表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/100

第53話 装備屋・ヨルダンの店

 

 王都グランバールに到着すると、その壮麗さに圧倒された。


「凄いな……グラングリオンの街も大きかったけど、ここグランバールは別格だな」

「だろ? ここで手に入らない物はないって言われてるくらいだ」


 カナベルが自信満々に笑う。


 石畳の道、整然と並ぶ豪奢な建物、行き交う人々――どれもが活気に満ち、洗練されている。

 街のスケールと雰囲気に見惚れていると、カナベルが俺の袖を引いた。


「さ、着いたぞ。ここが宿だ」


 目の前にそびえる建物は、宿というよりもはや屋敷に近い風格だった。

 その佇まいに圧倒され、思わずカナベルに尋ねる。


「……ここ、高くないか?」


「ああ、高いぞ。食事付きで一泊、大銀貨三枚――ざっと三万円ってとこだな」


「はは……宿屋『木漏れ日』の六倍かよ……」


「まあ、貴族御用達だからな。それに、冒険者でもBランク以上じゃないと泊まれない。だが、それだけの価値はあるぞ。ここには“風呂”があるんだ」


「風呂……!? マジか!」


 この世界に来てからというもの、水浴びで済ませるのが常だった俺にとって、その言葉はまさに福音だった。


 意気揚々と宿へ入り、風呂と食事を存分に堪能する。


「ふぅ~……いい風呂だった。それに、食事も抜群に旨いな」


「気に入ってもらえてよかったよ」


 カナベルが満足そうに笑い、杯を傾ける。


「さて、叙爵式は明後日だけどな。明日は行きつけの装備屋に付き合ってくれ。式で使うマントを新調するんだ。バンダナの分も一緒に買うから、金はいらん」


「そりゃ助かる。ありがとな」


 カナベルの気遣いに感謝しながら、俺たちは宿での夜をゆったりと過ごした。




 翌朝。


「着いたぞ。ここが装備屋だ」


 カナベルが立ち止まり、堂々とした古風な建物を指差す。


「俺の装備もここで揃えたが、一つだけ注意点がある」


「注意点?」


 少し身構えて尋ねると、カナベルが真剣な表情で口を開いた。


「ああ。この店の店主はドワーフでな。腕は確かなんだが、職人気質で口が悪い。こだわりも強いから、気に入らない相手には物を売らないんだ。俺も近衛兵副隊長になって、ようやく買わせてもらえたくらいだ。今回はマントだから大丈夫だと思うが……」


「そりゃまた、ずいぶんと癖のある店主だな……」


 そんな話を聞かされれば、自然と警戒心も高まる。

 俺はカナベルの後ろをついていき、様子を伺いながら店に入った。


 店内は質実剛健な作りで、受付の机と奥へ続く扉があるだけ。

 カナベルが受付の呼び鈴を鳴らすと、奥の扉がガチャリと開き、立派な髭をたくわえたドワーフが姿を現した。


「あいよ……ん? おお、カナベルじゃねえか」


「久しぶりだな、ヨルダン」


「噂は聞いてるぜ。男爵になるんだってな。正装用のマントが欲しいんだろ? こっちへ来な」


 ぶっきらぼうだが、手際の良い動きで受付の机を跳ね上げると、ヨルダンは奥へ案内した。

 俺はカナベルの後に続きながら、少し緊張して足を踏み入れた。


 奥の部屋に入ると、目の前の光景に息を呑んだ。


 壁一面に陳列された剣や盾、その他にも多種多様な武器や防具が所狭しと並んでいる。

 それぞれが一点物のような精巧な作りで、ヨルダンの職人としての腕前を物語っていた。


「お前の寸法は控えてあるからな。だいたいこんなもんでいいだろ」


 ヨルダンは手際よく、数点のマントを机の上に広げる。

 カナベルはその中の一つを手に取り、肩に羽織った。


「それで……お前さんは何の用だ?」


 ヨルダンが俺を一瞥し、無骨な声で尋ねる。

 その視線は、まるで品定めでもするかのようだった。


「ヨルダン、彼はBランク冒険者のバンダナだ。俺の付き添いで来たんだが、彼にもマントを頼みたい」


 カナベルがそう言うと、ヨルダンの目が鋭く光った。


 俺の全身をじろじろと眺め、まるで内面まで見透かそうとするような眼差しを向けてくる。


「ふん……面白い奴だな。剣を見せてみろ」


もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。

応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。

ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。

作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ