第4話 ステータスオープン
「随分と戻るのが早いな。一分と経っていないようだが、何があった?」
その言葉に俺は驚いた。中で感じた時間の流れは、外の世界とは全く違っていたらしい。
「わからないんです……気がついたら、またこの部屋に戻っていたんです。」
公爵は深く頷き、静かに呟く。
「言い伝え通りのようだな……」
そう言うと、側に控えていたスコットに指示を出した。
「スコット、バンダナを部屋に連れて行き、休ませてやれ」
スコットに支えられながら部屋へ戻ると、疲労が一気に押し寄せ、そのままベッドに倒れ込んだ。
深い眠りに落ちる中、不意に声が聞こえた。
「どうやら、うまくいったな」
その声に目を開けると、浮かび上がる水晶のイメージとともにサイモンの姿が脳裏に浮かんだ。
「サ……サイモン?」
「覚えているようだな。短いが重要な話をするぞ。『ステータスオープン』と念じてみろ。それで君の能力が確認できる」
「ステータス……?」
「君にはすでにスキル『鑑定』がある。これを使えば、自分のスキルやジョブがどんなものか理解できるぞ。特に君のジョブ『ものまね士』だが、模倣対象を事前に鑑定することで、効率よく力を引き出せる。忘れるなよ」
「……なるほど」
「それと、余計なトラブルを避けるために、すべてのスキルは隠蔽状態にしてある。他人にはわからないようになっているから安心しろ。……じゃあな、あとは君次第だ」
それだけ言い残すと、サイモンの声は途絶え、静寂が訪れる。次に目を開けると、窓から朝日が差し込んでいた。
俺はベッドから起き上がり、サイモンの言葉を思い出しながら、心の中で呟く。
「ステータスオープン」
すると、目の前に淡い光が現れ、詳細な情報が表示された。名前、ジョブ、スキルの一覧。
「これが……俺の力か」
昨日までとは違う新たな感覚に胸を高鳴らせながら、俺は新たな一日を迎える準備を始めた。
朝食を終えて部屋でくつろいでいると、スコットが扉をノックし、静かに告げる。
「バンダナ様、身支度を整えてください。こちらへご案内いたします」
案内されながら廊下を歩き、エドワード公爵が待つ部屋へと入る。公爵は机の向こう側で微笑みながら俺を迎えた。
「バンダナ、体調はどうだ?」
「お心遣いありがとうございます。おかげさまで落ち着きました」
「それは良かった。安心したぞ」
公爵はゆっくりと立ち上がり、俺の前へ歩み寄る。
「さて、今日で其方は一般市民として解放される。だが、その前に、これらを授けよう」
彼が指差した先には、きらびやかな装備一式が並べられていた。
「これを……俺に?」
「そうだ。この世界で生きる者として最低限の装備だ。役立ててくれ」
俺は深く頭を下げ、お礼を言う。
「エドワード公爵、本当にありがとうございます」
「うむ」
公爵は満足そうに頷き、スコットに視線を送った。
「それでは、次の部屋へ案内してやれ」
部屋を出ると、スコットに連れられ、別の部屋へ。そこではカナベルとエドガーが待っていた。二人とも手に装備を持ちながら笑みを浮かべている。
「バンダナ、お前にこれを着せてやろう」
カナベルが軽装のアーマーを差し出す。
装備を身につけてみると、思った以上に軽く、動きやすい。鏡に映る自分を見ていると、エドガーが手に持っていた剣を俺に渡してきた。
「おい、なかなか似合ってるじゃないか。このライトアーマー、実は高級品だぞ。それに、この剣だって上等な代物だ」
「本当か……」
装備をまじまじと見つめる。ゲームや小説でしか見たことのない装備が、今、自分の手の中にある。異世界に来た実感が、改めて湧き上がってきた。だが、それと同時に、果たしてこれを使いこなせるのかという不安も込み上げてくる。
そんな俺の様子を見たカナベルが笑いながら肩を叩いた。
「そんなに難しく考えるなよ。心配するな、帰ったら俺とエドガーが剣の振り方を教えてやる。俺たちはこう見えてもBランク相当の腕前だぜ」
「そうなんですか。それは心強いです。どうかよろしくお願いします」
俺が丁寧に頭を下げると、カナベルが苦笑する。
「おいおい、そんなに堅くなるな。気楽に行こうぜ。それと、あんまり丁寧すぎると舐められるからな」
「そ、そうか……わかった。気をつけるよ」
その瞬間、カナベルが満足そうに頷き、エドガーも腕を組みながら口元を緩めた。
「よし、その調子だ。これから少しずつ慣れていけ。俺たちがしっかり鍛えてやる」
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