第40話 ランク上げろ
数日間、宿屋でゆっくり休み、気分転換も兼ねて久しぶりに冒険者ギルドへ足を運んだ。
ギルドの扉を開けると、受付のカトリーナがすぐに俺を見つけ、慌てた様子で声をかけてくる。
「あっ、バンダナさん! やっと来ましたね。すぐこちらに来てください!」
何事かと思いながら受付に向かうと、カトリーナが少し厳しい顔で話を始めた。
「バンダナさん、大変ですよ! C級に昇格したのに、全然依頼を受けていませんよね。このままだとランクが下がる可能性があります!」
「そうなんですか……」
最近、ランクへの執着が薄れてきたし、錬金術ギルドの方にも興味が湧いてきていた。
そんな俺の考えを見抜いたかのように、カトリーナが少し怒った口調で続ける。
「まさか、面倒くさいな~とか思っていませんよね?」
「そ、そんなことはないですよ!」
カトリーナさん、怒ると怖い。仕方がないので、依頼ボードへ向かう。
いくつか目を通した後、素材採取の依頼が目に留まる。
「えーっと……『かがやき草』と『ベアーの肝臓』を納品する依頼、これが良さそうだな」
依頼書をカトリーナに持っていくと、彼女が受付処理をしながら説明を加える。
「はい、承りますね。『かがやき草』は錬金術で使われる素材で、メガ・ポーションの材料にもなるので、規定量以上に採取しても大丈夫です。『ベアーの肝臓』はCランクの『グレートベアー』を討伐する必要があります。バンダナさんの実力なら問題ないと思いますが、くれぐれもお気をつけくださいね」
「了解しました。行ってきます」
依頼書を確認しながら、街の西にある『渓谷の森』を目指して歩き出した。
依頼書に添付されていた地図を参考に移動を始めたが、思った以上に細かい道筋がわかりにくい。
こういう時は、見慣れた地図探索の方が便利だな。
まずは『かがやき草』を目指そう。
「えーと、ここから三日ほど歩いた渓谷を降り、その先にある湖に生息している……だと?」
地図を見ながら呟く。想像以上に遠い場所だ。これは体力も時間もかなり消耗しそうだな。
少し考えたが、いい手を思いついた。
「そうだ、ものまねで『瞬地』を使ってみよう。これなら移動が速くなるし、体力の消耗も抑えられるかもしれない」
試しに発動する。
「『ものまね・瞬地』」
おお、すごい! 風のような速さで移動できる。
景色が一瞬で流れていき、自分が風になったような気分だ。これなら効率的に距離を縮められるな。
しばらく瞬地を繰り返して進むと、予定していた中間地点のキャンプ地に到着した。
日はまだ落ちていないが、初めての外での野宿となる。
キャンプ地には既に馬車が二台と、護衛らしき冒険者パーティーが数名滞在していた。
「結構、大所帯だな……」
周囲を見回し、空いているスペースを見つけて荷物を下ろす。
場所に特に決まりはなさそうだ。
俺は空き地にテントを張り、早めに夕食を準備することにした。
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