表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/100

第44話 ゴールデンベアー

 

「おっ、ここがいい感じかな」


 テントを張るには十分な広さの窪みを見つけ、そこで野宿の準備をする。

 時間も遅いので、朝食の残り物で簡単に食事を済ませると、早めに眠りについた。


「ぐふぉっ……」


 夜中、低く唸るような獣の声で目が覚めた。


 テントの中からそっと外の様子を伺うと、川のほとりで巨大な熊のような魔獣が水を飲んでいる。


「……あれが、グレートベアーか?」


 鑑定を唱えると、視界に魔獣の情報が浮かび上がった。


「いや、『ゴールデンベアー』……?」


 その名の通り、首回りが金色の毛で覆われ、まるで黄金のマフラーを巻いているように見える。

  まずいな……あのサイズに加えて、並の熊とは違うオーラを感じる。


 慎重に装備を整え、そっとテントから出て剣を構える。

 しかし、魔獣はすでにこちらの気配を察知していた。


「ぐおっ!!」


 突如、轟くような咆哮とともに、ゴールデンベアーが猛スピードで突進してきた。


「速い……くそっ!」


 その巨体からは想像もつかない俊敏さに驚きつつも、間一髪でサイドステップして回避する。だが、ゴールデンベアーは即座に立ち上がり、鋭い爪を振りかざして連続攻撃を繰り出してきた。


「っ、こいつ……力も速さも桁違いだ……!」


 爪と剣が激しくぶつかり合い、火花が散る。


「ぐおおおー!!」


 雄叫びとともに、ゴールデンベアーが両手を高く掲げた瞬間――空気が裂けるような音が響き、『真空刃』が飛んできた。


「っ!」


 咄嗟に両手の剣で防御するが、衝撃で後方へ吹き飛ばされる。


「ぐっ……いてて……」


 地面に背中を打ちつけながらも、すぐに起き上がる。巨体に似合わない俊敏さ、そして的確な攻撃。


「くそ……カナベルとの戦いで二刀流を覚えてなかったら、今頃やられてたな……」


 汗を拭いながら体勢を整え、剣を構え直す。


「よし、やるぞ……!」


 再びゴールデンベアーに向き直り、気迫を込めて前進を開始した――。


「うおぉ――『魔法剣・メガ・サンダー』!!」


 全身に気合を込め、剣に雷属性の魔法を纏わせる。そして、渾身の力で剣を振り抜いた。


 雷が剣先から弾け飛び、閃光とともにゴールデンベアーへと襲いかかる。

 魔獣は巨大な爪で受け止めようとしたが、電流が全身を駆け巡り、その動きを鈍らせた。


「この隙を逃すか!」


 すぐさま追撃の一閃を放つ。


「『一閃』」


 剣の一太刀がゴールデンベアーの腹を深々と切り裂き、鮮血が飛び散る。


「ぐおあお……!」


 苦しげな咆哮を上げたゴールデンベアーは後退するが、次の瞬間――


 両手を高く掲げると、首元の金色の毛が青く輝き始めた。


「……何か来る!」


 直感が警鐘を鳴らす。

 剣を構え直し、身を低くして備える。


 次の瞬間、ゴールデンベアーの前脚から氷の刃が放たれる――その速度は予想以上に速い。


「『アイスカッター』か! なら……『魔法剣・メガ・ファイア』」


 反射的に剣に火属性をまとわせ、迫り来る氷の刃を一刀両断する。

 氷と炎がぶつかり合い、爆発的な蒸気が立ち込める。


 視界が遮られる中、ゴールデンベアーの動きが一瞬止まるのが見えた。


「今度はこっちの番だ!」


 すかさず詠唱を始める。


「『メガ・アイスストーム』」


 極寒の竜巻が生まれ、ゴールデンベアーを飲み込む。

 凍てつく風がその体温を急激に奪い、巨体の動きを鈍らせた。


「よし、もう一度……『ものまね・メガ・アイスストーム』」


 再び同じ魔法を再現し、極寒の嵐を叩きつける。


 立て続けの攻撃に、ゴールデンベアーの動きが明らかに鈍り始める。

 さらにもう一撃、もう一撃と容赦なく浴びせる――。


 ついに、ゴールデンベアーの全身が霜に包まれ、氷像のように完全に凍りついた。


「はぁ……か、勝った……」


 俺は剣を地面に突き立て、肩で息をしながら呼吸を整える。


 月光に照らされ、静かに佇む氷の魔獣が目の前にそびえていた――


もしよろしければブックマークへの登録、応援をよろしくお願いします。

応援は下にある『☆☆☆☆☆』より押すことで可能です。

ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。

作者のモチベーションになりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ