第51話 冒険者ギルドでの騒動
晩餐会は大成功に終わった。
控室で着替えを済ませ、帰り支度を整えたあと、しばらく休憩していると、エドワード公爵が部屋へ入ってくる。
「チェルシー伯爵、本日はご苦労であった。陛下も大変喜ばれ、祝砲の水花火においては、お褒めの言葉をいただいた。私も鼻が高い」
「そうかい、それはよかったね。やっと肩の荷が降りたよ」
チェルシーはほっとした表情で答え、その声には安堵の色がにじんでいた。
公爵は俺たちの前に立ち、手を差し出して握手を求める。
「そこでだ。君たちには、褒美を授けよう」
「それなら、天光の剣を所望するよ」
「うむ、よかろう」
公爵が執事のスコットに目配せすると、スコットは静かに部屋を出て行き、やがて一本の剣を手に戻ってきた。
チェルシーはスコットから剣を受け取ると、それを俺に差し出す。
「ほら、バンダナ。この天光の剣、全属性強化が付いてるんだ。魔法剣を使うお前さんにはぴったりだろ?」
俺は剣を受け取り、ゆっくりと鞘から抜いた。
清らかで美しいその輝きに、自然と感嘆の息が漏れる。手に馴染む感触も申し分ない。
「気に入ったようだね。希少な剣っていうのは、持つ人間を選ぶもんだって言うからね」
「うん、いい剣だ。ありがとう、チェルシー」
「いいってことさ。あたいだって、お前さんがいてくれたから、ここまで来られたんだから」
こうして晩餐会は無事に終わり、俺は宿に戻って、静かな夜を迎えた。
翌朝、冒険者ギルドに足を運ぶと、チェルシーたちがテーブルで何やら話し込んでいた。どうやら揉めているようだ。
俺は気づかれないように受付へ向かおうとしたが――
「バンダナ、ちょうどいいところに来たね。こっちへおいでよ」
チェルシーに呼び止められ、仕方なくテーブルの席に着く。
「ここにいるみんなとは、一度は顔を合わせているはずだろう?」
そう言われてテーブルを囲む面々を見回し、軽く挨拶を交わす。
「冒険者ギルド長のガッサムだ」
筋骨隆々で、いかにも屈強な男。以前、訓練場の整備でチェルシーと話しているのを見かけたことがある。
「商業ギルド長のオリオンだ」
中年の威圧感ある男。商業ギルドで俺に難問を出してきた張本人だ。
「錬金術ギルド長のカーチスです」
銀髪に深い緑色の瞳を持つ、知性と落ち着きを感じさせる紳士だった。
挨拶が一通り済んだところで、チェルシーが口を開く。
「それじゃあ、本題に入るよ。ずばり、みんなが揉めてる原因は――お前さんのことさ」
「はぁ? 俺が? 一体何をしたっていうんだ? まったく心当たりがないけど」
「やれやれ、本人に自覚がないなんてね」
チェルシーは呆れたように腕を組んだ。
「いいかい。まず、Aランクのゴールデンベアーを討伐して、しかも希少種のきらきら草を単独で持ち帰っただろ? 冒険者ギルドじゃ、お前さんを飛び級でAランクにするかどうか検討中さ。それだけじゃないよ。あんたがカナベルと真剣勝負をして勝ったって噂もあるんだよ」
「いや……それはまあ、心当たりがある」
俺は苦笑しながら頷いた。
この場で揉めている原因が自分だと言われると、なんだか居心地が悪かった。
もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。
応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。
ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。
作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。