第33話 汚職を証明
闇の賭博所を出た俺は、スキル【地図捜索】を使い、急いでカナベルたちと合流する。
「バンダナ、無事だったか?」
カナベルが心配そうに声をかけてくる。
「ああ、問題ない」
俺はナデルとのやり取りを簡潔に説明し、賭博所の連中を逃がすよう提案する。
その代わり、帳簿が手に入ること、そしてエルフの男――ランバートを近衛兵厩舎で保護してほしいと頼んだ。
「わかった。それで、お前はどうする?」
「少し別のところをあたってみる。用が済んだら近衛兵厩舎に行くから、そこで落ち合おう」
カナベルたちと別れ、俺はランデルのもとへ向かう。
建物の前には人だかりができており、不穏な空気が漂っていた。
俺は人々をかき分けながら中へ進む。
「なにっ!」
目の前の光景に、思わず声を上げた。
そこでは、親衛隊がランデルを拘束していた。
「バンダナか」
俺に気づいた親衛隊のマグリットが、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「ちょうどいいところに来たな。君は諦めずに犯人を追っていたようだな。君を親衛隊にスカウトしたくなるくらいだ。それで、こいつ――ランデルが犯人で間違いないか?」
マグリットの問いに、俺は一瞬迷ったが、静かに頷く。
「そうか。証言が取れてよかった。それから、君がぶつかった商人についても調べた。君の言う通りだったよ」
「それは良かった。それで、ランデルはこれからどうなる?」
マグリットは少し驚いた表情を浮かべながら答える。
「犯人の心配をするとは、君は本当にお人好しだな。盗まれたバッグは取り戻せたし、中身も無事のようだ。もしこいつが初犯であれば、罰金刑で済む可能性が高い」
一方で、俺の潔白が証明されたのは良かったものの、ランデルが捕まったのは完全に誤算だった。
「……急いで近衛兵厩舎に戻らないと」
俺は心を落ち着かせる間もなく、その場を後にした。
近衛兵厩舎に着くと、カナベルが駆け寄ってくる。
「うまくやったぞ。闇の賭博所の連中をうまく逃がすことができた。最初は逃がしたら帳簿が手に入らないかと心配していたが、ちゃんと入手できた。それだけじゃない。賭博で負けた人たちの借用書も手に入った。これで、多くの人が借金苦から救われるだろう」
「そうか、やったな。それで、帳簿と手帳の金額は一致したのか?」
「ああ、すべて一致した。これで、トリッジ伯爵の汚職を証明できるだろう。近衛兵厩舎の予算を取り戻せそうだ。急いで公爵に報告しに行こう!」
興奮気味のカナベルを手で制止する。
「待て。それだけじゃトリッジ伯爵が水花火の件に関与している証拠にはならない」
「そうだったな……」
カナベルが落ち着きを取り戻したのを確認し、俺は話を続ける。
「保護しているランバートと一緒に話をしよう。たぶん、彼が事件で使われた水花火の製作者だ」
「なに! だから保護しろと言ったのか」
「ああ。トリッジ伯爵に俺たちがランバートを闇の賭博所から連れ出したことが知られれば、彼に危険が及ぶかもしれない。それを防ぐためだ」
「なるほど」
カナベルはようやく状況を理解したようで、俺とともにランバートが保護されている部屋へ向かう。
部屋に入ると、ランバートは椅子に座っていたが、緊張の色を隠せない様子だった。
俺は椅子に腰を下ろし、穏やかな声で言う。
「楽にしてくれ。俺は冒険者のバンダナだ。こっちは近衛兵隊長のカナベル。ランバート、お前は今、俺の奴隷ということになっている。これから質問するが、正直に答えてくれ」
ランバートは少し考えたあと、静かに頷いた。
「よし、それじゃあ始めるぞ」
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