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第36話 査問委員会


 査問委員会の場に立つと、公爵の周りには数名の貴族たちが並び、俺たちの反対側にはトリッジ伯爵とその取り巻きが席についていた。


 エドワード公爵はまず、この度の水花火事件および汚職疑惑について説明し、トリッジ伯爵が主犯の容疑をかけられていることを告げた。


 やがてトリッジ伯爵が証言台に立つと、マグリットが事件の経緯や集めた証拠について詳細に報告する。一通り説明が終わると、公爵が厳しい声で問い詰めた。


「トリッジ伯爵、今述べられた説明に対して異論はあるか?」


 トリッジ伯爵は鼻で笑い、肩をすくめながら答えた。


「異論だと? 私は無罪だ。この場に示された証拠が、すべて私の物だと証明されてはいない。むしろ、この査問委員会を仕組んだのはチェルシー伯爵だろう。不敬罪で裁かれるべきは彼女ではないのか?」


 その言葉に、チェルシーが即座に切り返した。


「往生際が悪いねぇ。これだけの証拠を突きつけられて、まだシラを切るつもりかい? どんだけ面の皮が厚いんだか!」


「証拠、証拠と騒ぐが、それは本当に決定的なものなのか?」


 トリッジ伯爵はふてぶてしく笑うと、椅子に背を預けた。


「では聞こう。この手帳が私の物であると、どうやって証明する? それに、水花火の製作をランバートとかいう男に依頼したという証拠がどこにある?」


 トリッジ伯爵の取り巻きがそれに呼応し、「もっと確かな証拠を示せ!」と野次を飛ばし始める。


 その場の雰囲気がざわつき始めたところで、公爵が厳しい声を張り上げた。


「静粛に!」


 公爵の一言で、場内は再び静けさを取り戻す。トリッジ伯爵とチェルシーの睨み合いが続く中、チェルシーが肩をすくめ、俺に視線を向けた。


「こういうのは、あたいには向いてないんだよ。さあ、バンダナ、お前さんの出番だ」


 チェルシーに促され、俺はゆっくりと前に進み出た。


 全員の視線が俺に集中する中、深呼吸して気持ちを落ち着ける。


「エドワード公爵閣下、そして査問委員会の皆様。この度は、証拠の提示と共に、事件の真相をお伝えする機会をいただき感謝します」


 静寂が支配する中、俺の声が部屋に響き渡る。


「それでは、まず、水花火について証明いたします」


 公爵が頷き、続けるよう促す。


「この水花火の核部分には、錬金術を使用した際に生じる特有の模様、すなわち『錬金術師の指紋』があります。この模様を錬金ギルドに確認した結果、ここにいるランバートが製作したものであることが証明されました。さらに、ランバート本人も製作を認めており、その場所はトリッジ伯爵の屋敷地下室であることを証言しています。この地下室の痕跡も、親衛隊隊長マグリットによって確認されました」


 周囲がざわめく中、俺は言葉を続けた。


「加えて、ランバートはトリッジ伯爵から直接依頼を受け、報酬を条件に製作したことを明言しています」


 トリッジ伯爵は椅子から立ち上がり、声を荒らげた。


「ふん! なかなか面白い作り話だ。だが、これだけでは、この男が私の屋敷に忍び込み、勝手に水花火を製作しただけではないか。私はこの男と会ったことすらない!」


 俺はランバートに目配せした。ランバートは意を決したように立ち上がる。


「失礼ながら、私はトリッジ伯爵に直接会い、水花火の製作を依頼されました。そのきっかけは、私が賭博で多額の借金を抱えていたからです。伯爵から借金返済の提案を受け、取引に応じました」


 ランバートは胸元からペンダントを取り出し、中央のくぼみを押した。


 次の瞬間――


「……水花火を作るのに必要な材料はこちらで用意する。報酬は金貨百枚。やるか、やらないか、選ぶのはお前だ」

「ありがとうございます、伯爵様。」


 場内が静まり返った後、一気にどよめきに包まれる。


 トリッジ伯爵は顔を真っ赤にし、椅子を叩いて叫んだ。


「そ、それは……! 確かに私の声に似ているが、それが私だという証拠にはならない!」


 公爵は冷静にその様子を見つめ、静かな声で問いかけた。


「では、その音声が偽造であるという証拠はあるのか? 実際に審議官の元でこの音声を分析すれば、真偽は明らかになるだろう」


 トリッジ伯爵は反論できず、悔しそうに視線を落とす。


 公爵が俺に向けて静かに促した。


「バンダナ、続けるがよい」


 俺は頷き、次の証拠に話を移した。

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