空いているスペースを見つけて手早くテントを設営する。


 そして、ようやく安堵の息をついた。


「さて、休憩するか」


 周囲の賑わいを背に、俺は少しだけ肩の力を抜いた。


もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。

応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。

ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。

作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ