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第54話 王宮での叙爵式


 俺はヨルダンに言われるまま、腰から二本の剣を抜き取り、差し出した。


「ほう、二刀流か」


 ヨルダンが目を細め、興味深そうに呟く。


「ああ、俺は二刀流だからな」


 ヨルダンはにやりと笑いながら、一本目の剣を鞘から抜き、じっくりと眺めた。


「天雷の剣だな。いい剣だ。それに扱い方も上手いし、手入れも怠ってない」


 そう言いながら、刃先や柄の部分を細かく確認していく。

 そして、もう一本の剣を手に取ると、驚きがその表情に浮かんだ。


「ほぅ……天光の剣か。これは珍しい。まだ手に入れたばかりのようだな」


 俺は軽く頷き、少し誇らしい気持ちになる。

 ヨルダンは二本の剣を眺めたあと、手招きしてきた。


「こっちへ来い。ここに立ってじっとしていろ」


 そう言って、俺の手のひらや腕、胴回り、脚を丁寧に調べ始めた。

 その手つきには一切の迷いがなく、長年の経験を感じさせる。


「ふむ、日頃からの鍛錬が伺えるな。いい体だ。だが、防具がいけねぇ。手入れはされてるが、剣と釣り合っていない。それに、そろそろ限界だ」


 その指摘に、俺は心の中で思わず頷いていた。

 たしかに、最近は防具の傷みが目立っていた。


「おい、お前、魔法を使うな?」

「ああ、使える。それに、魔法剣もできる」

「ふむ、それで属性剣か。なるほどな……よし、お前に合う防具を見繕ってやる」


 そう言うと、ヨルダンは採寸を始め、手際よく体のサイズを測っていく。

 やがて奥へ姿を消し、しばらくして何点かの防具を抱えて戻ってきた。


「これだ。このライトアーマーはミスリルと龍骨を素材にしている。お前は魔法を使うからな、物理的な耐久性と高い魔素伝導性を兼ね備えた防具が必要だ」


 言われるままに防具を試着すると、その性能に驚かされた。

 軽量なのに驚くほど頑丈で、身体に吸い付くようにフィットする。


「すごいな……動きやすいし、軽い。それに、身体に馴染む感じがする」


「そうだろ、そうだろ。何せ、ワシが作った防具だからな」


 まるでゲームのような世界だが、ミスリルや龍骨といった素材の話を聞いて、思わず値段が気になった。


「で、いくらだ?」

「そうだな。マント込みで白銀貨三枚――おおよそ三千万円相当だ」

「安いな!」


 思わずカナベルが声を上げる。

 たしかに、その素材を考えれば破格とも言える価格だった。


 俺は迷わず、防具代をヨルダンに手渡した。


「ふむ、即決か。気に入ったぞ」


 ヨルダンが満足そうに笑う。


「装備のことなら、またワシを頼れ。良い物を用意してやるからな」


「ありがとう、ヨルダン」


 その様子を見ていたカナベルは、ヤレヤレという顔で、ヨルダンにマント代を支払っていた。




 そして翌日、夕方。


 宿を出ると、立派な馬車がすでに宿の前に停まっていた。

 どうやら、これで王宮へ向かうらしい。


「さすがにデカいな……」


 王宮に到着し、目の前に広がるその巨大な建造物を前に、俺は圧倒される。


 エドワード公爵の屋敷も相当な大きさだったが、それでもこの王宮の前では霞んで見える。

 公爵邸の五倍はあろうかという規模で、門から本館の建物までの距離も果てしなく遠かった。


 案内人に導かれ、広大な敷地を進み、ようやく控室に通される。

 そこでしばらく待機することになった。


「緊張してるか?」


 隣に座るカナベルが声をかけてくる。


「まぁ、な。これだけの規模の式に出るのは初めてだからな」


 こういった場は慣れていない。

 落ち着かない気持ちを隠しきれなかった。


 しばらくして案内役が現れ、いよいよ謁見の間へと向かうことになる。


 壮大なファンファーレが鳴り響く中、スチュワート国王が高座に現れた。


「スチュワート・グランバールの名において、カナベル・ベルサール準男爵を男爵とする」


 王の荘厳な声が広間に響く。

 カナベルは厳かな表情で前へ進み、男爵の証を受け取った。


 勲章、証書、紋章入りのマント――次々と格式ある品が手渡されていく。

 俺の役目は、それらを受け取り、運び、式の進行をサポートすることだった。


 移動や受け渡しをそつなくこなし、式は滞りなく進んだ。


 カナベルが堂々と式を終える姿を見て、胸にこみ上げるものがあった。


 宿へ戻る頃には、俺たちは完全に疲れ切っていた。


 部屋に戻るなり、それぞれ無言で寝床へ倒れ込んだ。


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