第55話 冒険者ギルドでの特別依頼
翌朝。
宿の食堂で朝食を済ませた俺たちは、宿の前に立っていた。
「流石に疲れ切っていて、昨日は礼を言えなかった。バンダナ、いろいろと助けてくれて本当にありがとう」
カナベルが真剣な表情で、深く頭を下げてくる。
「カナベル男爵、お疲れさん」
俺が笑いながらそう言うと、カナベルは顔をしかめた。
「おい、『カナベル男爵』はやめろ。なんかくすぐったい」
「ははは、それなら次は『カナベル様』って呼ぼうか?」
「やめろ、余計に落ち着かねぇ!」
冗談混じりのやり取りに、俺たちは声を上げて笑い合った。
やがて、カナベルがふたたび真面目な顔つきになって、俺に尋ねてくる。
「ところで、俺はこれからグラングリオンに戻るが、バンダナはどうするんだ?」
「正直、何も考えてなかったが……この街に残って、もっといろんなものを見て回りたいと思う」
俺の言葉に、カナベルは納得したように頷いた。
「そうか。それもいいな。俺はグラングリオンにいるから、もし何かあったら遠慮なく頼ってくれよ」
「ああ、そのつもりだよ」
俺たちはしっかりと握手を交わした。
カナベルは馬車に乗り込むと、一度だけ振り返り、軽く手を振って出発していった。
俺はその背中を見送りながら、これからの自分の道を思い描く。
この街で何が待っているのか、それはわからない。
だが、新たな冒険の予感に、胸が高鳴っていた。
取りあえず、冒険者ギルドに向かうことにする。
依頼書の掲示板に目をやると、特別依頼の文字が目に入った。
【B級ダンジョン 蒼輝の迷宮 エーテル銀を求む】
報酬:白銀貨十五枚。
白銀貨十五枚? 一体どんな依頼なんだ。
気になったので、受付に聞いてみることにした。
「特別依頼って何だ?」
受付のカウンターにいた獣人の女性が顔を上げる。
「はい、特別依頼とは魔導省からの依頼になります。受領条件はCランク以上のパーティー、またはBランクの冒険者が対象です。なお、依頼は複数名で受けることも可能です」
「じゃあ、俺も受ける」
俺の言葉に、獣人の女性は驚いたような顔でこちらを見る。
「受付担当していますリエナです。すみませんが、こちらのギルドをご利用いただくのは初めてですよね? 失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「俺はBランクのバンダナだ」
「それでは、ギルドカードを確認させていただけますか?」
俺がカードを差し出すと、リエナは一瞬だけ目を見開いた。
どうやら、俺が若いので本当にBランクか疑っていたらしい。
「失礼しました。グラングリオンの冒険者ギルドに登録されているんですね。手続きいたしますので、少々お待ちください」
リエナが奥へと下がり、手続きを始めた。その間、背後から声が聞こえた。
「へぇ~、若いのにBランクか」
振り返ると、肩幅の広い男がにやりと笑って立っていた。周囲には数人の仲間がいる。
「俺たちはBランクパーティーの『赤き翼』だ。どうだ、一緒に組んで『蒼輝の迷宮』に挑まないか?」
「悪いな。そういうのは間に合ってる」
「そうか、残念だな。邪魔したな」
男はあっさりと引き下がり、仲間たちと共にギルドを後にした。
間もなく、リエナが戻ってきて手続きを終える。
「お待たせしました。特別依頼を受領しましたので、こちらが詳細です」
リエナから依頼の書類を受け取り、俺はギルドを出た。
装備を確認し、準備を整えた上で――俺は『蒼輝の迷宮』へと向かうことにした。
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