第22話 路地裏の異変と水の魔石の流通
カナベルにチェルシーとの訓練について話すと、彼は感心したように頷いた。
「なるほど、チェルシーの訓練を受けたからこそ、あの動きと回復魔法が使えるのか。納得したよ。それにしても、本当に助かった。最近は予算削減の影響でメガポーションの備蓄が底をついていたからな。君の回復魔法のおかげで大惨事にならずに済んだ」
そう言いながら、カナベルは深々と頭を下げた。
「おいおい、そんなことをされると落ち着かない。俺たちの仲だろ? 気にすんなよ」
冗談めかして返すが、カナベルは真剣な表情を崩さなかった。
「それはそうと、さっきの水花火だが、なぜ爆発した? 本来、水属性の魔石を核に使うから、安全性が高いと聞いているが」
「バンダナの言う通りだ。だが、最近この水花火が暴発する事件が続いている。それで、路地裏に放置されていた花火を持ち帰って調査していたら、突然暴発したというわけだ」
「水花火が不安定化するとはな……。だが、なぜそんなものが路地裏に放置され、爆発する事件が増えている?」
「そこが謎なんだ。大きな爆発音が響く割には、範囲が狭くて被害も少ない。今のところ怪我人も出ていない。犯人が何を目的としているのか、まるで見当がつかない」
二人で考え込むが、手がかりが少なく結論には至らない。
「バンダナ、これ以上考えても埒が明かない。冒険者ギルドに行こう。事情を説明して、君に指名依頼を出す。今回の件、手伝ってくれ」
ここまで話を聞いてしまった以上、断る理由はない。
「ああ、わかった。協力する」
エドガーに事情を説明した後、俺たちは急いで冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドで指名依頼の登録を終えると、カナベルは冷静に次の指示を出してきた。
「登録は終わったようだな。これからは別行動にしよう。俺が動くと目立つし、近衛兵としての立場もあって、相手が警戒する可能性が高い」
「確かに、近衛兵隊長が動いているとなれば、普通じゃないと思われるだろうな。わかった。何を調べればいい?」
カナベルは少し考えた後、低い声で答えた。
「まずは、水の魔石の流通を調べてくれ。この水花火の核となる魔石がどこから流通しているのか、何か異常があればすぐにわかるはずだ。商業ギルドを訪ねるのが手っ取り早いだろう」
「了解だ。何かわかったらすぐに知らせる」
「頼んだぞ、バンダナ」
カナベルと握手を交わし、俺たちは別々の道を歩み始めた。
彼は引き続き近衛兵として訓練場や路地裏の調査を進めるようだ。
俺はカナベルの指示通り、水の魔石の流通を調べるために商業ギルドへ向かうことにした。
商業ギルドの建物は冒険者ギルドよりも整然としており、忙しそうに働く商人たちの姿が目に入った。
中に入ると、受付の女性が目ざとくこちらに気づいた。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
「魔石の流通について知りたい。担当者に話を聞くことはできるか?」
受付の女性は少し驚いたようだったが、すぐに奥へと案内してくれた。
案内された部屋には、商業ギルドの管理責任者らしき中年の男性が座っており、威圧感のある雰囲気を漂わせていた。
「冒険者が魔石の流通について調べるとは珍しいな。目的は何だ?」
「最近、路地裏で水花火が暴発する事件が相次いでいる。それに使われている魔石がどこから来ているのかを突き止めたい」
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